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共謀罪廃案へ

 人道的に優先すべき「性犯罪厳罰化法案」を後回しにして、衆議院の法務委員会では4月6日から「組織犯罪処罰法改正案」の審議が始まりました。金田勝年法務大臣のあいまいで二転三転する答弁、そして、法相がまともに答弁できないため、法務省役人を政府参考人として常時出席させることを強行採決するなど、無茶苦茶な国会審議が続いています。

 政府与党は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策として、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するためにこの法律が必要だと強弁しています。しかし、この条約はテロ対策条約ではありませんし、また、現行法体系のままでTOC条約を結ぶことは可能なはずです。なお、日本はすでにテロ防止関連13条約を締結し、法整備も終了しています。

 もちろん、テロ対策に万全を期す必要性は言うまでもありません。現在の法体系に穴があるのであれば、その穴をふさぐ必要があります。そこで、民進党は独自のテロ対策法案を作成しました。その内容は、組織的犯罪の未然防止という観点から現行法で予備罪のない、「組織的な人身売買」と「組織的な詐欺」について予備罪を設けるものや、航空機のハイジャックなどを防止するための「航空保安法案」の創設などです。5月11日には国会に提出しました。

 このように私たちは実効性のあるテロ対策の実現をめざす一方、政府案の廃案をめざします。というのも、「テロ等準備罪」を創設する「組織犯罪処罰法改正案」の実態は、国民から厳しい批判を受けて過去3回も廃案になった「共謀罪」法案と何も変わっていないからです。「テロ等準備罪」という新しいニックネームをつけてイメージチェンジを図ろうとしていますが、「看板に偽りあり」です。

 政府は、国民への影響についての説明もずいぶん変えてきました。「対象を組織犯罪集団に絞ったから、一般市民は対象にならない」、「計画をしても実行準備行為がなければ処罰できない」といかにも従来の法案とは違いますとアピールしています。

 しかし、犯罪集団かどうかを判断するのも、何をもって実行準備行為であるかと判断するのも捜査当局です。結局、一般の人々も処罰対象にされかねません。実際にやらなくても、犯行を計画・合意したと内心に踏み込んで判断されれば、逮捕されるのです。

 捜査機関がたとえば恣意的に対象団体を「組織的犯罪集団」に変わったと認定し、かつ今回の法案に位置づけられた277の対象犯罪のどれかに該当すると解釈されれば、隠しカメラ設置のような違法捜査が、今後は合法的に行われる可能性も否定できません。

 監視が合法的にできるようになれば、スマホやパソコンでのメールやラインなどのネット監視も容易に始まるでしょう。共謀罪の最大の問題は、「1億総監視社会」になる懸念です。中身が変わらない以上は、4度目の廃案をめざすのは当たり前です。

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