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日米首脳が演出する「開戦前夜」の狙い

■「史上最低の不人気大統領」が抱きついた相手

安倍晋三首相とトランプ米大統領の「蜜月」ぶりに注目が集まっている。2月の日米首脳会談で日米同盟の重要性を確認した2人は、懸念された経済・貿易交渉といった難題は先送りし、双方が「支持」を表明し合う関係構築を急いだためだ。トランプ大統領から「100%、日本を支持する」と明言された安倍首相は、米軍によるシリア攻撃に「米国政府の決意を支持する」と応じた。過激な言動で物議を醸し、史上最低の不人気ぶりを見せるトランプ氏と、いまだ高支持率をキープして長期政権の道を歩む安倍首相。急速に築かれた「ウイン-ウイン」の裏側には何があるのか。

当初、日米関係はギクシャクすると見られていた。2014年4月に来日し、東京・銀座の高級すし店などで厚遇したオバマ米大統領(当時)は、安倍首相と「ケミストリーが合わない」(首相官邸関係者)ことで知られ、日米関係を深化できない「忍耐の時代」が続いた。その後登場したトランプ氏も大統領選で在日米軍撤退の可能性に言及し、安保条約改定を求める始末だったためだ。

トランプ氏は安保面だけでなく、「日本が牛肉に38%の関税をかけたいならば、米国は日本の自動車に38%の関税をかける」と日本を揺さぶり続け、日本政府内には悲観論が充満していた。

転機が訪れたのは1月の大統領就任直後。型にはまらない「暴言王」は選挙期間中に既存勢力が吸収しきれない層から人気を集めたが、実際にTPP(環太平洋経済連携協定)離脱やメキシコの「国境の壁」建設など大統領令を乱発すると、トランプ離れが加速。40%台半ばをつけていた支持率は下降線をたどり、「史上最低の不人気大統領」と揶揄される事態に陥ったのだ。

窮地を救ったのは、皮肉にもそれまで「攻撃対象」にしていた日米関係だった。風向きの変化を敏感に感じ取ったトランプ氏は「日本への抱きつき」に舵を切り、2月に訪米した安倍首相を別荘地やゴルフで歓迎した。北朝鮮のミサイル発射を受けて記者会見した安倍首相と並び、「米国は、同盟国である日本を100%支持していく」とまで表明してみせたのだ。ある自民党幹部は「国内で高まった不信を国外に向ける必要があったのだろう。つまり『我々の敵は北朝鮮にある』とね」と語る。

その「変化」は安倍首相に渡りに船だった。それまでの日米関係の懸念が払拭される上、緊張感が高まる北東アジアでの米国の関与が期待できるためだ。核・ミサイル開発を進め、拉致問題を解決しようとしない北朝鮮に対して、米国による「圧力カード」は欠かせない。加えて、学校法人「森友学園」への国有地売却問題で支持率低下に苦しんでいた政府・自民党は、ここぞとばかりに「森友問題よりも北朝鮮問題が大切だ」とボルテージを上げていった。北朝鮮への敵基地攻撃論や制裁強化プランが矢継ぎ早に飛び出し、「開戦前夜」を思わせる雰囲気が一気に醸成されていったのだ。

2人の「戦略的互恵関係」が深まる中、安倍首相は国際法上の手続きを経ずにシリアを攻撃した米国に関して「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米政府の決意を支持する」と配慮を見せ、トランプ氏は「(北朝鮮問題は)我々が解決する」と圧力をかけ続けている。

■「ジョーカー」を手にした安倍首相

北朝鮮やシリア問題の先行きは見通せないが、ウイン-ウイン関係にある日米首脳の共通点は、時に過激な言動を見せて批判を浴びてもコアな支持層に強力に支えられている点だ。ピンチを迎えても、熱烈な支持者がツイッターなどSNS上で活発化し、メディアでも政権の意向を「忖度」して擁護する発言を繰り広げる。そして、日本の民進党、米国の民主党という前政権を徹底的に批判し続ける。そこに共通点を見出す向きは少なくない。

民進党幹部の一人は「首相は『解決させる』と言った拉致問題が進展せず、トランプ氏に賭けたのだろうが、あの盲従ぶりは危険。自分が批判されると激高するところは似た者同士で、ケミストリーは合うんだろうけどね」と語る。激動する国際情勢は、いまや2人の関係を抜きに語れなくなった。「ジョーカー」を手にした安倍首相の次の一手が注目される。

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