記事

アメリカの人事制度の特徴とは? 5分でわかる日本との違い

1/2
文:INITIATIVE編集部

トランプ大統領による経済運営に注目が集まるアメリカ。移民政策の転換やTTP離脱などが、今後経済にどのような影響をもたらすのかはいまだ未知数と言われています。しかし、これまで常に新しいテクノロジーやイノベーションを創造し続け、また現在も世界最大の市場として成長を続けるアメリカに進出する日系企業の数は減少する気配がありません。そして、企業が海外進出を検討する上で押さえておくべきポイント、それはその国の人事制度です。今回はアメリカの人事制度の特徴や日本との違いについて解説します。

米国労働市場のトレンド

人事制度を概観する前に、最近の米国労働市場の状況を見てみましょう。
リーマンショック後の2010年に10%程度まで上昇したアメリカの失業率は、足元では5%を切るまでに改善しています。この数字はアメリカにおいては「完全雇用」に近い状態で、州によっては2%台で推移しているところもあります。さらに、非農業部門の雇用者数は2016年に約220万人増加したと言われています。

また、パソナグループの米国法人であるパソナN Aが、米国内の日系企業を対象に実施した調査(「2017年度在米日系企業における現地社員の給与・福利厚生に関する調査」)によると、過去1年で現地従業員を増やした企業の割合は36.9%、逆に減らした企業は14.8%でした。また今後1年間の見通しとして、「増える」と回答した企業は47.7%、「減る」と解答した企業は3.0%でした。
こうした数字からも、足元の米国経済の好調さと共に、企業が積極的に採用を行っていることが伺えます。

ただし、労働市場の環境が良いということは、すなわち企業にとっては人材採用のハードルが高いということに他なりません。そうした意味でも、企業は現地の人事システムを理解し、優秀な人材にとって魅力的で、なおかつ人材の能力を最大限引き出すことができる人事制度の構築が必要になります。

米国人事における採用と配置

日本とアメリカでは、人材採用と配置の基本的考え方が異なります。日本企業では毎年4月に新卒社員を採用し、入社してから配属を考えます。その後、適正を見ながら営業や管理部門などのジョブ・ローテーションを通じて人材を育成していくことが一般的です。

一方、新卒一括採用の概念すらないアメリカでは、採用した人材を中心に社内で配置を考える日本とは全く逆に、ポジションに応じて人材を採用します。そのため部門をまたいだ人事異動は少なく、経理で入社した場合は、ずっと経理の仕事をします。

ジョブ・ディスクリプション

職務を中心に採用を進めるアメリカでは、「ジョブ・ディスクリプション(JD、職務内容記述書)」の作成が重要です。人材を採用・配置するポジションについて、担当する職務内容や必要なスキルなどについて記述した書類です。

採用時にJDを提示して求める成果を明確にしないと、その後の人事考課においてその人の業務成果を評価すること自体が難しくなってしまいます。また、後述しますがその後の訴訟リスクなどにも関係してくるため、JDは必要項目を網羅し、詳細かつ具体的に作成する必要があります。

<JDの記載内容(例)>
職務名、所属部署、報告先上司、FLSAステータス(※後述)、職務内容、職務に必要な知識・技術・学歴・資格、業務目標、但し書き、従業員の署名 など

人材派遣の仕組み

人材の採用・活用手法の一つとして人材派遣の仕組みがありますが、その制度は日米で大きく異なります。

1つ目の違いは、派遣期間の制限の有無です。日本では労働者単位や事業所単位で派遣期間に制限がありますが、アメリカでは基本的に期間の制限はありません。企業にとっても働き手にとっても、日本に比べて自由度が高い仕組みと言えるでしょう。

2つ目は、面接の可否です。日本では保有スキルや経験をもとにその業務を遂行できるかを派遣会社が判断して派遣しますが、アメリカではひとつのポジションに履歴書を複数提示し、面接をして選考を行うのが一般的です。直接雇用の社員採用に近い形態と言えます。

3つ目は、二重派遣の可否です。日本では禁止されていますが、アメリカでは派遣会社から派遣された労働者を、別の会社に再度派遣することが可能です。

このように、アメリカにける人材派遣は、日本以上にフレキシブルな人材活用手法です。
アメリカに進出して間もない企業など、直接雇用の社員を数多く雇うことが経営の柔軟性を妨げてしまうケースでは、人材派遣の活用はひとつの有効な手段です。

EEO: Equal Employment Opportunities(雇用機会均等法)

日本にも男女雇用機会均等法をはじめ雇用上の差別を禁止する法律がありますが、アメリカでは「採用・昇給・昇進・異動・レイオフ・懲戒・解雇」など、雇用上のあらゆる決定において差別を禁止するEEOという規定があります。

全ての人事上の決定は、「能力・経験・勤務態度・勤務成績」など正当な職務上の理由によって実施する必要があります。EEOC(Equal Employment Opportunities Commission)という連邦政府直轄の行政機関が取り締まりを行っていますが、州によって法律や基準が異なるため、各州にも独自の機関が設置されています。

米国現地法人で採用面接をする際は、性別はもとより年齢や国籍、人種、家族構成に関する質問をすることは、例えば不採用とした人に「人種を理由に不採用にされた」と主張されるなど訴訟等に発展するリスクが高いため、細心の注意を払う必要があります。

あわせて読みたい

「人事」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    小池知事の詐称疑惑 失職判例も

    郷原信郎

  2. 2

    倉持由香 給付金100万円受け取り

    BLOGOS しらべる部

  3. 3

    AppleMusic停止 異例の抗議行動

    跡部 徹

  4. 4

    都の方針に歌舞伎町経営者が怒り

    BLOGOS編集部

  5. 5

    きゃりー父「投稿に責任を持て」

    文春オンライン

  6. 6

    神の業? コロナ直面のイスラム教

    BLOGOS編集部

  7. 7

    コロナで着目すべき「血液凝固」

    大隅典子

  8. 8

    ユニクロ参入でマスクバブル終焉

    NEWSポストセブン

  9. 9

    アパレル倒産 コロナ前から兆候

    南充浩

  10. 10

    暗号資産に麻生節「名称が悪い」

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。