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トランプ・ホワイトハウスにたちこめるロシアゲートの濃霧 - 斎藤 彰(ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

 ロシアの2016年米大統領選介入に果たしてどこまで加担したか―トランプ陣営のロシア・コネクションを究明する米連邦捜査局(FBI)や連邦議会の調査が本格化しようとしている。ホワイトハウスを覆う“ロシアゲート”の霧は深まるばかりだ。

 去る3月31日、貿易赤字削減に向けた大統領令発表に臨んだトランプ大統領の表情は、いつにもなくさえなかった。1月20日就任早々、環太平洋経済連携協定(TTP)離脱やイスラム諸国からの入国禁止措置などを意気揚々と打ち上げた時とは異なり、明らかにトーンダウンしていた――とホワイトハウス詰めベテラン記者たちの間でも評判だったという。

 しかも、これまでは、大統領令発令のたびごとに執務室に報道陣を招き入れ、自らデスクに座って命令書に署名するのがならわしだったが、この日ばかりは違っていた。内容をそそくさと読み上げた後、署名もしないまま、ペンス副大統領らを残し、報道陣の質問にも無言のまま、一人だけ退室してしまった。

 「マイケル・フリン氏、議会証言と引き換えに免責要求」――たまたま同じ日の31日、米マスコミは一斉に、トランプ大統領の側近中の側近で辞任したばかりのマイケル・フリン前大統領国家安全保障担当補佐官が、ロシアによる大統領選介入とトランプ陣営の関係を究明する上院公聴会での証言にあたり、免責の保証を求めてきたことを大きく報じていたのだ。

 フリン氏はかねてから、ロシア経済界との密接な関係もとりざたされ、米大統領選挙期間中も、駐米ロシア大使と協議や会食を重ねたほか、ロシアの対米工作にも精通していたとみられるだけに、本人が司法取引で供述するとなると、大統領自身にとっても安閑とはしていられなくなる。

 米議会調査は、上院、下院の情報委員会でそれぞれ別途進められており、目下、FBI、中央情報局(CIA)、国防情報局(DIA)など政府、軍関係のあらゆる秘密情報にもアクセスが許された大きな権限を持つ上級調査スタッフ4人ずつが関連資料や関係人物の洗い出しを開始した。

 このうち、下院調査委では、有力メンバーの一人、ウォーキン・カストロ議員(民主、テキサス)が4月4日、CNNとのインタビューで「これまで調査委が収集してきた証拠から判断するかぎり、トランプ陣営の何人かTrump associatesは告発され、収監されることになるだろう」と語り、疑惑の核心に迫りつつあることを示唆している。

フリン氏の裏切りはあるのか?

 一方、上院情報委員会は、とくに疑惑のカギを握るとみられるフリン氏の今後の議会証言を重視しているが、現在までのところ、「免責要求」にただちに応じることを約束していない。事情聴取を通じて本人をぎりぎりまで追いつめた上で、証人喚問で免責に見合うだけの証言を引き出せるか、舞台裏で話し合いを続けているとみられる。

 問題は、そのフリン氏が果たして、トランプ氏に反旗を翻してまで真相を語る覚悟ができているかだ。これまで同氏は、トランプ氏の信頼が厚く、選挙期間中もヒラリー・クリントン候補を非難中傷するダーティなメディア作戦に中心的役割を担ってきただけに、証言では自らの身の潔白をアピールすると同時に、トランプ大統領擁護に回るのではないか、との観測がある。

 だが、そうではなく、免責を求めてきたこと自体、自ら罪を逃れるのと引き換えにトランプ陣営の“闇”にまで言及する腹を固めたとする見方もある。この見方の根拠は、実は、フリン氏が今後の議会調査やFBI捜査に備え、あえてアンチ・トランプの急先鋒の論客でも知られるロバート・ケルナー氏を専任弁護士に指名したことだ。

ウォーターゲート事件どころではない大疑獄

 ケルナー氏は、長年、共和党弁護士を務めてきた大物弁護士だが、昨年の大統領選では徹底的にトランプ氏を批判し、一時は民主、共和両党のいずれにもくみしない第3政党のエバン・マクマリン候補を支持した。#NeverTrump の見出しを掲げた自らのツイッターでは、トランプ氏にこれまで拒否してきた税申告内容の公表を執ように迫り「勝ち負けには関係なく彼の選択は道徳的にも許容できない」などと舌鋒鋭くこきおろしてきている。

 米大統領選挙期間中に、ロシア側と何らかの接触があったことが判明しているトランプ陣営の要人としては、フリン氏のほかに、ジェフ・セッションズ現司法長官、トランプ氏の娘イバンカさんの夫でホワイトハウス上級顧問を務めるジャレッド・クシュナー氏らがおり、この二人もロシアの駐米大使と会談した事実を認めている。クシュナー氏はさらに、選挙後の政権移行期間中の昨年12月、プーチン大統領と密接な関係のあるロシアの銀行会長とも接触したことが明らかになっている。

 “ロシアゲート”疑惑については、これまでのFBI、CIAなどの捜査で、ロシア情報機関が米大統領選挙期間中に、プーチン大統領指示の下、“犬猿の仲”とうわさされるヒラリー・クリントン民主党候補追い落としを目的とした対米情報工作を仕掛けたことが確認されている。そしてもし、今後の捜査そして議会調査の進展具合で、トランプ氏側近がこの工作に加担していた疑いが濃厚になれば、「国家反逆罪」という、ウォーターゲート事件どころではない大疑獄になりかねず、米メディアの関心もじわじわと高まる一方だ。

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