- 2017年05月03日 08:19
「息をするように嘘をつく」三遊亭円歌の落語界への貢献は計り知れない
2/2春風亭昇太「もうね、いつもバカウケだった」

師の訃報を受け、落語家・春風亭昇太が円歌の芸に言及した。
< 「ラジオビバリー昼ズ」(ニッポン放送) 2017年4月26日より >
昇太「円歌師匠はネタの数ってことで言うと、そんなにたくさんやってなかったんだけど、もうね、いつもバカウケだったの」
乾貴美子「ええ~」
昇太「どうやったらそんなこと出来んのかってぐらい。僕らはね、どうしてもネタを喋ってると、段々飽きてくんだよね。自分が喋ってることに。なんていうのかな、感動みたいなものがなくなって来るわけよ。そうするとトーンが落ちてくるわけですよ。笑いの量も何もかも落ちてくるんですよ。それが(円歌師匠は)全然落ちないでずーっとこのネタ(「中沢家の人々」)、盤石なネタがあって、それ喋ってたらもう絶対バカウケっていう、ずーっとおんなじ勢いで新鮮に語るのさ」
乾「凄いですね」
昇太「それは凄かったですよ。もうね、こういうのをプロって言うんだなって感じ。だからこう、次の(新)ネタ、次の(新)ネタってふうにいく人じゃないんだけど、(持ちネタ「中沢家の人々」が)確実にウケるの」
爆笑系の落語家の中で、円歌のような寡作派は珍しい。同じネタをかけ続けてもモチベ―ションが下がらないのはなぜか?
円歌自身は「中沢家の人々」に対してこう述べている。
< CD 「三遊亭圓歌 中沢家の人々 完全版」ライナーノーツより >
『中沢家』は昭和の四十年代から練りに練って、オレのスタイルに作り上げたものだからね、どんな客にだって対応できる。同じに聞こえる『中沢家』でも、その日の客席によって、微妙に中身は違ってるんだよ。
同じようで微妙に違う・・・日々の僅差に話芸の深みを見出し、常に満足のいくものを提供する職人気質が長年のモチベーションを支えていたのだろう。
どんな客にも対応した「中沢家の人々」――、例え持ち時間が数分でも一時間でもネタは伸縮自在だったという。そして観客の趣向を察し、即妙に内容の微調整が可能という話者としての高いスキルが、全国各地ですべらない高座の連続記録を更新し続けてきた。昭和平成の演芸史における高座漫談の完成形が「中沢家の人々」だと言っても「うそ」ではないだろう。
ゴールデンウィークに聞きたい落語
もし、この「中沢家の人々」に触れたことが無いのなら、ゴールデンウイークに手を伸ばしてみてはいかがだろうか? 幾つかのソフトが市販されている。
<CD>
◎NHK落語名人選100(70)三代目 三遊亭圓歌「浪曲社長」「中沢家の人々」
※1996年の収録。放送用に編集されて約18分半。これが最も頻繁に口演されたサイズの「中沢家」。必聴盤。
NHK落語名人選100 70 三代目 三遊亭圓歌 「浪曲社長」「中沢家の人々」posted with amazlet at 17.05.02三遊亭圓歌(三代目)
ユニバーサル ミュージック (2015-11-18)
売り上げランキング: 4,303
◎「三遊亭圓歌 中沢家の人々 完全版」(オーマガトキ)
※2005年、鈴本演芸場でなんと一時間以上に渡った高座を収録。ファンにはたまらない希少な長尺盤。このとき76歳。年齢を超越した闊達な口跡に敬服する。
<DVD>
◎NHK DVD 落語名作選集 三代目 三遊亭圓歌
※表情と仕草、高座をまるごと楽しむなら映像で。笑い待ちする際の目がキュート。百戦錬磨の話芸者が到達した芸の記録。
NHK DVD 落語名作選集 三代目 三遊亭圓歌posted with amazlet at 17.05.02ユニバーサルJ (2006-01-18)
売り上げランキング: 8,319
ネット上にも動画や音源があるので、そこから入ってもいい。その際は出来るだけ口演時間が短いものから選んだほうが、噺のキレをより感じやすいだろう。
そして「中沢家の人々」にハマり、落語家による爆笑漫談系の高座をさらに聞きたくなったなら、多士済々な円歌一門から三遊亭歌之介を検索してみてはどうだろう。まだご存知なければだが、歌之介は円歌門下のベテラン真打。漫談・地噺が主だった円歌の話力を見事に受け継ぎ、そこに自身のネタを注ぎ込んだ爆笑高座は全国から引く手あまただ。人気落語家である。
多忙な歌之介が五月は都内各寄席に出演する。
<三遊亭歌之介 寄席出演情報>
◎ 五月上席(1日~10日)鈴本演芸場(昼) 浅草演芸ホール(昼)
◎ 五月中席(11日~20日)鈴本演芸場(昼) 末廣亭(昼トリ)
◎ 五月下席(21日~30日)浅草演芸ホール(夜)
この時期、弟子の口から師匠を偲ぶ話も聞けるだろう。そこに師匠ゆずりの「うそ」があっても話半分で笑って追悼したい。そして、高座から聞こえてくる音声に耳を傾けながら、円歌師匠の天賦の声に思いを馳せてみたい。
- 松田健次
- 放送作家。落語会の企画制作も手がける。
らくご@座:http://rakugo-atto-za.jp/






