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- 2017年05月03日 10:10
【特別寄稿】 GWに遠出してでも劇場に観に行くべき4本の傑作映画 - 高盛雅子
2/2■20年ぶりにヤツらが帰ってきた! ~ 『T2 トレインスポテッィング』
ここまでBLOGOS読者の皆さんよりもおそらく先を歩いている先輩方を描いた作品を紹介しましたが、続いては読者の皆さんが若い頃ご覧になったかもしれない1本です。20年ぶりに続編が公開された『T2 トレインスポッティング』。ダニー・ボイル監督とユアン・マクレガーを大スターにした前作の公開が1996年。今はなき渋谷のシネマライズ、混んでましたよね。20年前と同じ、懐かしいメンバー再集結で、エジンバラのジャンキーな悪ガキたちも、今じゃオトナな40代、50代。ちょっとはまともになってるかと思いきや…。
演じている役者さんたちはスターウォーズのオビワンだったり、大ヒットドラマ『エレメンタリー』のシャーロック・ホームズだっり。それぞれ大出世してるんですけど、『トレインスポッティング』の時間軸の中の登場人物たちは相変わらず人生に行き詰まっていました。それを映像で見せられると、この20年はロスジェネだと、変わらない、いや変われないことを時代のせいにしていた我が身を見せつけられるようで、映画の冒頭は胸が締め付けられました。やばい、こいつらと一緒だ…と。
しかも20年が経っています。映像にも20年分の年輪がくっきり。
お互い老けましたなぁと、慰め合いたい気分にもなりました。
ただ、長い月日はジャンキー少年たちを少しは成長させていまして、前作では発想もできなかったであろう大人としての優しさもチラホラ。重ねた年月は無駄じゃなかったんだとホッとさられます。
ダニー・ボイルが仕掛けた20年ぶりの銀幕同窓会、かつての若者の皆さんにも是非ご覧いただきたいです。
■感動の実話を映画化 ~ 『LION 25年ぶりのただいま』
そして最後に泣ける1本、『LION 25年ぶりのただいま』。
広い広ーいインドで間違って回送列車に乗ってしまって何日も旅した挙句、迷子になった5歳の少年サルー。結局家には帰れず海を渡ってタスマニアの夫妻の養子になって、やがて大学生になった彼はグーグルアースで故郷を探すという壮大なお話で、実話だそうです。
大きくなった彼は『当時の列車の速度×移動時間で大体の距離が割り出せる』って、数学に強いインド人らしい発想で計算し始めます。壁に貼った大きな地図には幼い頃、列車でたどり着いたコルカタ(=かつてのカルカッタ)を中心に半径1600キロの円がぐりーっと。ここを5歳当時のおぼろげな記憶を頼りに、何年もの歳月をかけて血縁者のいる家を探り当てようという試み。知っている道ならたどることもできますけど、おぼろげにしか覚えている駅近の給水塔を頼りに上空の写真からたどるんです。無茶です。
それでも突き進んだのは、今もインドにいる家族が自分を探しているはずだという思いからでした。5歳のサルーは貧しいシングルマザーと歳の離れたお兄ちゃんにとても愛されて育ったんです。そういうあったかい記憶があるから、彼は自分が無事だと伝えたくて必死に探します。でも肉親を探すことは養父母への裏切りだと考えて、誰にも言えず、家に引きこもってパソコン画面と地図をにらめっこする日々。当然周囲は心配します。やがて育ての親に打ち明ける日が来るんですが、そのお母さんを演じるのがオスカー女優のニコール・キッドマン。彼女の顎のラインがたるんだ老いた姿が画面にドーンと出てくると、20年の時間経過の表現には軽くめまいを覚えるんですけど、そこまでの姿を晒したニコール演じるお母さんから出てくる言葉がまた愛情深くって。この設定と同じようにニコール自身も養子を迎えて家族として生活しているからこそ滲み出る説得力があって、圧巻でした。
そして主人公・サルーを演じたのが『スラムドッグ$ミリオネア』でスターの仲間入りを果たしたデヴ・パテル。まだ少年だったスラムドッグの時はスラムで培った知恵でサバイバルしていましたけど、あの子がこんなに大きくなったのねぇ…と親戚の子を見るような気持ちになりまして、今作品でもグーグルアースで旅してサバイバルする姿に、また応援したくなっちゃいました。
それから5歳のサルーを演じた子役のサニー・パワールくん。子猫みたいな声を出す、瞳がキラキラ美しい少年です。映画初出演の天才少年の熱演。全部が必死で全力で、泣けるほど感動します。彼に会いに、この作品を見るのもいいかもしれません。そうそう、タイトルにある『LION』、ライオンは一頭も出てきませんが、オチは最後に。ハンカチをお忘れなく!



