記事

中国の南シナ海戦略と核戦略 - 岡崎研究所

 台北タイムズの3月19日付け社説が、中国の南シナ海の軍事化は核戦略とも結びついた大戦略の一環であるとして、強く警告しています。要旨、次の通り。

 最近のレポートによれば、中国はパラセル(西沙)諸島の北島の将来の軍事施設支援に向けた港湾の準備を含む軍事化を継続している。これは、何十年にもわたって中国が展開してきた地域海洋戦略の一環である。北島は、海南島の核搭載潜水艦の基地を防御すべく、地対空ミサイル発射装置やジェット機を一時的に配備している永興島に対する保護網の一部となる。

 中国は、ティラーソン米国務長官の警告にもかかわらず、発足したばかりのトランプ政権がこうした小さな変化を挑発的過ぎると見ないことに賭けているのかもしれない。

 中国はかつて、1991年のフィリピンの米軍基地閉鎖を利用し、南シナ海の広大な海域に対し国際法の裏付けのない「九段線」の再主張を始めた。このような主張の拡大は、単にエネルギーや天然資源のためになされているのではなく、もっと大きな狙いがある。中国の海洋戦略は長年、台湾への海からのアプローチを確保し、西太平洋における敵の行動の自由を拒否し、中国の海岸における通信を守ることであった。しかし、過去20年間、南シナ海の大部分の支配は、核戦略とも結びついてきた。

 陸の発射装置が破壊された場合の備えとなる長距離大陸間弾道ミサイル搭載の潜水艦を作戦可能な状態にしておくには、南シナ海を押さえていなければならない、というのが南シナ海における執拗な拡張の理由である。

 過去17年、中国は海南島の玉林に防衛能力の高い潜水艦基地を建設してきた。ここ7年、094型晋級原潜の導入を徐々に進めている。同潜水艦は、射程8000キロの弾道ミサイルを搭載でき、中国近海から米国本土の一部を標的にすることができる。2020年までには8隻が就役すると見られる。

 多くの他国がこの地域に戦略的利害を持っており、中国との衝突の危険に直面している。例えば、日本に輸入された石油の大部分は南シナ海を通って運ばれるから、中国が南シナ海を押さえてしまえば、日本の安全は深刻に損なわれる。

 海自が、5月に南シナ海にヘリ搭載護衛艦「いずも」を南シナ海に派遣し米海軍と合同演習をすると発表したのは偶然ではない。ヘリ搭載護衛艦の主たる任務は偵察と人道支援だが、対潜水艦戦のプラットフォームとしても使用し得る。

 中国の嫌がらせ戦術は、単なる領域や天然資源への欲望を遥かに超え、重大で対立的な戦略的考慮を見据えている。南シナ海はひしめき合い、各国政府は気をもんでいる。台湾にとり危険な時である。

出典:‘China’s South China Sea strategy’(Taipei Times, March 19, 2017)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2017/03/19/2003667037/1

 台湾は南シナ海と東シナ海を扼する位置にあり、これら海域とともに西太平洋における戦略上の要衝です。その中でも、本社説が指摘するように、特に、南シナ海の支配は中国の核戦略と不可分に結びついている、というのは的確な指摘でしょう。

 地政学的に見て、ミサイルや核を搭載した中国の潜水艦が、西太平洋に出ようとするとき、海南島の基地から出発して南シナ海を通過し、宮古海峡を越えて太平洋に出るのが普通です。

 中国としては、長距離大陸間弾道核・ミサイル搭載の潜水艦を作戦可能な状況においておくためには、まず、南シナ海を押さえておく必要があります。そして、さらに可能であれば、台湾の東海岸の港湾を自由に使用したいところでしょう。台湾島の東海岸は切り立った断崖となっており、そこからすぐに太平洋の深海底へとつながっていて、潜水艦の行動が容易には察知できない形状になっているからです。

 本社説の指摘するとおり、中国の潜水艦能力は一層向上し、今では射程8000キロの弾道ミサイルを南シナ海から直接、米国本土の一部を標的にして発射することができるまでになったと言われます。

 日本にとっては、輸入される石油の大部分が南シナ海を通過して運ばれるので、中国が南シナ海を押さえれば、日本の安全にとっての脅威となります。今年5月に日本の海自が南シナ海にヘリ搭載護衛艦を派遣し、米海軍と合同演習するとの報道は歓迎すべきものです。

 南シナ海における中国の軍事拠点化の拡大を非難したトランプ政権が中国の軍事的膨張に対し、今後、いかなる具体的対抗措置をとるのか注目されるのは当然です。

 中国は、「九段線」と呼ばれる、かつて蒋介石政権が一方的に引いた線を根拠に、南シナ海の大部分を自らの領海、排他的経済水域として軍事拠点化を図ることに余念がありません。そして、ハーグの国際仲裁裁判所の裁定受け入れを拒絶し、海洋法条約等国際ルールを完全に無視する対応をとっています。

 台湾にとっては、中国のこのような軍事行動が台湾の安全を直接脅かすものとなっています。中国は最近、空母「遼寧」を使って、台湾島周辺海域を一周させ台湾を威圧したばかりです。

あわせて読みたい

「中国」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 任命拒否の教授らに苦言

    橋下徹

  2. 2

    田原氏 野党は安易な反対やめよ

    たかまつなな

  3. 3

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  4. 4

    コロナ巡るデマ報道を医師が指摘

    名月論

  5. 5

    コロナ禍も国内工場は異常な強さ

    PRESIDENT Online

  6. 6

    学術会議に深入りしない河野大臣

    早川忠孝

  7. 7

    感染リスク高い5つの場面に注意

    赤池 まさあき

  8. 8

    数字を捏造 都構想反対派の欺瞞

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    トランプ氏 逆転攻撃はほぼ不発

    WEDGE Infinity

  10. 10

    学生転落 巻き添えの女性が死亡

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。