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税務調査官が「トイレ」チェックする理由 調査が行われるのは申告から2年後

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■実地調査で注意することは

実地調査の流れはこうだ。午前10時ピッタリにインターホンが鳴る。ドアを開けると、来る税務職員はほとんどの場合、2人である。詐欺ではないことを証明するため、最初に身分証が提示される。家に調査官を通すと、世間話から始まって、午前中はさまざまな質問を受ける。正午に休憩の後、午後1時からは、印鑑、通帳、権利証といったものの保管場所の案内を求められ、終了時に、事前調査でつかんだ内容をもとに浮かんだ疑問点が、質問として納税者に投げかけられる。

「実地調査」で必ずなされる質問のひとつに、「親族全員の所得状況」がある。全員の勤務先や住所地なども確認され、無職であるのに多額の預金口座を保有している親族が見つかった場合、「この預金は、名義が親族というだけで、実質、被相続人の預金(名義預金)なのではないか」という疑いがかけられる。そして、総合的に判断されて、被相続人の名義預金であるとされれば、追徴されてしまう。

また、「被相続人の入院日付と場所」「被相続人の認知症の有無」なども確認される。それによって、入院中、もしくは亡くなる直前に不明な出金があった場合、それは相続人への貸し付けと見なされ、追徴対象となる可能性がある。

また不思議なことに、調査官が「トイレを貸してほしい」と言ってくることがある。トイレの前にタオルを置いている家があるが、調査対象はそれである。銀行や証券会社の名称がタオルに印字されていて、それが申告書に記載されていない金融機関名だったりすると、「隠し口座があるのではないか」と疑いがかけられることになってしまう。

税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類があるが、強制調査はマルサがするもので、裁判所の捜査令状を取り、刑事事件として調査に入る。この場合、調査に入った家の引き出しを勝手に開けても法律的に許される。一方、私たちが通常経験する税務調査は任意調査であり、調査は「質問検査権」という権利に基づいて行われる。この場合、許可なく引き出しを開けたり、バッグの中身を見たりということは認められていない。万が一、調査官のそうした行為を目撃した場合は、その場で厳重注意し、税務署にも抗議しよう。

■結果通知への対処法は

「実地調査の結果の通知」は、代理申告の場合、担当税理士に対して電話など口頭でなされる。誤りがなければ「是認通知」が出され、誤りがあるときは「修正申告」を勧めてくる。調査内容に納得できず、納税者がそれに応じない場合、「更正」もしくは「決定」と呼ばれる処分が下される。実際は、修正申告に応じるケースがほとんどであるが、応じてしまうと「不服申し立て」ができなくなる。不服申し立てには、調査を行った税務署長への「再調査の請求」、国税不服審判所への「審査請求」、裁判所への「訴訟提起」があるが、不服申し立てを検討している場合は、修正申告には応じないようにしよう。

また国税通則法が改正され、2013年から結果通知において「理由の説明」が義務づけられた。それまではあいまいな理由でも追徴できたが、現在は証拠をつかみ、理由を明確にした上でなければ追徴できなくなっている。そのため、取引先を洗う「反面調査」や、銀行とのやりとりを調べる「銀行調査」などが本格的に行われるようになってきており、調査期間が長期化している。理由の説明の義務化は、納税者側にとっては有利なので、説明が不十分と感じられる場合は、強気で交渉したい。

修正申告の場合に納める税金は、「不足税額」と「延滞税」、「過少申告加算税」を合算したものである。もし、申告書の内容に仮装や隠蔽(いんぺい)が発覚すると、過少申告加算税に代わり「重加算税」が課される。過少申告加算税が不足税額の最大15%、重加算税が最大45%である。

税務調査にはシーズンがあることも知っておこう。7月から12月は特に税務調査が行われやすいので要注意である。逆に1月から3月は確定申告で調査官が忙しくなるため、また4月から6月も、税務調査はほとんど行われなくなる。

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最後に、「書面添付制度」を紹介しておきたい。この制度は、申告書の計算内容について、申告書だけでは読み取れない内容を解説した書面を作成し、それを申告書に添付して提出するものである。書面添付が行われている申告について、国税当局が調査を行う際には、納税者に事前通知を行う前に、担当税理士に「意見聴取」をしなければならない。ここで当局の疑問が解消すれば調査が省略されるため、書面添付によって税務調査のリスク低減が可能である。税理士の制度利用があまり進んでいないのが実情ではあるが、書面添付を行っている税理士もいることから、この制度を利用しているかどうかを、相続税申告を依頼する税理士を選ぶときのひとつの基準としてみてもいいだろう。

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藤宮 浩
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
埼玉県出身。1993年、日本大学法学部政治経済学科卒業。95年、宅地建物取引主任者試験合格。2004年、不動産鑑定士試験合格及び登録。12年、フィナンシャルプランナーCFP登録。04年に株式会社フジ総合鑑定代表取締役に就任し、相続不動産に強い不動産鑑定士として、徹底した土地評価を行うことで有名。主な著書に税理士・高原誠との共著である『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(クロスメディア・マーケティング)。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。フジ総合グループ(https://fuji-sogo.com/) 

高原 誠
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員
東京都出身。2005年税理士登録。06年、税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間600件以上の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。

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( フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表、株式会社フジ総合鑑定 代表取締役 藤宮 浩、フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表、フジ相続税理士法人 代表社員 高原 誠)

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