記事

なぜ保険会社は低額の提示をしてくるのか

前回エントリには大きな反響があった。

はてなブックマークの人気エントリ1位になったし、PVは10万を優に超えている。

保険会社が正当な(裁判をしたとすれば認められるべき)損害賠償額から大きくかけ離れた低額の提示をしてくるのが常であることは、弁護士には常識だ。

しかしこの反響の大きさを見ると、やはり一般の方にはあまり知られていなかったようだ。

そこで、なぜそんな無法が横行しているのかについて、ごく簡単に説明しておく。

保険会社がめいめい勝手に定めている、通称「任意保険基準」というのがある。保険会社はその都度のノリで適当に賠償金を提示するわけではなく、この基準に基づいて提示している。

これは裁判になった場合の、通称「裁判基準」よりも大幅に低い。

この基準に法的根拠はない。だから裁判になれば通るわけがない。そのことは保険会社も重々承知している。*1

でも大抵のケースではこの基準で丸め込んでしまえるからこれを使っておこうという、無知な被害者につけ込むことを前提とした基準だ。

今回の私自身が被害者となった事故では、私が自分で交渉した。

だが最も典型的なのは、双方自動車の事故で、双方任意保険に加入しており、保険会社どうしの交渉になるケースだろう。

この場合、双方とも任意保険基準を使うことが暗黙の前提になって話が進む。

相手方の保険会社は敵かもしれないが、自分の契約している保険会社は味方に違いないと普通は思うだろう。

しかしあなたの保険会社も、「任意保険基準は裁判基準とかけ離れて低いから、これで示談しては損ですよ」とわざわざ教えてくれたりはしない。自社も任意保険基準を使っているし、自社の契約者の回収額が増えても儲けが増えるわけではないからだ。*2

こうしたいわば八百長が行われるのが常だから、本来は通らないはずの任意保険基準で多くの交通事故が示談に至ってしまうわけだ。

ただし、このように正当な賠償をしない前提で自動車保険のシステムが回っていることから、その分だけ保険料は安くなっていると考えられる。

一方、弁護士をつけるなどしてきちんと権利主張すれば正当な賠償を受け取れることは既に述べたとおりだ。

そうすると、このシステムを全体として見れば、

ほとんどの人が権利主張しないことを前提に保険料が低額に抑えられているため、権利主張する一部の人だけが得をするシステム

と評価できるだろう。

どうも不正義な気はするが、とにかくこれが現実だ。

弁護士 三浦 義隆

おおたかの森法律事務所

http://otakalaw.com/

*1:それゆえ弁護士がつくとたちまち提示額が跳ね上がるわけだ。まったく舐めた話。

*2:その点弁護士は依頼者の回収額が増えれば増えるほど成功報酬が増えるから、取れるだけ多く取ろうとするインセンティブがある。

あわせて読みたい

「弁護士」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。