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震災ダメージにも揺るがない、日本の輸出食品

中国通な社長のビジネスコラム 第49回 −秋葉良和

  ここ最近私自身中国関連の業務が再び活発化してきています。

  先月10月第3週目に上海出張、翌週は弊社中国代表に来日してもらい取引先も交えたミーティング、そして11月第2週にあたる今週から再び上海出張です。いずれも輸出入サポートに関わる業務で2〜3週間に1度のペースとなります。実は今年3月の震災直後の影響を考慮すると、しばらくは輸出入にかかわるアドバイス業務はニーズが少なくなると覚悟していたのですが、いささか状況が変わってきたようです。

  震災直後は放射能の影響もあり、日本の食品ならびにその他工業製品などに対する風評被害が発生したことで、海外への輸出はしばらく停滞するだろうと考えていました。世界的に見ると現在でもその流れに変わりはないのですが、中国市場向けのビジネスにおいては、このところ少し事情が違ってきています。

  現在中国では食の安全面でいろいろと問題が発生しています。加えて中国国内だけではなく台湾からの輸入食品でも問題がとりざたされ、中国国民も危機意識を高めています。中国国内の問題をいくつか例にあげてみましょう。

  山東省のスーパーで販売されている『有機』の野菜や穀物は実は全く有機ではなく業者が偽って販売していることが判明、このことに端を発し他の省や都市でも同様の問題が発覚しました。認定マークさえあれば販売価格が2〜5倍になるため、販売業者の認定申請の需要が急増しました。それに対応するかのように一定の金額さえ支払えば特段の検査なしに『有機』認定を付与するような、いいかげんな認定機関の増加も原因となり、問題拡大に拍車をかけたようです。中央政府も重要な問題としてとらえたのか、温家宝首相が徹底的に取り締まるとの発表を行ないました。

  また記憶に新しいメラミン混入事件。3年ほど前メラミン汚染された粉ミルクを飲んだ乳児が数名亡くなった事件です。その後中国政府が厳しく対処し根絶したはずのメラミン乳製品でしたが、つい最近も重慶で26トンのメラミン入り粉ミルクが発見され押収されました。

  別の例としては豚肉。病死した2000〜3000万頭の豚肉が各地で食用として流通していることが判明しました。また湖南省では薬物汚染された豚肉を食べた286名が集団食中毒で病院に運ばれました。他にもバクテリアにまみれたため暗闇で光を放つようになった豚肉などが取り上げられています。豚肉以外でも発がん性物質が混入されたモヤシや重金属汚染の米などが問題となっています。

  発覚してもわずかな罰金で済むなど法的な処罰は甘く、食品に関する罰則規制の強化が求められるところです。

  次に台湾からの輸入食品問題。数多くの飲料やジャム、ゼリーの製造メーカーで、パーム油や乳化剤などの代わりに、コストが5分の1程度で済む、禁止添加物の可塑剤DEHP(フタル酸ジエチルヘキシル)を長年にわたって使用していたことが判明、今年の5月頃から大変な問題となっています。

  この可塑剤は、もともとプラスチックなどに添加して弾力性を増す人工合成物とのことですが、一種の環境ホルモンでメラミンの20倍程程度の毒性があり、男性の生殖能力低下などを引き起こすことが報道されました。その後の調べにより食品だけではなく薬品や化粧品にも原料として混入していたことも明らかとなり、影響を受けた企業は200社、500アイテム以上にのぼりました。現在台湾から中国市場に輸出されている商品は少なくなく、中国国内でも大きな話題となっています。

  今年の春以降、これらの問題が連日のように報道されている中国では、自国の食品や商品の安全性に自信を持てなくなってきているようです。加えて最も輸入数量の多い台湾製品も大変な問題を抱えていたことが判明したことにより、中国人の日本食品に対するイメージは、震災によって我々が予想しているようなマイナスイメージとは違ってきているということです。放射能汚染のイメージよりも品質管理されている日本のイメージの方が上回る場面が増えているということです。

  その規模も、チャンスも大きい中国市場において、日本食品に対するイメージが予想以上のスピードで回復している現在、どのように対応していくかで企業の将来が決まってくるような状況かも知れません。大げさな表現になるかもしれませんが、世界各国で戦争や紛争が起こった後、或いは大きな震災の後では、過去のスタンダードが一旦崩れます。その際、いかに時代のニーズを読み、タイミングよく対応できるかによって、ビジネスや文化習慣は支持され、長期的にスタンダードとなり得るのです。

  今こそ日本企業が大きく飛躍できるターニングポイント。確かに震災後は日本製品の中国輸入規制も厳しくなっていますが、消極的になる必要はなく、粛々と条件をクリアした上で積極的に対応する姿勢は大切でしょう。私も日々中国の変化をチェックしながら、思いを持った日本企業が成功できるよう、微力ながらサポートしていきたいと思います。(執筆者:秋葉良和・A−commerce 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

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