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幼すぎる組織犯罪対策の国会議論

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「引き渡すかさもなくば裁け」の原則は、このTOC条約の枠組みの中で貫かれている。国際組織犯罪を相手にしていかなる国のどんな場合にも組織犯罪を利する法の抜け道を残してはいけない。これがこの条約の核心である。
世界中の187か国が加盟するこの条約の作り上げる国際組織犯罪防止のネットワークに、わが国は国内法整備の遅れから加われない状態が続いている。国際組織犯罪対策において我が国が世界のループホール(穴)になりかねない深刻な事態である。
 
⒎各国の犯罪対策は組織犯罪対策が中心となるとともに、経済活動のグローバル化に対応して組織犯罪もグローバル化した。これに伴い各国犯罪対策の平準化と国際協力の普遍化の方向はもはや動かしがたい。犯罪対策の分野においても、一国主義から世界主義へと時代が変わった。
いま国会で審議されている組織犯罪処罰法の内容は、この平準化と普遍化の要請に過不足なく応えるものであるかどうかが問題とされなければならない。187にも上る条約加盟国の法規制のレベルより突出しているなら、不要な部分は削り取らなければならない。平準化のレベルに達していないなら不十分な内容ということになる。与野党とも、議論がこうした視点から行われていないことは極めて残念である。
この条約の枠組みにおいては、この可罰性の平準化はほんの入り口(玄関)の問題に過ぎない。本題は、マネロン、公務員の汚職、そして前に触れた新たな捜査手法(情報収集手段)を積極活用した国際協力の普遍化である。さらに、この条約には、不法移民、女性や子供の人身売買、銃器不正流通の防止に関する3つの議定書(子条約)が付属している。銃器の議定書は、起草段階から私を含めて日本代表団がリーダーシップを発揮した成果である。
 
⒏子供のころ見たヤクザ映画では、追われる立場の人物が香港やマカオ行き貨物船で姿を消すラストシーンだった。平成に入ると、国内の歓楽街に中国蛇頭が暗躍する映画も流行った。しかし今や、ベトナム、台湾、中国、ロシアから、中南米のコカイン・カルテル、中東のテロ組織さらにはナイジェリア詐欺グループまで、世界中のどこの組織犯罪が我が国に侵入していても不思議ではない。組織犯罪対策でわが国が世界平準に達しないこと(ループホール)がヤミ世界に知れわたるにつれて、世界中からダーティなヒト、モノ、カネ、データがわが国を目指すようになる。逃亡者の潜伏場所に使われたかつての香港やマカオと似たイメージだ。インド洋やカリブ海に浮かぶ小国ならいざ知らず、世界有数の経済規模の我が国が組織犯罪に取締りの緩やかな場所を提供する身勝手は、国際的に許されない。
 
(まとめ)
今回の法案とは別に、今後相当期間にわたって組織犯罪対策の平準化と国際協力の普遍化に対応した法規制と組織改革の両面の整備を進めなければならない。今回仮に、与党が強行採決で法律を成立させたとしてもその後遺症は後まで残って、次の改革はまた遅れ遅れになるだろう。政府には、何としても「合法」社会の一致した合意によって、組織犯罪防止の世界的枠組みに参加するよう努めてもらいたい。
一致した合意を形成するための方策には、二つの方向性が考えられる。
一つは、現行刑罰法規を改正することなく条約に加盟しても条約上の義務を履行できることを、政府・与野党間で確認する事である。他国の組織犯罪関係者について他国に対する我が国の協力義務を履行できないおそれが残ると外務当局などが言うのであれば、便法がない訳ではない。

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