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置き去りにされてきた「高齢者の性」をめぐる問題 - 本多カツヒロ (ライター)

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――病気などで体を悪くした高齢男性は、性にどんなものを求めるのでしょうか?

坂爪:長年、神経難病を患い手足の不自由な男性に取材することができました。彼が求めているのは、セックスそのものよりも性的なコミュニケーションです。たとえば、女性が自宅を訪問した際に、女性と会話できるだけでリラックスできるということでした。

 必ずしも、全員がセックスそのものを求めているわけではなく、生活の中で普通に性が存在するのを求めているのではないかと思いますし、程度の差はあれ、そこは共通前提としてあると思います。

――性の部分で充実している高齢者とそうでない人では違いがあると、取材中感じましたか?

坂爪:充実しているかどうかは、コミュニケーションの基本である、相手を考えて行動できるかどうかだと思います。

 たとえば、前出のように「夢は腹上死」と言ってはばからない人がいます。男性側は良いのかもしれませんが、される立場の女性側は大変迷惑です。相手のことを考えない、そうした一方的な願望をパートナーに押し付ける人は、モテないのではないでしょうか。そういった意味では、当たり前ですが、これまでの人生でコミュニケーションの基本ができている人がモテるのかなと思いますね。

――続いて、坂爪さんが活動のフィールドとしている福祉の場面での性について聞かせてください。介護現場などでは性に関してタブーになっていると思います。それは坂爪さんが代表を務めるホワイトハンズの障がい者の性介助についても同じくタブー視されていた面はあると思います。

坂爪:両者ともタブー視されていた面はありますね。ただし、それは支援する側の都合だとも思います。障がい者の介助であっても、高齢者の介護であっても、相手が色気のない、性欲のない存在としたほうが支援や関わりを持ちやすいからです。

 逆に、高齢者や障がい者という当事者からすれば性のことで声を上げづらい面もあります。

――現在、福祉の現場で性に関わることで問題になっていることはありますか?

坂爪:そもそも現場でケアを担当する介護福祉士や看護師は、学校や教科書などで高齢者に性欲があること、そして性的なことへの対処をまったく学んでいません。ですから、介護の現場でセクハラがあるとショックを受けます。

――教科書等では一切学んでいないんですね。では、どこまで事前に学び、どう対処するのが良いと坂爪さんは考えていますか?

坂爪:まず近年、医療や介護の現場で注目を浴びている「ユマニチュード」というコミュニケーション技法があります。フランス語で「人間らしさ」を表すユマニチュードは、たとえ認知症の高齢者であっても「自分が人間であること」を思い出してもらい、支援者と良好な関係を築く技法です。

 ユマニチュードの考え方を踏まえると「高齢者の性はあってはならないもの」ではなく、人として生きる上で当たり前のものとして捉え、支援者や家族と連携し支援することは重要です。

 ただし、セクハラや性暴力といった人として当たり前という理念だけではどうにもならないこともあるのは確かです。

 福祉では「できること」と「できないこと」が当然ながらあります。介護福祉の枠内で具体的に実現可能な性的支援は4つあると考えています。

 まず、1つ目は「プライバシーを保つことのできる時間、空間の確保」です。こうした時間や空間が確保されれば、誰にも邪魔されずに自慰行為を行ったり、パートナーとふれあうことができます。

 2つ目は、「性的欲求の昇華を促す」。直接的に性的欲求を満たすことが難しい場合には、散歩などで気晴らしができる時間をつくることです。

 そして3つ目は、「スキンシップの活用」です。ユマニチュードでは、ケアされる人との信頼関係を築くために触れる技術が体系化されています。ですから、介護職としての倫理基準に反しない範囲で手と手をあわせたり、肩を叩いたりすることは可能です。

 最後が「積極的黙認」です。もし本人から性風俗店を利用したいと要望があった場合、推奨はしないが、否定もせずに、できる範囲で対応や支援をする。 

 そのためには、厚生労働省などがトップダウンできちんとガイドラインをつくることが必要だと思います。こういったことが起きた場合には、こういった対処をしましょうと、現場での事例を取り上げながらです。

――幅広い方々に読んでもらいたいとは思うのですが、あえて注目して欲しい人とは?

坂爪:高齢者よりも若い人に読んで欲しいと思います。当たり前ですが、若い人もやがては高齢者になり、同じような状況を迎えます。それまでにどういうことができるかというヒントにしていただければと思いますね。

――高齢になるまでに、具体的にどんなことをすれば良いのでしょうか?

坂爪:高齢期での性生活の充実度は、その前の段階が大きく影響します。60代になってから、急に人間関係を広げようとサークルなどに参加しても難しいのが実情です。そのためには、30~40代のうちから趣味のサークルに参加したり、自分でサークルをつくったりとしておけば、高齢期に入った時に楽なのではないかと思いますね。

 ただ、性というのは自分の思い通りにはなかなかならないものです。思春期に自分勝手に理想の相手を思い浮かべては思い悩んだ経験は多くの人にあると思います。そうやってジタバタしながら生きているのを、応援しなくとも、暖かく見守る社会になってほしいと思いますね。

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