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どうすれば「副業」が認められる社会になるか

佐藤留美=構成 文=藤井孝一(提言) 市来朋久=撮影

さまざまな理由で副業しながらキャリアを築いてきた3人が集まり、副業が受け入れられる社会に向けて提言します。

小林さん/医薬品メーカーにて活躍後、省庁にて非常勤職員をしながら、イベントの企画やライティング業務など複数の副業をこなす。
才賀さん/IT系企業でディレクターを務めたあと、フリーペーパーの制作会社に転職。今はWebメディアに関わりながらフリーランスとしても仕事を受ける。
北川さん/契約社員として店舗巡回の仕事をしながら、カメラマンと学生時代から続けているハンドキャリーの仕事もこなす。
※ランサーズの協力を得て3人の方にご参加いただきました。

■働き方が多様化しているのに、企業も制度も現状に追いついていません

――みなさんの現在の本業と副業を教えてください。

【才賀】派遣社員を週3回やりながら、クラウドソーシングでWeb記事のライターをやっています。

【小林】省庁の非常勤職員として週4日働きながら、クラウドソーシングでライター業を。同時に、バイオベンチャーを仲間とともに立ち上げました。でも、こちらはまだ手弁当。だから非常勤職員とライター業で生計を立てています。

【北川】私は契約社員をしながら、クラウドソーシングでカメラマンをやっています。契約社員としては、店舗を巡回しながらお酒や本の売り場づくりをするラウンド業務という仕事をしています。

――副業を始めたきっかけは?

【才賀】身もふたもないですが、前にいた会社の給料だけでは生活ができなかったからです。なのに、会社は副業絶対禁止。試食販売などばれないバイトをしていました。そんなとき、クラウドの存在を知って、これはいいなと。

【北川】私はちょっと特殊で学生時代から「ハンドキャリー」といって、飛行機に搭乗し、日本から海外に重要書類などを届ける仕事をしていたんです。新卒で会社に入ったときも、その副業を続けられることが条件でした。でも、「同僚には言わないで」という雰囲気。退職して、複数の仕事をする現在の働き方を選びました。

【小林】私が新卒入社した医薬品会社は、副業したいなんて言い出せる雰囲気じゃなかったですね。それどころか土日も「来い」と言われたら行かなきゃいけなかった。でも、私は学生時代から続けていたイベントの企画などがしたかったので土日にやっていました。他の人に交渉して土日勤務を替わってもらったりして、使いにくい若手だと思われたようです。

――現状に満足していますか。

【北川】収入面は頑張れば頑張っただけ上がるのはいいと思いつつ、本業がパートタイムの契約社員なので、会社の社会保険や雇用保険、年金に入れないのは大きいマイナスですね。

【小林】やはり、今いる省庁も前の会社も副業していることが言いづらいのがしんどい。今の職場の人に私が別に会社をやっているなんて大っぴらに言ったら、ありえないと思われますよ。昭和的価値観なので(笑)。

【才賀】副業をしなければいけなかった理由は正社員としての給料が少ないからなのに、なぜ会社がそれを禁止しようとするのか、理由がわかりません。今は、派遣と複数の仕事で収入が以前よりずっといい。その点は満足ですね。

【小林】でも、非常勤は長い目で見ると不安定な立場ですよね。

【北川】ええ。それに日本は、一つの会社に勤めていなければ半人前という価値観がいまだに支配的。たとえば、私は前職を辞めた後、失業保険をもらおうと役所に行ったのですが、そのとき、クラウドでお仕事をしていたため、「働いているならダメ」とあやうく失業保険がもらえなくなるところでした。役所の人は、「クラウドソーシング」の概念も知らないんですよ。

【小林】悪いことをしているわけではないのにね……。国も「一億総活躍」を掲げるなら、子育て中や介護中の女性、複数の仕事をしていろいろなスキルを獲得したい女性に向く副業をむしろ企業に推進してほしい。ただし、「副業OK」となっても企業風土が変わらないと、おそらく形骸化して終わるでしょうね。会社は多様な働き方を認めるべき。会社としても新しい風を取り入れたいときに特殊なスキルを持った社員はありがたいでしょうし、ずっと雇用して社員の生活を保障する時代でもないのですから。

【北川】公務員は副業が禁止されていますが、たとえば地方の役所などは、田植えのシーズンに職員が休みをとって農業に専念してもいい。一般企業でも、フレキシブルな働き方を認める動きが加速してほしいですね。

▼「副業の推進」に関する要望書

副業の推進について下記により要望いたしますので、宜しくご配意賜りますよう、切にお願い申し上げます。

(1)すでに終身雇用が崩壊しているのだから、大っぴらに副業ができる社会をつくっていくべきです。
(2)多様な働き方に対応するために雇用保険などの制度設計の見直しをお願いします。

以上 第17回 座談会参加者 一同
■▼週末起業フォーラム主宰 藤井孝一さんから

提言:勇気ある実践者が増えることが世の中を動かす

少しずつですが、世の中は副業を認める方向に動いています。たとえば2016年、安倍首相を議長とする経済財政諮問会議の民間議員が、会社員の副業を促進するよう政府と経済界に要請する方針を固めました。同年の4月には、ロート製薬が社員の副業を推奨する制度を導入しています。

でも、副業が当たり前になるには、まだ時間がかかると思います。実際、私が副業していた15年くらい前から、何度も「ついに副業社会到来」といわれてきました。しかし、中小企業庁の調査では、社内規定で副業を容認する企業は、今も3.8%。企業にメリットが少なく、反対にノウハウや顧客情報の流出など、デメリットが多いからです。

もちろん、声は上げ続けるべきです。ただ、時間はどんどん経っていきます。

であれば、座談会に参加した3人の方のように内緒で始めてはいかがでしょう。そもそも、副業なんて、会社の許しを得て始めるものでもないでしょう。

「ばれたらどうするんですか」と言われそうですが、副業自体は法に触れるわけではありません。ばれても即解雇というより、厳重注意くらいでしょう。

もちろん、それもいやでしょうから、ばれないようにやりましょう。人前に立つ仕事は、思わぬところで見つかります。また、給与をもらうと、税金の手続きでばれることがあります。マイナンバーの普及で、そのリスクはさらに高まります。

一方、ネットが普及した今、実名や顔を表に出さず、家でできる仕事はたくさんあります。個人事業主の形態なら、納税時にばれることもありません。

もちろん、リスクはあります。ただ、世の中を変えるのにリスクは伴うものです。勇気ある実践者が増えることこそが、世の中を動かす原動力になるのではないでしょうか。

(佐藤留美=構成 文=藤井孝一(提言) 市来朋久=撮影)

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