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トランプ大統領の意思を「忖度」するヘイリー米国連大使 - 鈴木一人

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ヘイリー大使はトランプ外交を動かしているのか?

 このように明示的な訓令を受けないまま、国連の場でどんどん発言するヘイリー大使を評して、ティラーソン国務長官と同等の力を持ち、今やトランプ政権の外交を引っ張る存在である、との記事が『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載された。シリアやイラン、ロシアに関するヘイリー大使の発言が、ティラーソン国務長官やホワイトハウスよりも先で、それに引っ張られて発言の修正や後追いをせざるを得ない状況にある。実際、ホワイトハウスから発せられるメッセージが混乱しているだけに、多くの外交官はヘイリー大使の発言に注目せざるを得ない状況にある、という内容だ。

 果たしてヘイリー大使の発言は、トランプ外交を動かしていると言えるのだろうか。

 これまで見ている限りでは、ヘイリー大使が限られた情報や訓令の中からトランプ大統領の思考や発想を読み取り、状況に応じてその発言を修正し、なんとかアメリカ外交を他国にも理解出来るような言葉に変えようという努力の跡が見られる。つまり、ヘイリー大使はトランプ大統領の思考を「忖度」しながら国連外交のみならず、トランプ外交全体を俯瞰しつつ発言しなければならないと自認しているように見えるのである。

 故に、自らの発言がしばしばホワイトハウスによって修正されたり、全く異なる形で表現されたりすると、その後適宜修正せざるを得なくなるという状態に陥る。

 元々選挙期間中はトランプ大統領を支持しなかったにもかかわらず、その気っ風の良さを買われ、政権発足早々国連大使に指名されたという異例の扱いを受けたヘイリー大使であるが、トランプ大統領と親しかったわけでも、その発想の原点を共有しているわけでもない。また、国連本部のあるニューヨークはワシントンDCから離れているため、ホワイトハウスの中で起きている様々な権力闘争や人間関係に関与出来ているわけでもない。

 ヘイリー国連大使は目下、議長国としての権限を持つ4月の間に、安保理加盟国15カ国の大使をつれてホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領や主要な議員と面会することを企画している。安保理メンバーの大使が紛争や感染症問題の現場を全員で視察に行くといったことも過去に行われたことがあるが、今回の企画は、トランプ大統領が国連への拠出金を削減し、国連の活動が危機に瀕している状況を直接訴えたいという加盟国の切実な思いがあると同時に、ヘイリー国連大使にとっては、遠く離れたニューヨークではなく、自分の上司の目の前で活動することで、余計な「忖度」をする必要をなくし、自分の忠誠心をトランプ大統領に見せる機会を作りたいからなのだろう。

 こうした政治的野心を持ち、トランプ大統領へのアピールを欠かさないヘイリー国連大使だが、その活動が結果として、国連に対してネガティブなイメージしか持たず、国連の役割を小さくしようと試みてきたトランプ大統領の意識を変化させ、国連の役割の重要性を再認識させる結果となっているとの記事が『フォーリン・ポリシー』誌に掲載されている。これはある種の怪我の功名ではあるが、残念ながら、トランプ大統領の大方針である拠出金の削減を変更するまでには至っていない。(鈴木一人)

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