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異常な金融政策が異常に見えなくなる怖さ、なぜ正常化が必要なのか

フランス大統領選挙でのマクロン氏の勝利により、欧州の政治リスクが後退した。投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は20年超ぶりの低水準となったそうである(ロイター)。

米国の中央銀行にあたるFRBは2014年1月からテーパリング(毎月の米国債とMBSの買入額の縮小)を開始し、10月にテーパリングを終了させ(新規の買入停止)、2015年12月には利上げを決定した(政策金利の0.00%~0.25%から0.25%~0.50%へ引き上げ)。これらはいわゆる正常化に向けての動きとなる。2016年12月(0.50%~0.75%に)、2017年3月に追加利上げを決定し(0.75~1.00%に)、6月も利上げするとの予想となっている。その後、9月にも利上げを決定し、12月からは膨らんだバランスシートの縮小を償還分を再投資しないかたちで実施するのではとの観測となっている。

この正常化に向けた動きに対して、何故このタイミングで金融引き締めをしなければならないのか、バランスシートの縮小は必要なのかという声もある。北朝鮮などの地政学的リスクはまだまだ存在する。景気も雇用はさておき、それほど高い成長率ではなく、物価も日本はさておき欧米もFRBやECBの目標値に届いていないではないかとの理由によるものとみられる。

そもそも正常化をするということは、それまでの政策が「異常」であったと言う事実を忘れてはいけない。何故、異常な政策を行わなければならなかったのか。それは米国の金融機関を直撃したリーマン・ショックに代表される金融危機とギリシャの財政問題がきっかけとなったユーロシステム崩壊の懸念による世界的規模の金融危機への対処であったはずである。財政政策に限界が見えたことで金融政策に頼らざるを得なくなり、いわゆる非伝統的な政策を試すことになった。非常時の金融緩和による実質的な効果のほどはさておき、金融市場での不安感は後退したことは確かである。それが2012年の年末にかけてであった。

このタイミングで日本ではアベノミクスと呼ばれた政策が急浮上した。デフレ解消を旗印にリフレ政策というその効果への疑問があるとともに副作用が懸念された政策を日本の中央銀行は取らざるを得なくなった。

また、ECBやイングランド銀行は英国のユーロ圏離脱問題等も生じ、こちらもさらに深入りせざるをえなくなった。しかし、ユーロを巡る危機は今回のフランス大統領選挙の結果からみても後退するとみられ、ECBはあらためて緩和に向けた姿勢からのスタンスの変化を今後試してくる可能性が出ている。

それに対して日銀は2%という物価の絶対目標を掲げてしまった。しかしリフレ政策では効果が出ず、マイナス金利政策も取り入れたものの金融業界などの反発もあり、長短金利操作付き量的質的緩和という異質な政策となってしまった。すでに後戻りできず、物価目標の2%が見えるまで異常な政策を続けざるを得ない状況に陥ってしまっている。

これに対して米国では特に雇用面での回復が著しく、原油価格も回復したことで物価も上昇してきたことから、正常化を進めることができた。異常な政策はその対価として将来的なリスクが存在する。そのリスクを軽減させるためにも正常化は必要となる。しかし、金融市場は大きな危機が繰り返されてかなり過敏になっており、FRBの正常化も時間を掛けて行わざるを得なかった。金融緩和は簡単だが引き締めの格好となる正常化を、景気に加熱感のないタイミングで行うことはかなり神経を使わざるを得ない。しかし、将来的なリスクは摘み取っておく必要があることも確かである。

その将来的なリスクとは何か。たぶんそれはいずれ日本で試されることになるのではないかと思う。いまの日本の債券市場がいかに機能不全に陥っているのかは最近の債券市場の動きを見てもあきらかである。国債の買い手が日銀と海外投資家だけのような状況となっている。そして日銀はすでにGDP規模の国債を買い入れている。政府はGDPの2倍以上の債務を負っている。いままでそれで国債が急落することはなかったので、それを懸念するのはおかしいとの見方もある。しかし、ダムは水が溜まり続けても崩壊するまで危機とは認識されないように、見えないリスクが膨らんでいることも確かではなかろうか。

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