- 2017年04月25日 17:05
「同性カップル、里親に」報道から考える今後の課題 / 一般社団法人レインボーフォスターケア代表理事 藤めぐみ
2/2「全国初」の報道、そこから見える課題
今回、「全国初の同性カップル里親」との報道が多く見られました。それは、ある意味では正しく、ある意味では少し誤解を生む表現かもしれません。というのも、私は以前から、「里親をしている同性カップルがいる」と聞いていましたし、その方たちについて少し報道されたこともあったからです。
では、今回の報道を見てみましょう。4月5日の毎日新聞の記事には、「厚生労働省は同性カップルの里親認定について『聞いたことがない』としており、全国初とみられる。」とあります。つまり、「厚生労働省が聞いたことがない」という報道なのです。私が聞いていた同性カップルの里親認定については、厚生労働省が把握していなかったことになります。
また、4月6日の東京新聞の記事では、「同性カップルでは、関東地方の女性二人がそれぞれ個人で認定された後、一緒に子どもを預かったケースがある。」とあります。
さらに、4月16日の毎日新聞の記事には、「兵庫県は昨年3月に30代の女性カップルを養育里親に認定していた」とも記されています。
他にもそういったケースはあるのかもしれません。ここで大切なのは「誰が『全国初』なのか」ではありません。
今回の件において注目すべきことは、「自治体が同性カップルを一つの『単位』『世帯』と捉えて認定したこと」「その認定を厚生労働省が把握したこと」「その結果、厚生労働大臣がコメントしたこと」です。
現在、国勢調査において、同性カップルについては親族に準ずる扱いにならず、ルームメートや単なる同居人のような関係に含められています。そのため、国が同性カップルについて、数や家族構成を集計していないという問題があります。
2015年の調査の前には6つの団体から共同で改善要望書が出されましたが、まだその改善は実現していません。
国勢調査において、同性カップル、そして同性カップルで子育てする家族は、統計上「いないこと」にされているのです。「いないこと」にされると、政策や施策を打ち出していく際の根拠が失われます。
現在、離婚後、同性パートナーと共に実子を育てている方がいますが、同性パートナーはその子どもの親権者になれません。精子提供によって子どもを出産し同性パートナーと子育てする家庭も同じ問題を抱えています。また、同性カップルの法制度が整わないことで、さまざまな問題が生じています(注4)。
(注4)LGBT法連合会「LGBTの困難の事例リスト」
http://lgbtetc.jp/news/164/
国や自治体は、同性カップルをはじめ、さまざまなマイノリティ家庭について世帯の実態をきめ細かく正確に把握することで、より有効で現実に即した政策や施策を打ち出していくことができます。また、実態の正確な把握は、マイノリティ家庭で育つ子どもたちを取り巻く環境の改善にもつながります。
今回の報道では、厚生労働省がマイノリティ家庭を把握し、厚生労働大臣が里親について「ありがたい」と発言しています。また、吉村洋文大阪市長は「(こうしたことが)ニュースにならないのが在るべき社会だと思う」と述べています(注5)。
(注5)4月7日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017040702000120.html
省庁や自治体が、マイノリティ家庭をしっかりと受け止め、政治家が前向きなメッセージを出したことは、意義のあることです。
「同性カップルの家庭の子どもなんていじめられるのではないか」という批判がある中で、政治家の「ありがたい」「ニュースにならないのが在るべき社会」は、社会で多様な家族をきちんと受け止め、共に生きていこう、という力強いメッセージにもなりました。
今回の報道をきっかけに、国や自治体には、統計上「いないこと」にされている人たちについて、正確に実態を把握し、すでに存在している多様な家族が安心して暮らしていくための政策や施策を検討してくださるよう期待しています。
「同性カップルと養子縁組・里親」関連の参考図書
【ノンフィクション】
画像を見る
『キッド――僕と彼氏はいかにして赤ちゃんを授かったか』
ダン・サヴェージ (著)、大沢章子 (翻訳)
内容(「BOOK」データベースより)
同性カップルが養子縁組によって子どもを迎えるまでの事の次第を等身大で綴った痛快ノンフィクション。ダンとテリーはゲイのカップル。オープン・アダプション(開かれた養子縁組)で子どもを迎えようと決めた二人だが、男二人で「育ての親」になるという挑戦に加え、「生みの母親」であるホームレスのパンク少女メリッサの事情も絡んで、縁組成立まで一喜一憂の道のりに…。前例のないさまざまなステップを踏破して、ついに愛する息子D・Jの親になるまでの自身の体験を、機知とユーモアたっぷりに語る。自虐&下ネタ満載で(その実、真摯に)経験を語り、同性愛への偏見に対しては辛辣な皮肉の乱れ撃ち!この愛すべき著者は、世界的なムーブメントとなったIt Gets Better Projectの発起人にして「アメリカで最も有名な同性愛者の権利擁護活動家の一人」(ハフィントンポスト)。何が人を親にするんだろう、家族って何だろう―読み進むほどにページを繰る手がもどかしいほど加速する、新しいかたちの家族の誕生物語。
【ルポ】
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『ルポ 同性カップルの子どもたち――アメリカ「ゲイビーブーム」を追う』
杉山 麻里子(著)
内容(「BOOK」データベースより)
ニューヨークで暮らす著者の長男の親友チャーリーには、二人のパパがいる。この一〇年間で子どもを育てる米国の同性カップルは倍増し、一〇万組以上にのぼるとされる。チャーリー一家のような同性親家庭は、米国の都市部を中心に日常の風景となりつつあるようだ。同性婚の合法化など性的マイノリティ(LGBT)の権利保障が注目されるなか、本書は、米国で進行中の「家族のかたち革命」の現実を追う。里子や養子だけでなく、精子・卵子提供、代理出産など生殖補助医療で子をもうける同性カップルと、その子どもたちの肉声を伝える。
【海外】
イギリスの本。実際の子育てについて同性カップル当事者やその子どもが語っている。
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『The Pink Guide to Adoption for Lesbians and Gay men』
>Nicola Hill (著)
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『Proud Parents』
Nicola Hill (著)
藤めぐみ(ふじ・めぐみ)
一般社団法人レインボーフォスターケア代表理事
法務博士(専門職)。 1974年豪州・シドニー生まれ。大阪府育ち。大阪大学文学部卒業、関西大学法科大学院修了。衆議院議員公設秘書、自治体職員などを経験。2013年、LGBTと社会的養護の問題について考える団体「レインボーフォスターケア」を設立。同年9月、IFCO世界大会(IFCO=家庭養護の促進と援助を目的とした世界で唯一の国際的ネットワーク機構)にて唯一LGBTをテーマにしたワークショップを開催。司法・立法・行政の各分野に携わった経験をもとに、さまざまな分野の専門家と意見交換を行いながら、LGBTと社会的養護に関する発信や提言をしている。
一般社団法人レインボーフォスターケア
http://rainbowfostercare.jimdo.com/



