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異文化楽しみ、信頼関係構築する力を会得する

「文化に良しあしはない。単に違いがあるだけだ」

僕が高校時代にオーストラリアへ留学したときに、ロータリークラブで奨学生を担当する地元の名士からかけられた言葉だ。それ以来、米国の大学院に留学したときも、スイスのダボス会議に参加したときも、異文化に遭遇するときはこの言葉を基本として肝に銘じている。

自国文化を優れていると見なすと、他の文化が劣っているように思われ「こっちの方が良いですよ」と教えたくなる。だが、相手にとってそれは押しつけにしか感じられないこともあるのだ。

一方、他文化が良いと認識すると、自国文化に不必要な劣等感を持つ。まさに「文化に良しあしはない。単に違いがあるだけ」なのだ。

最近、グロービスで教える異文化コミュニケーションの教科書を読み、3つの重要なステップについて学んだ。(1)違う文化に触れたときは良しあしの判断を留保する(2)なぜその違いがあるのか理解するよう努め、共通する部分を見いだす(3)違いを尊重したうえで、双方の共通部分を基にラポール(信頼関係)を築く――だ。

僕は幸いにも留学した高校生のときから知らぬ間にこれらを訓練されてきた気がする。異文化コミュニケーション能力は、外国語よりも習得が難しいと思っている。外国語は反復練習で何とかなる。ただ異文化に接する姿勢は反復学習だけでは厳しく、なるべく早い時期に異文化に触れて、会得することが望ましい。

だからこそ、堀家の子どもには中学高校時代に最低1年間の留学を「必修科目」として課している。

先日、留学先のカナダから一時帰国した三男と話をする機会があった。聞くと「友達とけんかをした」という。寮でシャワーに入っていたときにいたずらで電気を消された。それまでおとなしく黙っていたが、相手にものすごく怒ったところ、それ以降いたずらはなくなったという。

三男にはこう伝えた。「海外では主張しないと自分の自由度がどんどん狭められていくよ。嫌なことは嫌ということが重要だよ」。そしてこう続けた。

「高校時代に留学すると、友人同士でふざけたり、スポーツで一緒に汗をかいたりしながらコミュニケーションができる。もちろん英語を学ぶことは大切だけど、それ以上に異文化コミュニケーションの方法論を学ぶことが重要なんだよ。異文化コミュニケーション能力は何歳で学ぶかによって違いが出てくる。社会人になってからだと、どうしても形式的なビジネス上での付き合いになる。心と心で深く付き合うということは難しくなるんだよ」

僕も高校時代に留学したときに水球やバスケットボール、ラグビーのチームに入り、学校代表として戦った。スポーツのときに会話する英語は片言だが、その場で培われたコミュニケーション能力がその後の人生にとって大きな財産となった実感がある。

僕が留学以外で異文化能力がぐんと高まったと感じたのは、若手起業家の国際的な交流組織であるYEOのアジア代表を務めたときだ。当時、僕は30代前半だった。アジア諸国に組織をつくるために各国を訪れてセミナーを開いたり、アジアのボードを組成して運営したりした。

一口にアジアといってもそれぞれの国の言語・文化・宗教・経済の発展度合いは違う。アジア代表として世界組織のボードに入ると、世界から集まってくる人との議論になる。国連の代表として発言しているような感覚だった。

「英語力以上に重要なのが異文化コミュニケーション能力だよ。異文化に触れて、違いを楽しみ、そして数多くの人と信頼関係を築く方法論を身につけてきてね」。15歳の息子にこう伝えて、カナダへ送り返した。

※この記事は日経産業新聞で2017年4月7日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

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