- 2017年05月24日 00:00
中小企業としての文化系プロレス経営戦略
2/2■学生時代からとにかく赤字が大嫌い
――高木さんは大学卒業後からプロレスラーとして活動され、会社員の経験もないままにDDTを立ち上げられています。そういった現実的な経営感覚を、どこで身につけたのですか?
【高木】若い頃から、とにかく赤字を作りたくなかったんです。大学時代に学生イベントに関わっていた経験が大きいかもしれません。当時はバブルで、何千人も集めるようなサークルがたくさんありましたけど、みんな金遣いが荒かった。いくら儲かってもすぐに使ってしまい、借金まみれの人ばかり。そういった人たちを反面教師にして、自分は堅実にやろうと決めたんです。
だから学生の頃から、僕が関わるイベントではちゃんと収支を立てて毎回黒字になるようにやっていました。性格としか言いようがないですけど、本当に損をするのが嫌でしたね。これは今も変わらないです。
――その感覚が1997年にDDTを旗揚げしてからも活かされたと。
【高木】いや、DDTでいうと、旗揚げ初期の頃はお金の出どころが全部自分だったんですよ。そうしたら最初の大会でいきなり100万円の赤字が出て、それを僕が被らなきゃならなくなった。とにかく損が嫌いな性格だから、「なんで自分が!?」って思いました。
僕はあれこれ企画を考えるのは好きでしたけど、経営者になりたいと思ったことはなくて、自分はプロデューサー向きの人間だと思っていました。プロレスは好きだし、やりたいこともあるけど、お金の責任は負いたくない。だから2004年まで、経営はほかの方に任せていたんです。
――それがなぜ、経営者になることに?
【高木】34歳のときに、結婚したんです。家庭を持って、子供ができて、自分の中に責任感が生まれた。好きなことを好きなようにやれればいいという性格だったのが、将来のことを考えるようになりました。それでDDTとの向き合い方も、腹をくくらないといけないなと思ったんです。そこからですね、経営というものを真剣に考えるようになったのは。
――DDTは路上プロレスなど、過激な部分ばかりが強調されがちですが、経営においてはとても堅実ですよね。今回お話を聞いて、だからこそ一歩一歩成長し、とうとうさいたまスーパーアリーナ大会を開催できるほどの団体に成長できたのかな、と感じました。
【高木】結局、僕らは中小企業なんですよ。今ある人と金を使ってやりくりしていくしかない。WRESTLE-1でも、僕がCEOになってからは、選手にも経営に関わってもらうようにしました。自分で言うのも変ですけど、僕は人材を適材適所に配するのはうまいと思っているんです。
たとえば、DDTができなかったことのひとつに、プロレス学校(現役プロレスラーが若手を一から育成する「プロレス総合学院」)の設立があります。WRESTLE-1は王道のプロレスを学んだ選手が多いから、ここだったらできると思いました。ただ、僕らにはノウハウがない。だったらWRESTLE-1の中で、プロレス学校出身の選手にマネジメントに関わってもらったほうがいい。そこでお願いしたのが、闘龍門出身の近藤修司くんです。
――闘龍門とは、ウルティモ・ドラゴンさんが設立した日本でも有数のプロレスラー養成学校ですね。
【高木】その闘龍門出身の近藤くんであれば、プロレス学校とは何が必要で、どういう指導をしていけばいいのかわかっている。だから学校のマネジメントのトップになってもらった。実際にそれは成功して、4月からのWRESTLE-1の新体制では、新社長を支える副社長に就任しています。
――まさに適材適所が成功したと。ただ、中小企業の経営には今ある人材でやりくりすることが欠かせないことはわかるのですが、その能力の有無は、どうやって見抜くのですか?
【高木】今はプロレスラーもSNSで情報発信をする時代ですから、会って話すだけでなく、彼らのツイッターやフェイスブックを見ますね。そうすると、パーソナルな部分が8~9割はわかる。WRESTLE-1の大和ヒロシくんという選手は、以前からチケットを売るために、地方の商工会議所をまわって、地元の人たちに宣伝していました。彼が個人的にやっている活動をフェイスブックにアップしているのを見て、大和くんだったら営業が任せられるかもしれないと思い、今は営業部長をやってもらっています。
――そうした高木さんの人を見抜き、任せる経営方針は、やはり小さな団体を育ててきたというのが大きいのでしょうか。
【高木】そうですね。DDTを立ち上げたときは専門のスタッフを雇う余裕がなく、レスラーがフロント業務も兼任するしかなかった。でも、誰もが営業やマネジメントができるわけではないので、個人の適性を見極めていかないといけない。人も金も限られた環境で経営していかなければならなかったから、見極める目というものが身についたのかもしれないと思いますね。
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高木三四郎(たかぎ・さんしろう)1970年生まれ、大阪府出身。プロレス団体・DDTプロレスリング社長兼レスラーで、通称“大社長”。15年5月よりWRESTLE-1のCEO、17年3月より同相談役を務める。
DDTプロレスリング
97年旗揚げのプロレス団体。小規模会場のほかライブハウス、書店、路上、キャンプ場など、さまざまな場所でプロレスを行い、エンターテインメント性の強い「文化系プロレス」を名乗る。今年1月より自社で動画配信サービス「DDT UNIVERSE」<http://ddtuniverse.com/>を開始したほか、Amazonプライムにてオリジナル番組『ぶらり路上プロレス』を配信中(高木大社長も出演)。
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