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ルポ・大麻を合法化したデンバーの今 - 土方細秩子

 米コロラド州が大麻合法化の住民投票で賛成多数となったのは2012年、オバマ大統領の再選が決まった年のこと。この時の選挙では大統領選挙に投票した人よりも大麻合法化の住民投票に参加した人の方が数が多かった、と話題になった。実際に大麻が合法化され販売が始まったのは2014年1月からだ。

 そのコロラド州でも最も大麻ビジネスが盛んなデンバーを訪れた。市の空港からのアクセスポイントであるユニオン駅周辺には多数のオープンカフェが並んでいるが、そこを歩いているだけで微かに空気中に大麻の匂いを感じる。一応公共の場での大麻吸引は非合法で、所定の場所のみでの使用が認められているというが、街角で堂々と大麻を吸引する人々の姿も見かけた。

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大麻クッキー

リフトを使って大麻ショップへ

 大麻を販売する場所は「ディスペンサリー」と呼ばれる。とりあえずウェブでも宣伝する大きなディスペンサリーを訪れようと、「リフト」サービスを予約した。運転手にディスペンサリーが見たい、と告げると「少し街の中心から外れるとたくさんのディスペンサリーが集まっている場所がある」と言うので、案内してもらうことに。

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ディスペンサリー

 ユニオン駅から走ること約20分、フェデラル、という大きな通り沿いに確かに複数のディスペンサリーが見られた。特徴は+マークで、医療用大麻は医師からの許可証が必要だが18歳以上が利用でき、レクリエーション用大麻は21歳以上なら誰でも購入できる。

 ディスペンサリーに入ると、まず窓口で身分証明証を求められる。州外の証明だと販売できる量に制限があるらしいが、問題なく中へ通される。ただし厳重に鍵のかかったドアをくぐり抜ける必要がある。

 中はごく一般的なドラッグストアのようで、ガラスのショウケースの中には乾燥大麻が並べられているが、大麻は吸引用の乾燥大麻だけではない。入ってすぐの場所に「大麻キャンディ」を販売している男性がいた。四角いキャンディが薬のようなパッケージに入り、「舌の上でゆっくりと溶かすようにして摂取する」という。

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店内の様子

 またショウケースの後ろ側にはクッキー、グミ、錠剤などがぎっしりと並べられている。こうしたスイーツ系のほか、栄養ドリンクのような缶入りのもの、中にはスムージーとして販売している店もある。

 運転手氏によると「ディスペンサリーはどんどんクリエイティブになり、他にないようなユニークな商品を毎年開発している」という。大麻ビジネスは州経済にどのような影響があるかと聞くと「州の税収が増え、学校や福祉などにも予算が回るようになった。非常に良い結果をもたらしている」ということだ。

伸び続ける売り上げ、16年は13億ドルを突破

 それを裏付ける数字が州の財務局から発表されている。最初に大麻が合法化された2014年の売り上げは6億9920万ドル、15年は9億9620万ドル、そして昨年16年は13億1315万ドル、と順調に増えている。(医療用、レクリエーション用を合わせた数字)うち医療用は毎年4億ドル程度で変化が見られないが、レクリエーション用が年々増加した結果だ。コロラド州ではレクリエーション用大麻に15%の課税を行なっている。

 大麻合法化のメリットは、違法の場合は州に入らない税金が入ること、合法とすることで大麻取り締まりのための司法費用がかからないこと、など。実際まだ大麻が非合法の州でも、大麻所持はせいぜい罰金刑、というところが多い。大麻取り調べのために警察を動員し、裁判費用、拘置費用などを費やすよりも、罰金を簡易化する方向に進んでいる。そもそも医療用として合法化している州は全米26州にも及ぶのだ。

 コロラドの場合、合法化によって観光客が増えた面も大きい。特に近隣のテキサスなどから週末ごとに大麻目的で訪れる人が増えた、という。これにより観光収入も増えている。

デメリットも少なくない

 ただしデメリットももちろんある。まず、クッキーやキャンディの形態をした大麻製品を子供が誤食してしまい、病院に運ばれる、という騒ぎが特にコロラド州では頻繁に起きている。また連邦政府が非合法としている以上、ディスペンサリーはビジネスとして銀行口座を持つことができない。購入もカードは不可、キャッシュオンリーとなる。ディスペンサリーの店員は「文句があるなら連邦政府に言ってくれ。自分たちも不自由している」という。

 現金ビジネスだけに、それを狙う強盗被害も多くなる。さらに、他州から比較的安い大麻を大量に買い付け、非合法である州での地下ビジネスに繋げる向きがあることも指摘されている。

 また、需要の増大に従い大麻の卸売価格が下落している。コロラド州では16年の卸売価格は前年比24.5%ダウンの1ポンド(約450グラム)あたり1471ドルだった。これは医療用大麻を栽培していた小口農家を直撃する。大麻には将来のビッグビジネス化を見越してシリコンバレーのIT企業の参加も見られ、大規模栽培時代が始まろうとしているが、これまでの小規模農家は生き残れないことにもなりかねない。

 米では昨年の住民投票でカリフォルニア、マサチューセッツを含めて7つの州が新たに大麻合法化に乗り出すことになった。最も注目されるのはカリフォルニア州で、現在医療用大麻は合法化されている同州では医療用だけで年間100億ドルもの売り上げがある。これにレクリエーション用を加えるとまさに大麻ビッグビジネス時代の到来となる。この市場を狙い、今後様々な企業や業界が大麻ビジネスに乗り出す可能性があるのだ。 

 カリフォルニア州ではすでに来年からの合法化に向け、法整備が進められている。コロラドなどの前例から、信用組合のような銀行制度を作り大麻業者が利用できるようにする、大麻業者が現金を長い距離持ち歩かなくて済むようにあちこちに大麻業者専用の納税窓口を設ける、なども含まれる。しかし州政府のアドバイザリーグループが「大麻ビジネスへの出資を控えるよう」呼びかけるなど、連邦政府が大麻を非合法とする中での州ごとの合法化は今後様々な問題を提示する可能性がある。

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