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欧州に仕掛けられたテロの最終戦争 伝播する「イスラム国」の”呪い”

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欧州全体に不気味な広がりを見せる” テロの最終戦争”

キングス・カレッジ・ロンドンで講演したグレイム・ウッド
(右、木村正人撮影)

テロの連鎖反応はどうして起きるのか。欧州でISの呼びかけに応じて単独テロを実行する人は、敬虔なイスラム教徒ではないことが多い。西洋文化の中で自分の居場所を見つけられず、心の空白にISの過激思想が入り込んでくる。欧米諸国ではテロ対策を進める上で、イスラム教とテロを切り離して考えるのが主流になっている。がしかし、気鋭のカナダ人ジャーナリスト、グレイム・ウッドは「ISの台頭はイスラム教の宗教改革なのだ」と明確に異を唱える。

アメリカの前大統領オバマは「ISはイスラムではない」と切り捨てた。テロ対策の根幹をなすナラティブ(物語)は、「対テロ戦争」を宣言してイスラム社会との溝を広げてしまった元大統領ブッシュ(子)の過ちに対する反省からくる。「イスラム教徒の楽土(カリフ制国家)」建設に賛同する日本のイスラム法学者、中田考らISの理解者や支持者からインタビューしたウッドは「ISは極めてイスラム的だ」と断言する。

16世紀、カトリックの聖堂建設などを目的とした免罪符の乱用に対してドイツの神学者マルティン・ルターは激しく抗議した。「95カ条の課題」を発表してプロテスタント宗教改革の先駆けとなる。ルターがドイツ語に訳した新約聖書は当時としては多い初版3000部、3カ月以内に第2版3000部が増刷されるほど読まれた。宗教改革をめぐってはプロテスタントとカトリックが激しく対立し、宗教戦争の流血を引き起こしている。

イスラム教を理解するのは難しい。ISはそのスキに乗じ「現代の印刷術」とも言えるインスタグラム、フェイスブック、ユーチューブ、ツイッターなどのソーシャルメディアを通じて「サラフィズムの表現とは信仰のためにジハード(聖戦)の名の下に戦争に参加することだ」というジハード思想をまき散らしている。イスラム教の中で最も保守的とされる「サラフィズム」を信奉するイスラム教徒(サラフィスト)はあまり政治的な主張は行ってこなかったことと対比して、ウッドはIS支持者を「サラフィスト」ではなく、「サラフィー・ジハーディスト」と呼ぶべきだという。

サラフィストたちはIS支持者を「宗教的無知」「トラブルメーカー」と蔑むが、ウッドは「サラフィストたちはISの宗教的知識を軽視しており、宗教的権威としてISの主張を論破するのに失敗している」と手厳しい。ISとアルカイダの大きな違いは、イスラム教スンニ派のISはイスラム教の他宗派すべてを「背教者」としてジェノサイド(集団殺害)の対象にしていること、アメリカやユダヤ人に対して戦うだけでなく「カリフ制国家」を建設したこと、イスラム教徒と不信心者(それ以外)による文明戦争が現在、進行中でイスラム教徒が最終的に勝つという終末論を信じていることだという。

ISの報道官は14年9月、次のように西洋に対する一斉攻撃を呼びかけた。「もしあなたが即席爆発装置や銃弾を手に入れることができないのなら、背教者や不信心者の頭を石で打ち、ナイフで彼らを殺しなさい。あなたの車で彼らを轢き殺し、高いところから彼らを突き落として殺しなさい。首を絞め、毒殺しなさい。もしそれができないなら、彼らの家を、車を、ビジネスを燃やしなさい。もしそれもできないなら彼らの顔にツバを吐きかけなさい」と。

ウッドが言うようにISが正統なイスラム教の信奉者とは筆者には到底、思えない。ISは無慈悲なジェノサイドを呼びかける極めて政治的な邪教に過ぎないのだ。アメリカが主導する有志連合の掃討作戦によってイラクやシリアで追い込まれているISだが、彼らのばらまいたテロの最終戦争は欧州全体に不気味な広がりを見せている。

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