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【読書感想】若田光一 日本人のリーダーシップ

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 そんななか、若田さんは、自分の弱点を自覚し、船長としてのトレーニングを積んでいきます。
 このトレーニングがまた、ものすごく厳しいのです。
 「悪いところを責める」のではなくて、「厳しい状況下で問題点を洗い出していく」のですが、僕だったら、こんな優秀な人々のなかで比較され続けることに耐えられないんじゃないか、と思います。
 でも、宇宙って、本当に「逃げ場がない」のですよね。
 そして、宇宙飛行士を一度宇宙に送るのに、約20億円かかるそうです。

 エリートばかりの「部下」たち。
 そんな彼らに対して、若田がまず求められる役回り、それは、本人の言葉を借りれば、「良い課長であること」だという。
 「ISS(国際宇宙ステーション)の船長は、会社でたとえるなら係長か、課長でしょうか。良い中間管理職になって、宇宙にいるクルーたちと、地上の管制官をはじめとしたISS計画に携わる各国の地上スタッフとの間を取り持つことだと思います」

 結局、宇宙での半年間に及ぶ生活で重要になるのは、円滑な人間関係、この一点に尽きるという。宇宙に行く全員がすでに、相応の経験と実績がある、宇宙飛行のプロである。素質と能力があって精神的にも安定していると評価されたからこそ、宇宙飛行士に選ばれている。そうしたプロ集団のリーダーである船長にとって、最も重要な心がけとは一体、何か。複数の船長経験者に同じ質問をしてみると、「仲間(部下)の言うことにしっかりと耳を傾け、チームにとって最もスムーズな仕事の進め方を見出すこと」と誰もが口をそろえて言うのである。
「船長がいくら優秀であっても、1人にできることはごくわずか。なぜならISSという巨大な船は、宇宙飛行士だけでなく、地上にいる大勢の管制官や技術者たちが動かしているからです。地上のスタッフの意見を聞き、その考えを知り、その一方で、ともにいる宇宙飛行士たちの意見も聞き、地上と宇宙、両者にとって最も良い道を見出して、課せられた任務を遂行していく。それが船長に求められる、第一のリーダーシップです。
 そう語るのは、2004年から半年間、アジア系アメリカ人として初めてISSの船長を務めた理リロイ・チャオ(当時53歳)だ。チャオは若田と一緒にスペースシャトルで宇宙へ行ったことが2度もあり、若田を親友と公言する。


 若田さんは、どんな訓練でも真剣にやるし、地上スタッフにも人気があるそうです。
 それは人柄はもちろん、超エリート揃いの宇宙飛行士のなかで、整備士出身というキャリアも、周囲からの親しみやすさにつながっているのかもしれない、と著者たちは推測しています。

 若田はどんな子供だったのか?
「正直、船長になると聞いて驚きましたよ。全然、リーダータイプじゃなかったから」
 そう答えたのは、丸山光晴。現在は住宅建設業を営む社長だ。今も若田とメールでやりとりを続けているという。小中学校のころは放課後に、互いの家に通い合うほどの仲の良さで、当時の若田をよく知る人物である。
「船長なんていうイメージとはまったくかけ離れていました。いつもニコニコしていたので一緒にいて楽しいし、居心地のいいやつだったんですが、自己主張をしてみんなを引っ張っていくタイプではなかった。むしろ文句を言わずに、リーダーについていくタイプだった。そういう意味では、目立たないやつでした」
 丸山以外の多くの同級生も、幼少期の若田は、周囲を引っ張っていくようなリーダーのタイプではなかったと異口同音に答えた。


 そんな若田さんが、リーダーの中のリーダーともいえる、ISSの船長になるのですから、人生というのは、わからないものだな、と。
 この本を読むと、リーダーにもいろいろなタイプがあるし、よくイメージする「みんなをグイグイ引っ張っていくようなタイプ」が、万能のリーダーではない、ということもわかります。
 

 インタビューの最後で若田は、これから世界を舞台に戦う日本人に向けて、熱い思いを込めて、力強く語った。
「これまで、多くの国の人々とチームを組んできた中で感じたのは、日本人にはもともと非常に高いレベルの調整能力が備わっている、ということです。それが、僕の言葉にすれば『和の力』だと思っています。各国の事情を考慮してさまざまな意見を取り入れ、その上できちんと意思決定をすること。それが、私たち日本人にはできると思います」


 いやいや、それは「日本人にはできる」というより、「若田さんだからできる」のではないか、とは思うんですよ。
 でも、欧米人のような「みんなを強引に引っ張るリーダーシップ」だけが、「求められるリーダーシップ」ではないし、日本人には日本人向きのリーダーシップがあって、それは、ISSの船長としても通用する資質なのだ、ということは、知っておいて損はないはずです。


ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書)

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