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不正を発見した従業員の内部通報義務について(過去の判例)

先日は「もうひとつのエフオーアイ事件判決」として、民法719条2項(共同不法行為のほう助)に該当する事案をご紹介しましたが、こちらはもうひとつの共同不法行為のほう助を認めた事案です。

安西愈先生の労働法に関するご著書を拝読していて知ったのですが、過去に不正を発見した従業員について信義則上の内部通報義務を認めた判例があるのですね(恥ずかしながら存じ上げませんでした)。ネット情報からのコピーですが、以下のような概要です。

コンビニにおける同僚の商品盗取に対する従業員らの損害賠償責任--さえき事件・福岡地裁小倉支部判決の研究(福岡地裁小倉支部 平成10.9.11)

自らの店の商品を盗取するなどの不正行為をしないことはもとより、他の従業員による不正行為を発見した時は、雇用主にこれを申告して被害の回復に努めるべき義務をも負担するものと解するのが相当である。←コンビニにおける友人の不正取得を黙認していた従業員が会社から訴えられた事案です。

そして、従業員自らが商品を盗取するなどの不正行為をした場合にはこれが不法行為を構成することは明らかであるが、更に、他の従業員による不正行為を発見しながらこれを雇用主に申告しないで被害の発生を放置した場合には、その不作為が前記内容の誠実義務に違反する債務不履行を構成するのみならず、その不作為によって他の従業員による不法行為(不正行為)を容易にしたものとして、不法行為に対する幇助が成立するというべきである。

労働契約法も公益通報者保護法も存在しなかった頃の判例ですが、信義則上の内部通報義務が、公益通報者保護法に基づく第三者への情報提供(内部告発)まで制限するような労働契約の存在まで肯定するものではないとも思いますが、少し気になる判決です。

そこで、本日、労働法律旬報1483号(2000年7月10日号)17頁以下を取り寄せて、浅野高広氏(北大大学院:当時)のご論稿を拝読いたしました。⑴どのようなことがあれば抽象的な通報義務が、「不作為の違法性」を認める根拠となる具体的な通報義務に変わるか、⑵通報対象事実を具体的に特定できない程度にしか不正事実を知らない場合でも通報義務がなぜ認められるのか、という点がかなり理解できました。

いままでは、「内部告発は企業にとって不利ですよ、だから内部通報制度をしっかり作りましょう」といった説明をしていましたが、これだけでなく「これだけ会社がしっかり内部通報制度を作っているのだから、あなたは内部通報をしないと不法行為責任を問われますよ、だから内部通報しましょう」といった説明もありうると思いますね(注・・・ただし上記判決も信義則上の義務としていますので、あくまでも事案によりますが・・・)。

消費者庁の公益通報者保護制度の実効性向上検討会では、法改正に向けた議論が進みましたが、(某委員の方から主張されたとおり)、実は通報後の調査との関係は、あまりつっこんだ意見交換がされませんでした。ただ、雇用契約上のいろんな論点を検討していますと、通報者や通報対象者と「調査協力義務」との関係でも、内部通報制度を構築するにあたって留意すべき論点が存在することに気がつきます。今後またいくつかご紹介したいと思います。

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