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「一帯一路」中国の野望の真実



古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

【まとめ】

・「一帯一路」国際会議、中国は巨大経済圏構想打ち出す。

・各国首脳、習近平氏と記念撮影、その朝貢外交ぶりが中継。

・朝日コラム、中国の本音は「政治と軍事」と看破。

■「一帯一路」国際会議

中国の北京で「一帯一路」国際会議という一大集会が催された。5月14、15の両日である。主催は中国政府、目的は中国が推進するユーラシア大陸横断の巨大経済圏構想の推進とうたわれた。全世界から合計130ヵ国ほどの代表が加わった。みなこの会議を中国主導の経済開発の巨大プロジェクトへの参加の好機とみるという経済的動機に駆られたという感じだった。

日本側でもこの国際会議を機に中国に接近し、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本政府の参加までを改めて考えるべきだなどという声までが出た。しかし中国政府がこの種の「経済開発」を打ち出すことの真意はなんなのか。単なる経済面での周辺諸国との共存なのか。朝日新聞に載った分析記事に注視し、納得させられた。

朝日新聞の記事は日ごろ批判的に取り上げてきたが、こんなに的を射たような記事もあることを紹介しておこう。中国の意図の真実をみごとに指摘しているように思われるからだ。

■正鵠を射る朝日のコラム

この記事は朝日新聞5月20日朝刊の「風」というコラム、一帯一路 言わざる本音はという見出しだった。筆者は朝日新聞中国総局長の古谷浩一記者と記されていた。

この記事はまず今回の「シルクロード経済構想(一帯一路)」会議に集まった各国代表はみな中国の巨大な経済力にあやかろうという動機だっただろう、と示唆する。なにしろ中国政府は今後5年間に17兆円のシルクロード地域に投資するというのだ。

だがこの記事は中国の真意が決して表面にみえる経済開発だけではないと論じるのだ。その根拠として次のように述べていた。

■各国首脳の朝貢外交ぶりを中継

≪習近平氏は同時に「中華民族の偉大な復興」という演出を、中国の人々に見せたかったのだと思う。

各国の首脳たちは順番に、習氏の前に進み、1人ずつ握手をして記念撮影をするという儀式に参加させられた。

私の頭に浮かんだのは、故宮博物院所蔵の絵に描かれていた皇帝の謁見の光景だった。さすがに3回ひざまずき、9回頭を地につけるという「三跪九叩頭の礼」はなかったが、まさに「朝貢外交」のイメージである。

国営テレビは約40分間もこの様子を中継で伝え続けた。しかも、同じ儀式は各国首脳たちが会場に入るたびに、2日間で2度、繰り返された≫

要するに中国政府は自国を皇帝の立場においての各国首脳の朝貢外交ぶりを自国民に流していたのだ。同記事によると、しかも記念撮影の会場の壁には毛沢東の「中国の美しさの前にはどんな英雄も頭を下げる」という趣旨の言葉が書かれていたというのだ。

■中国の伝統的安保観

朝日新聞のこの記事はさらに次のように述べていた。

≪こうしたやり方は中国の伝統的な安全保障観に合致したものだと言えるかもしれない。古来、中国の皇帝は周辺の国々に経済的な恩恵を与えることと引き換えに、緩やかな従属関係を求め、これによって中国への侵略を防ごうとした。言うことを聞かない国に対しては交易を止め、経済制裁を科した≫

■本音は「政治と軍事」

そのうえで同記事は中国政府シンクタンクの研究者の「中国は外国に対しての戦略では4は経済、3と3が政治と軍事という構成要素で臨むのだ」という言葉を紹介していた。

つまり政治や軍事という本音で臨むと、相手国の国民感情を傷つけるかもしれないから、経済という建前を前面に出すのだという。しかし現実には政治と軍事を合わせれば6であり、経済の4よりもずっと大きいことになるわけだ。

という趣旨で同記事は次のように結んでいた。

一見、経済重視ではあるが、実は政治・軍事の比重の方が大きいということだ。習氏は「もの言わざれども」一帯一路構想における本音はこの辺にあるように思えてならない≫

要するに中国の一帯一路での真実の狙いは実は経済にあらず、政治や軍事という面で他の諸国を中国に従属させることなのだろう、という指摘だった。だからまさに的を射た記事だなと感じた次第である。朝日新聞もゆがんだ記事ばかりではないという例証だといえよう。

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