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読後感:「更正について」

為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

元少女無罪を主張 精神障害を理由に

名古屋で殺人事件を起こした少女の初公判が行われた。弁護側は少女には精神障害があり、責任能力がなかったと主張している。被害者の方の年齢と私の母親の年齢は近い。想像するだけで胸が痛くなる。

私は犯罪を犯した人を更生させるのがどういった仕組みで行われるのかよく知らないが、被害者が正常であるか異常であるかの判断はどのようになされるのだろうか。また異常だった場合どのようにして正常化への取り組みは行われるのだろうか。

こういう事件が起こる度に、

①欲求
②分別
③行動

の三つのレイヤーを想像し、どの段階の話をしているのかを考える。例えば弁護側は記事を見る限り、③はあったが、②がなかったと主張しているのだと思う。では、更生を行うというのはどういうことなのだろうか。③を制限できるようにするのか、②にアプローチするのか、または①から変えようとするのか。

教育は①にアプローチできるのか。彼女のような特殊な場合でない時は、①に教育はアプローチしていいのか。また①は教育によって変えうるのか。もし変えることができないのであれば、①という欲求を抱えていて、②と③を強化することによって犯罪を起こさないようにするということが正常化のアプローチなのか。

話せばわかるという世界観は、相手は必ず同じように感じ、同じように考えるはずだということが前提にあると思う。そうではない人がいたら、仮に宇宙人がいたら私たちは本当にコミュニュケーションできるのだろうか。

昔読んだ、【臨床の詩学】という本が浮かんだ。

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平野啓一郎さんの本は一度も読んだことがなかったのに、津田さんに勧められて小説をすっ飛ばしていきなりエッセイを読んでしまいました。今度小説を読んでみようと思います。

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個人という単位ではなく、分人という誰かとの関係という単位で捉えるべきではないかということが丁寧に書かれています。おそらく誰しもがぼんやりと考えたことがあるいくつかの自分という考え。分人という考えはそれを肯定し、それは自然なことなのでそのまま抱えていきていけばいいと、背中を押されるような気持ちになります。

内容に強く納得しつつも、実は私はこの感覚が”今は”あまりありません。かといって、ものすごく社交性が強いかというとそういうわけでもありません。

小さい頃は、同じような感覚がありました。親と一緒にいるところを友達に見られたくありませんでしたし、中学校の友達と高校の友達が会ったりするのはいやでした。また、本当の自分てなんなんだろうと考え込んだことも一度や二度ではありません。それでも今は抵抗感がなぜか小さい。

自分で分析しながら本を読んだのですが、競技体験というのが大きいような気がします。競技を極めていくプロセスで、他者を意識しないで(というか視界に入りにくくなるのですが)ひたすらに没頭する世界に長くいると、外部の目に対し鈍感になり、平野さんの言葉でいう、自分と向き合うだけの分人がかなりの領域をおさめるようになっているのかもしれません。

コミュニケーションが上手い人も、そうではない人も、何らかのヒントになると思います。皆さんも読んで、自分はどうだろうと考えてみてください。

(為末HPより)

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