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【読書感想】「ドラえもん」への感謝状

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「ドラえもん」への感謝状

「ドラえもん」への感謝状

内容(「BOOK」データベースより)
アニメ「ドラえもん」を始めた男。アニメ誕生35年目に初めて明かされた舞台裏。「銀座のさんちゃん」が心から贈る最初で最後の感謝状。


 『シンエイ動画』の創業者であり、現名誉会長の楠部三吉郎さんが、アニメ『ドラえもん』の歴史と、『ドラえもん』を支えてきた人々を語ったものです。
 アニメ制作会社の社長さんなのだから、楠部さん自身もマンガやアニメが大好きで、自分で絵を描いたり、制作者に指示をしたりしていたのではないかと思いきや、潔いくらい、楠部さんが「自分はクリエイターではなくて、セールスマンなのだ」と強調しておられます。

「先生、独立したんですが、何もやることがありません。この先、どうなるのかもわかりません。でも企画を立ち上げたい。そこでお願いですが、『ドラえもん』をアニメ化させてもらえませんか? どうか『ドラえもん』をボクにあずけてください!」
 1977年秋、私は、新宿は十二社にある藤本弘先生——藤子・F・不二雄先生の事務所にいました。
 先生はしばらく黙っていました。


 即答してもらえなかったのには理由があります。
ドラえもん』というのは、先生のアニメ化された作品の中ではある意味特別な存在で、1973年4月から日本テレビ系で放送されたものの、視聴率7%という散々な結果。わずか半年で打ち切られてしまっていたのです。
 私は生粋のアニメーターじゃありません。アニメーターであったこともないし、目指したこともない。アニメやマンガのファンですらありません。何者かと問われたら、セールスマンというしかない。『巨人の星』の作画監督などをやっていた兄(楠部大吉郎)の誘いで、営業マンからこの世界に飛び込んでいました。
 最初に所属したのは、アニメ制作会社の東京ムービー


 楠部さんは、当時所属していたプロダクションの内部紛争などに巻き込まれ、独立して『シンエイ動画』を設立することになります。
(もとの会社が『Aプロダクション』という名前だったので、新しいA、『シンエイ動画』という名前になったそうです。
 独立はしたものの、仕事がなくて困っていた楠部さんが白羽の矢を立てたのが、東京ムービーでアニメ作品を手掛けていた藤子作品だったのです。


 これを読んでみると、『ドラえもん』は人気マンガではあったものの、一度アニメ化に失敗しており、藤子・F先生もそのことを気にかけていたことがわかります。
 生真面目で趣味は読書や映画鑑賞、あまり社交的ではなかった藤子・F先生と、毎晩銀座に繰り出して女性たちにモテ、遊び一般に通じていた楠部さんというのは、水と油のような組み合わせだな、と思いながら読んでいたのですが、藤子・F先生は、楠部さんのことを深く信頼していたようです。
 自分にないものを持っている人だと感じていたのか、愛すべき人物だと思っていたのか、楠部さんの義理堅さに感銘を受けていたのか。
 楠部さんが『ドラえもん』の再アニメ化を藤子・F先生に認めてもらうために、あの高畑勲さんが一肌脱いだ、なんていう話も紹介されています。


 楠部さんがようやく藤子・F先生に再アニメ化の許可を得て、お礼に小切手を持っていたときの話。

 先生は怒ったね。
 後にも先にも、形相も口調も変わるような怒りは、この時が最初で最後でした。
 先生の怒りはしかし、静かで悲しい怒りだったのです。
「楠部くん、僕はあなたにレポートを出せと言ったこと自体、大変失礼なことだと思っているんです。いままで自分の作品は、良縁に恵まれてきました。『オバQ』にしても、『パーマン』にしても、みな幸せな家庭へ嫁に出すことができました。でも、『ドラえもん』だけは出戻りなんです。さんざんな仕打ちを受けて戻って来た、かわいそうな娘です。でも僕にとっては目の中に入れても痛くない、かわいい娘なんです。だからもし、もう一度嫁に出すことがあったら、せめて婿は自分で選ぼうと、そう決めていました。それで、失礼は承知の上で、レポートを書いてもらったんです。そして、私があなたを選んだ。私が選んだ婿から、お金を取れますか?」
 この時、私は藤本弘という男に惚れていました。
「あなたにあずけるのに1年間なんて期限は切りません。日の目を見なくたっていい。楠部くん、『ドラえもん』はあなたにあずけたんです」


 これ、読んでいた僕も涙が止まらなくなりました。
 傷ついた「出戻り娘」が、いまでは、藤子・F先生のたくさんの娘たちのなかでも、いちばんみんなに愛されているのですから、わからないものですね。
 藤子・F先生は、人を見る目があったのだなあ。


 いまは春休みの恒例となっているドラえもん映画の第1作が『のび太の恐竜』になった経緯も紹介されています。

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