- 2017年04月25日 07:00
「信頼」とは無条件のもの、浮気をされても「信じられない時にあえて信じる」のが信頼──『嫌われる勇気』岸見一郎先生に聞く
2/2【質問2】自立~自立とは、行動の価値を自分で認められること~

岸見先生の『子どもをのばすアドラーの言葉』という本に、「子育てのゴールは子どもを自立に導くこと」と書かれていました。 サイボウズも自立を大事にしている企業です。ただ、「自立するためには何が必要か?」という言葉の定義が足りていない気がします。アドラー心理学では「自立」にはどのような要素があり、どのように定義されているのか教えてください。

「自立」にはいろいろな意味がありますが、最も大きなポイントは「自分がしている行動の価値を自分で認められること」です。 子どもは大人の顔色を窺いますが、それは「こういうことをしたら叱られるだろうか? 褒められるだろうか?」と反応を見ているから。そうではなく、自分のしていることに価値があるかは自分で決めないといけないし、それで失敗した時にはその責任は自分で取ればいいのです。 また、「課題の分離」にも関わることですが、「子どもを自立させる」という言葉も危ない。親が子どもにレールをしいてしまうことになりかねないからです。「自分が自立するかは親の課題」と思うと、子どもは自立しません。「自分は何もしなくても子どもは自立する」と信じれば自立するのです。


子どもの進路を決めようとする親もいますね。ある子どもから、こんな話を聞いたことがあります。親がしょっちゅう、分厚い受験情報誌を片手に「お前はこの大学に行きなさい」と言ってくる。ほとんど毎週、2時間くらい延々とそんな話を聞かされる、と。
それに対して子どもは、いつもは黙って聞いていたのですが、ある日、意を決してこう言ったそうです。「私の人生なんだから私に決めさせてほしい。
もし私がお父さんの行けといった大学に行き、卒業する時に『こんな大学に行かなければよかった』と私が思ったら、お父さんは私に一生恨まれますよ。それでもいいですか?」と。親は愕然とし、それからは子どもの進路に口出しすることはなくなったとのことです。
親のやっていることって、ほとんどが自立の妨げになることです。子どもの課題を自分が解決できると思うから口出しする。親が唯一できるのは「私に何かできることはありますか?」と尋ねることだけです。「自分の課題を自分で解決できる」と信じていないと子どもは自立しない。企業で上司が部下に接する時も同じことが言えると思います。
【質問3】他者信頼~「信じられない時にあえて信じる」のが本当の信頼~

他者を信頼することについて伺いたいと思います。仕事をする上では、「この人はきっとやってくれるだろう、成果を出してくれるだろう」と期待して、信頼するわけですが、一方で、「やると言ってもやってくれないのでは? 裏切られるのでは?」という気持ちも心のどこかに持ってしまいます。そうならずに絶対的に人を信頼できるようになるには、どのようなコツがあるのでしょう?

まず、「信用」と「信頼」を区別することから始めましょう。「信用」は条件付きです。私は昔、銀行の預金残高がほとんどありませんでした。それだと銀行は信用してくれません。『嫌われる勇気』が売れて、出版社から印税が振り込まれた時に、銀行から「口座に振込がありましたが、何か心当たりはありますか?」と連絡が来たくらいですからね(笑) 対人関係はそれではいけません。信用ではなく「信頼」の関係を築く必要があります。信頼とは無条件のものです。「信じられない時にあえて信じる」のが信頼です。


以前、ある女性から「夫が頻繁に朝帰りをする」という相談を受けたことがありました。問い詰めても白々しい言い訳をするだけで、どうやら浮気相手がいることは間違いない。けれども相談者は、「これから彼とどうしたいんですか?」と訊くと、「彼との結婚生活は終わりにしたくない」と言う。 ならば「ほかに女がいるんでしょ」と夫を責め立てたら、なおさら家に帰って来なくなりますよね。そこで私は、「彼が帰ってきたら、『お仕事お疲れ様でした』と言ってお茶を出しましょう」と提案したのです。そうしたら2ヶ月後に、夫は相手の女性と別れて、朝帰りをすることもなくなったそうです。人間は、自分を信頼し続けてくれる人を裏切ることはできないのです。

裏切られたとしても、まだ先があると信頼し続けるべき、ということでしょうか?

未来がどうなるかは誰にもわかりません。でも、このケースのように「仲良くなりたい」という目標があるのなら、そのためにどういう選択をするかが重要。疑ったら目標を達成できないのなら、信頼することに賭けてみてもいいと思います。 無条件に相手を信頼するには、仮に裏切られるようなことがあっても、想定内、起こり得る事態と考えることです。そもそも裏切らせている自分がいる、と思えると、また違った問題解決の突破口が生まれます。
第4回に続く文:荒濱 一/写真:すしぱく(PAKUTASO)/編集:小原 弓佳



