- 2017年04月21日 14:42
「子宮頸がん予防ワクチン?おやめになったほうがいい」のファクトチェック
2/2HPVワクチンが子宮頸がんの発生リスクを増加させるという「最新」の報告はおそらく存在しない
HPVワクチンが子宮頸がんの発症を抑制したという直接のデータはまだありません。直接のデータで示されたのは、ワクチンでカバーされたタイプのHPVの感染を抑制する、あるいは、前がん病変を抑制するというところまでです。HPV感染や前がん病変の減少はそれだけで利益となりますし*5、将来の子宮頸がんの発症を抑制することを強く示唆すると私は考えます。ただ、そう考えない医師がいてもいいとは思います。これは価値観や解釈の問題ですので、ここでは扱いません。
しかし、ガーダシルは子宮頸がんの発生リスクを増加させるという最新の研究が存在するかどうかについては、価値観や解釈ではなく、事実に関する問題です。松本浩彦氏は「最新の研究」の文献情報をまったく提示していません。可能性だけを言うならば、私が知らないだけでそのような研究があるのかもしれませんが、かなりの確度でそうではなく、HPVワクチンが子宮頸がんの発生リスクを増加させるという最新の報告は存在しないと私は考えます。
HPVワクチンが子宮頸がんの発症を抑制したという直接のデータが存在しないのは、HPVワクチンが使用されてからまだ十分に時間が経っていないからです*6。ならば「逆に増加させた」というデータもまだないはずです。それに、仮にそのような「最新の」データが存在するとしたら、専門家やHPVワクチンに反対する人たちの間でまったく話題にならないのは不自然です。
「ガーダシル」および「45%増加」というキーワードから、松本浩彦氏がどの研究を想定していたのか推測はできます。「最新」ではなく少なくとも2006年以前に、「子宮頸がんの発生リスク」ではなく前がん病変において、リスクが44.6%増えるという報告ならあります。それも、統計学的に有意な差ではなく、かつ、対象がすでにHPVに感染歴のある女性という一般的なワクチン接種対象者とは異なる集団です。詳細については、『うさうさメモ』の■「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の嘘」の検証(1)HPVワクチンは前がん病変のリスクを44.6%増やすのか? - うさうさメモを参照してください。
インフォームド・コンセントでは正しい情報が提供されるべきです。もちろん、ありとあらゆる情報をすべて提供するのは不可能ですので、ある程度ポイントは絞らなければなりません。しかしながら、相対的に重要性の低い情報のみ提示したり、古くて無関係の情報をさも「最新の研究」だと偽って紹介することは、きわめて不適切であると、私は考えます。
*1:説明が不十分でときにトラブルになることはあります
*2: http://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000bx23-att/2r9852000000byb3.pdf , https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25156680
*3: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25156680
*4:子宮頸部上皮内腫瘍, CIN:Cervical Intraepithelial Neoplasia
*5:HPV-DNA併用検診を受けるならHPVが陰性だと検診間隔を空けることができるし、前がん病変が減れば円錐切除といった侵襲性のある介入も減る
*6:とくに臨床試験の参加者はより手厚いフォローアップを受けるので、子宮頸がんの発症数が少なくなり、差が検出しづらくなる。HPVワクチンによる子宮頸がん発症の抑制の最初の報告は観察研究によるのではないかと個人的には考えている



