記事

経産省若手官僚レポートって正直どうなの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、経産相の若手官僚らが作成したレポートが公開され、ネット上でちょっとした話題となっています。

【参考リンク・PDFファイル】「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」

内容は多岐にわたりますが、大雑把に言うと「終身雇用や年金、医療といった社会保障制度は時代遅れで機能不全を起こしており、個人の人生における選択肢を狭めてしまっている。これらの問題を克服するにはここ数年間が勝負だ」というもので、シルバーデモクラシーによる社会保障の高齢者偏重や、貧困の再生産といったテーマもしっかり含まれています。

筆者は当初、その「経産省らしからぬ内容」にちょっと戸惑いましたが、読み進めるうちにこれはこれでアリなんじゃないかと評価する気持ちになっています。確かに、それなりに経済系の本を読んだり政策に関心のある人にとっては「そんなの、とっくに知ってるよ」レベルの話かもしれませんが、そうでない過半数の人たちにとってはインパクトを持って受け止められたはず。そして、それこそが最初から彼らの狙いだったのではないかと思いますね。

というわけで、今回は経産省レポートについて、筆者なりに読み解いていきたいと思います。それは個人のキャリアデザインとも密接につながる話です。

率直な現状認識と清々しいまでの無力感

筆者が本レポートを評価するポイントは2点あります。まず第一に「率直な現状認識」です。中央省庁といってもピンキリで、中にはこんなこと言ってる三流省庁も存在します。

「年金額が月に一円になったとしてもちゃんと払ってる以上は破綻ではない。ていうか年金だけで老後が暮らせるように保障するなんてボクたち言ったことないし」
(諸外国では本人負担としてカウントしている会社負担分をあえて除いて)「サラリーマンはちゃんと払った保険料以上に年金を受け取れるから厚生年金はおトク!100年安心!」

そんな中「現行のシステムのままじゃこれ以上もたないし、現に色々不都合なことが発生しています」と率直に認めている本レポートは一線を画すものです。実際、あの経産省が言ってるから読んでみようと思った人は少なくないでしょう。

本レポートの行間からは「早くなんとかしなきゃ」という、かつての青年将校にも似た想いが感じられますね。先輩の失政をごまかすための尻拭いに人生を捧げている三流省庁の役人にも見習っていただきたいものですが。

そして筆者が評価する2点目は「清々しいまでの無力感」です。本レポートには具体的に何をどうしろといった政策も数値目標も全く出てきません。過去の経産省の配布資料などにはだいたい「〇〇年までに〇〇産業をウン千億円規模の市場に育成する」「〇〇業界の再編を主導しGDP0.3%上積みを目指す」みたいなことがきっちり書かれていたのとは対照的です。おそらく本レポートがダメだと言っている人は、そういう過去のかちっとしたものとの比較で言われてるんだと思われます。

ただ、実際のところは、そうした国主導の産業政策で上手くいったケースというのはほとんどないんですね。当たり前の話で、公務員に有望産業を選んで実際に育て上げるなんて芸当はムリなわけです。それはあくまで民間の仕事であり、官の仕事はそれを促すために規制緩和したり、逆に暴走しないよう規制作ったりというちょこちょこした微調整であるべきなんです。無理やりやらせても単なるバラマキで終わるだけでしょう。

そういう分をわきまえつつ、もう産業政策で誤魔化す余裕なんてないからこっから先は個人が頑張るしかないんだぜ?そのためには何が必要かい?という問題提起が本レポートの本質でしょう。「経済を成長させてくれる魔法のスイッチ」なんてものは経産省にも内閣府にもどこにも無いんです。「不安な個人、立ちすくむ国家」という一見すると何が言いたいのかよくわからないタイトルは、実は彼らのスタンスを率直に言い表したものだと筆者は考えますね。

あわせて読みたい

「経済産業省」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。