- 2017年05月27日 08:19
「文春対新潮」情報入手のどこが悪いのか
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■「親しき仲にもスキャンダル」
私見だが、週刊誌編集長には大胆さと繊細さが必要だと思う。毎週のようにスクープを発信している『週刊文春』新谷学編集長は、見かけは女性誌編集長のように軽やかに見えるが、その決断力と実行力は「剛毅」という言葉がぴたりとくる編集長である。口癖は「親しき仲にもスキャンダル」。
この男ただ者ではない。そう感じたのは、彼が編集長になってすぐの頃、「小沢一郎の妻からの離縁状」という特集を読んだ時だった。私は現役時代、小沢一郎批判キャンペーンを毎号続けた。そこでは政治的な話題ばかりではなく、愛人問題や別の女性が生んだ隠し子についても追及した。そのとき一緒にやっていたライターの松田賢弥氏が離縁状をスクープしたのだ。
小沢の妻が地元の有力支援者に出した手紙には、愛人のことはもちろん、隠し子についても、東日本大震災が起こり小沢が関西方面へ避難すると慌てたことにも触れていた。内容はおもしろいが私信である。訴えられたら負けるかもしれない。彼はこう考えた。
「あの手紙を報じる公共性・公益性はある。日本の政治を長い間牛耳りコントロールしてきた小沢の人物像をつまびらかにした超一級の資料」。そう決断して全文を掲載した。
彼の編集方針は出版社系週刊誌の王道である。少ない人数と情報量。あれもこれもと追いかけていたら時間もカネもかかる。そこで「選択と集中」する。育休不倫の宮崎謙介前議員は小物だが「イクメン」宣言したため注目度が上がり、ほかに女性がいるはずだと追いかけた。
ショーンKは、フジテレビのニュースの顔になるので「どんな人だろう」と経歴を調べさせた。甘利明経済再生相のスキャンダルは大新聞が断って文春に回ってきた。舛添要一前都知事は、海外視察に湯水のようにカネをかけるのはなぜかと素朴な疑問を感じて調べ始めた。ターゲットを誰にするかという選択眼がすごい。
そんな彼も一昨年の秋に大きな挫折を味わう。文春はヌードを載せないのだが、その頃「春画展」に多くの若い女性が足を運んでいるという現象があり、新谷編集長はグラビアに春画を載せたのだ。
私も見たが、見開きに極彩色の春画が鮮やかで、なかなかの迫力であった。だがこれが社長の逆鱗に触れてしまい、文春の読者を裏切ったと3カ月の謹慎を申し渡されてしまう。
■3カ月の謹慎で考えたこと
当時、彼は悩んでいた。スクープは出るが部数に結びつかない。そのために「話題だからやってみようか」くらいの軽い気持ちで掲載したのだが、裏目に出た。ビジネス情報誌『エルネオス』でインタビューした時、彼はこういった。
「社長から休養だっていわれた時には、選択肢は二つしかなくて、従うか、会社を辞めるかだと思いました。でも、辞めるというのは、やっぱり現場に対して無責任じゃないですか」
その3カ月、いろいろな人に会って、「なんか生前葬をやっているみたいな感じでした」。一緒に修羅場をくぐってきた編集部員やライターたちも新谷の復帰を心待ちにしてくれていた。その時の気持ちを彼は、「またこいつらと一緒にバッターボックスに入って、フルスイングできるのかと思ったら、やる気がみなぎって、そこへ絶好球が来たので思い切りバットを振った」と語ってくれた。
それが2016年最初の号の「ベッキーのゲス不倫」である。以来「美智子さまが雅子さまを叱った」「巨人軍の黒い霧 野球賭博元エース候補 笠原将生(25)の告白」「福原愛結婚へ」「錦織圭がのめり込む“奔放すぎる”恋人」「斎藤佑樹汚れたハンカチ」「レコード大賞を1億円で買った」と怒涛のスクープ連弾になる。
デジタルにも力を入れている。ニコニコ動画のドワンゴと「週刊文春デジタル」をやり、NTTドコモがやっている「dマガジン」では月の売り上げが2500万円を超えるという。画期的なのは、スクープコンテンツをテレビ局に1本いくらで売ることを始めた。
「私がやろうとしていることは『Web現代』で元木さんが試みられようとしていたことを、だいぶ遅れましたけど、今やっているんです。今起こっているのはコンテンツ革命というよりは流通革命で、コンテンツを読者に伝える流通経路がかなり多様化してきているので、それに対応できるかどうかだと思っています」
順風だと思われていた文春だが、ここへきてライバルの週刊新潮から、新潮の中吊り広告を早く手に入れて、スクープを盗んでいると告発されている。
新潮によれば、文春側に情報が漏れているのではないかとの「疑念」を抱いたのは14年9月11日号。新潮は朝日新聞の「慰安婦誤報」をめぐって、朝日で連載していた池上彰が「朝日は謝罪すべきだ」と書いた原稿を掲載しないとしたことで、連載引き上げを決めたという記事を掲載し、中吊りにもかなり大きく打った。
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