- 2017年04月27日 10:31
千葉県の女児殺害事件報道に、あの奈良女児殺害事件と同じ危うさを感じる
2/2さらに言いたいのは、今回の容疑者が仮に小児性愛者だったとしても、今マスコミに流布されているそのイメージがあまりにも安直なものである気がするのだ。前述したように、私は小林薫被告と会ってから、その後約1年間にわたって、密な接触を続けるのだが、小児性愛というものをどう考えたらよいか戸惑うことが多かった。彼は鑑定で小児性愛者と認定されるのだが、世間に流布されている小児性愛というイメージと現実の彼とはかなり異なっていたのだ。
考えてみれば、薬物依存でも精神障害でも、世間に流布されたイメージと現実が違っていると感じることは多いし、私が10年以上つきあった幼女連続殺害事件の宮崎勤死刑囚(既に執行)にしても、マスコミでは精神が崩壊したモンスターのような描かれ方をすることがあるが、現実の宮崎死刑囚とはかなり違う。そもそも小林死刑囚自身も、自分が鑑定によって小児性愛者と認定されてからも、それを決して認めようとしなかった。
私がこの何年か、再び奈良女児殺害事件を思い起こすことが多いのは、この事件が、性犯罪者に対する治療プログラムが刑務所に本格導入されるきっかけになったためだ。2015年に、その10年後の成果が発表されたのだが、治療プログラムを受けた性犯罪者は再犯率に大きな影響が出ているという内容だった。その実効性の認定のしかたに疑問を呈する声も少なくないのだが、ただ性犯罪者を刑務所に一定期間閉じ込めて再び世に放り出すというそれまでの名ばかりの矯正を改める努力がなされていること自体は評価すべきだと思う。
その2015年の発表データについては、当時ヤフーニュースで記事にしている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20151114-00051453/
薬物事件についても2016年6月から刑の一部執行猶予を導入するなど、処罰一辺倒から治療へという流れができつつある。性犯罪については今の国会で刑法の一部改正案が成立する見通しだが、これを機会にステレオタイプの理解でなく、もっと踏み込んだ社会的議論が起きてほしいと思う。
私もこの1年ほど、そうした気持ちもあって、性犯罪者と接触する機会が増えた。昨年ヤフーニュースで紹介し、大きな反響を呼んだのは、元ヒステリックブルーのナオキのケースだった。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20160706-00059689/
実はこのナオキの手記公表をめぐってちょっと考えさせられることがあった。ヤフーニュースの解説では割愛したのだが、雑誌『創』2016年8月号で私はこう書いた。
《ナオキの場合は、生きがいだった音楽活動の行き詰まりといった事件の背景があると思われるから、性犯罪といっても事情は異なる。》
これに対して、ナオキと別に接触していた性犯罪服役者から、篠田さんはまだ性犯罪というものがわかっていない、という指摘を受けた。精神的な行き詰まりや何らかのトラウマから性犯罪を犯すというのは、決して例外ではなく、そういう事例は少なくないというのだ。これについては私の認識不足を率直に認めたいと思う。性犯罪というものにそうした面があるからこそ、精神的な治療プログラムによって実効性があがるということにもなるのだと思う。
もちろん性犯罪といってもいろいろなケースがあるのは確かだろう。しかし、マスコミに流布されている小児性愛者のイメージは、もうその性癖は治療しようもなく、出所後もその情報を公表して社会から隔離してしまえという乱暴なものだ。
薬物犯罪については、ようやく最近になって、社会的病理という側面もあるので処罰だけでなく治療が必要だという認識が広がりつつあるように思えるが、性犯罪をめぐってはあまりにステレオタイプな議論だけが繰り返されている気がしてならない。
もちろん性犯罪が許されないものであることは明らかだ。殺害に至らない事件でも、被害者には深刻な精神的傷を負わせる。今回の千葉の事件も、被害女児の映像がテレビで映されるたびに胸がしめつけられる思いにかられる人は多いだろう。だから報道もやや過熱する傾向はあるのだが、ただ奈良女児殺害事件がそうだったように、事実と異なる報道がなされたり、あまりにステレオタイプなキャンペーンがなされることは、決して現実を良い方に変えていくことにはならないと思う。
足利事件の菅家さんの冤罪が明らかになった時、逮捕当時の報道を見て唖然とした。家宅捜索で小児性愛をうかがわせるエロ本やビデオが押収されたとマスコミが大々的に報道していたのだ。今回、それとよく似た報道がなされているのを見て、危うさを感じずにはおれなかった。千葉県の事件についていえば、1日も早く真相が解明されることを望むのみだ。
※Yahoo!ニュースからの転載



