「孫正義ソフトバンク社長が、経団連の理事会に出席し、経団連が一致して決議しようとした原発再稼働への賛成・推進に対して、反対し、執行部の姿勢を強く批判した」と報道されているが(参照)、きもちが悪いのは、300社以上の出席者からは、孫社長の意見に対する反論も同調する意見もなかったという点。
経団連を牛耳る原発推進派の企業により「満場一致で原発再稼働に賛成する」という空気が作られるなか、その「空気作り」が許せなかった孫社長が真っ向から反対したが、残りの「空気が読める大人たち」は黙ってしまったのである。
この状況は、学校で「いじめ」が起こった時に、一部のいじめっ子たちにより「あの子はいじめて良い」という空気が作られた時に他の生徒が黙認してしまう(そして、結果としていじめる側に回ってしまう)状況に似ている。そんな空気の中で「こんないじめは良くないよ」と発言するのには勇気が必要だ。
とても残念なのは、300人以上の良識ある社会人が集まりながらも、「孫さんの言う事も一理ある。私も闇雲に原発の再稼働を容認するというのは間違いだと思う」と発言する勇気のある人が一人もいなかったということ。楽天がまだ経団連から脱退していなかったら少しは状況が変わっていたかも知れなと思うと少し残念である。
このブログを読んでいる若い人たちにお願いしたいのは、こんな状況に自分自身が置かれた時に、勇気を持って自分の意見をどうどうと主張できる人になって欲しいという事。「長い物には巻かれろ」「出る杭は打たれる」と他人の顔色ばかりうかがいながら生きる大人だらけの世の中は面白くない。
一つだけ忘れて欲しくないのは、日本のインターネットのコストが先進国の中でずば抜けて安いのは、「インターネットも電話と同じ様にNTTが提供すれば良い」という「作られた空気」に徹底的に抵抗した孫社長がいたからだということ。孫社長が大暴れしなかったら、日本のインターネット事情は今とは大きく違っていたことは確実だ。
孫社長にしろ、スティーブ・ジョブズにしろ、作られた空気にあえて逆らって自ら「出る杭」になる人がいるからこそ、イノベーションは起こるし、世の中が活気づくことを忘れてはいけない。