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いつも付け焼き刃でやってきたのが日本の社会保障システム。団塊ジュニアの現役時が人口対策の最後のチャンスだった - 「賢人論。」第36回西田亮介氏(中編)

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公共政策を専門とする社会学者、西田亮介氏へのインタビューも中編。前編「シルバーデモクラシーが存在するのは、今の日本社会の構造上、否定できない」では世代間に根強く残るギャップについて、また生産性を上げるための意識の持ちようについて伺ったが、今回は介護業界にフィーチャーして話を伺った。キーワードとなるのは“マインドセット”だ。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/公家勇人

介護業界に入るお金を増やすためのカギは「混合介護」

みんなの介護 前編「シルバーデモクラシーは存在するという現実をまずは直視すべき。年長世代と若年世代の利益のギャップが厳然としてある」では、日本的、昭和的な考え方が根底にあるうちは、生産性を上げることは難しいのではないか、というお話をいただきました

西田 書類を書いたりという手間がかかる仕事は、手書きではなく、PCやタブレットを使うなどしてデジタル化すれば良い、ということですね。現に、病院では電子カルテが普及しているじゃないですか。昔はお医者さんがドイツ語で手書きしていたのが、ですよ。人の手書きがそんなによければ、そこは付加価値部分ということで、優先順位を落としてはどうでしょうか。

ちなみに医療業界は比較的、資金が潤沢で、業務を合理化することにお医者さんが積極的なんだとは思います。医療業界も人手不足ですから、作業を軽減できるものなら積極的に取り入れたい、と。

みんなの介護 ただ、介護や保育には、その潤沢な資金がありません。

西田 どうでしょう、ひと昔前ならさておくとして、現代ではそう大掛かりな投資が必要と言うことでもありませんから、むしろ「手書きが良い」「温かみがある」といったマインドセットや「前からこうやってきたから」といった経路依存性のほうが阻害要因になっていると言って良いんじゃないですかね。

みんなの介護 マインドセットができていないから、デジタル化して合理化しようという文化が浸透しないのが介護業界、ということでしょうか。確かに、そのために生産性が上がらない、だから給料が上がりづらい、でも仕事は大変…で結局、離職率が高まって常に人手不足が叫ばれている、というのが現状です。

西田 先日もNHKで報道されていましたね。「特養には入所待機者が何十万人もいるのに、実は空きベッドがたくさんある」と。これも、人手不足がゆえに起こっている弊害ですよね。業界全体に入ってくるお金を増やして、給料など職員の待遇改善を図るのであれば、財政的制約を念頭に置くとやはり広義の混合介護をより広く認めていく必要があるんじゃないかな、と思います。

国の財布に限界があるのであれば、高付加価値なサービスを提供することによって比較的財布に余裕がある人から多くの支払いを受ける、と。東京の豊島区が、特区として実用に向けて動き出しましたよね。この動きはもっとスピードアップしても良いですよね。

みんなの介護 規制緩和もスピード感が大事だ、と。

西田 国が介護職員の人件費につながる介護報酬を管理する状況で、給料の大幅な伸びが起こるとは考えにくい。これは介護だけでなく子育ての業界も概ね一緒だと思うんですけど、どちらも実効性ある監査の仕組みとセットにしながら、安全管理の仕組みと対にして規制変更を進めていくべきでしょう。



介護ロボットの導入は、業務の効率化という意味では非常にいい。あとは、それを導入するためのマインドセットが大事

みんなの介護 介護の仕事の中で、作業を効率化するために介護ロボットやAI(人工知能)を中心としたICT(情報通信技術)の活用も、推進の動きが活発になってきています。

西田 AIは…どうなんでしょうね?話し相手ぐらいにはなると思いますけど、生産性が劇的に向上するかと言われればそうではない気がしますけど。とはいえ、例えば介護施設がペッパーを導入して、ペッパーとの会話を楽しむおじいちゃんおばあちゃんのQOLがちょっと上がって、それによって元気になって、結果として介護職員の仕事が楽になる…なんていう、風が吹けば桶屋が儲かる的な、遠回りな効果はあるかもしれませんが。

ただ、それにしてもメインストリームではないし、あまりピンときません。

みんなの介護 では、介護ロボットはどうでしょう?

西田 介護者の動きをサポートする器具、ですよね。あれはいいと思います。最近だと、サポーターサイズのものを装着して動きの負荷を軽減する装置もできているんですよね。例えば年齢が上がっても介護の世界で働くことが容易になるとか、あるいは力の弱い女性の方がギックリ腰になりにくいように働くとかいった意味で。ああいうのはとってもいいと思いますね。

みんなの介護 ただそれさえも、「介護にロボットを持ち込むなんてけしからん」といった声が、介護業界ではよく聞かれます。

西田 だから、そういうのをやめましょう、と(笑)。つまりは、ロボットを導入しましょうとか、業務の効率化を図りましょうといったことと同時に、マインドセットを変更するためのプロモーションや周知などがこれまで以上に大事なんでしょうね。

みんなの介護 ちなみにですが、やはり先生もデジタル化を推めて業務の効率化を図っているんですか?

西田 ですね。簡単なところで言うと、僕の研究室は電話の外線契約を解約してしまいました。マンション投資の電話しかかかってこないし(笑)、そもそも僕に用事がある人ならメールをよこすだろうと思って。

みんなの介護 そうしたことを自然とできる人は良いですが、そうできない人は、やはり意識的に効率化を図っていかなきゃ、ですね。

西田 そうだと思いますね。もっと言えば、日本人的な思考という邪魔を排除するためには、上からそういうことを通達したほうが話が早いと思います。厚生労働省が、「書類の手書きは極力排して電子化するように」なんていう通達を出したりとかね。

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