- 2017年04月09日 11:00
「荒れるクラス荒れないクラス」鍵は保護者だった
2/2「親の言動で、子どもは他者を責めるようになる」
(3)のような状態は周囲に次第に伝染し、結果的に、「荒れるクラス」を作る要因となるのです。ここで大いに気になるのは、「私はいいけど、周りのみんなはダメ」と他者を攻めるメンタリティがどのように形成されるのかということです。
私は、それについて、これまでの教員経験や教員対象の勉強などによってある仮説を持っています。それは「親の言動が、子どもを他責的な傾向にする」というものです。
例えば、食卓での話題で、読者の皆さんの家族間ではどんな発言が飛び交っているでしょうか。他責的な発言がありませんか。
テレビを見ながら親御さん自身が、画面に登場する人々や社会に対して、オブラートに包まない言葉で批判や罵倒をしていないでしょうか。また、親が子どものクラスについて「○○くんは悪い」「○○先生はダメ」といった発言をしていないでしょうか。
そうした「自分以外の他人が悪い」というネガティブな考えを子どもの前で示せば、その子どもも同じような発想になります。親自身は悪気のない雑談のつもりが、子どもの心理を歪ませてしまうことがあるのです。その結果、我が子が学級崩壊の原因になったり、学校に嫌気がさして不登校になったりします。その素地を家庭内で親が自ら作っているようなものなのです。
クラス内のことに関して問題意識があれば直接担任に言うべきで、子どもの目の前で言うのはおすすめできません。同様に、他のご家庭の子について悪く言うことは「百害あって一利なし」ということになります。
我が子が荒れるクラスをつくる原因になっていないかどうかより、まずは親自身が自分の言動を適切に見極めることが重要です。
4.まず「周りがきまりをきちんと守る」と思わせる
「周りの人が決まりを守らないから、自分も守らない」という「他責」タイプの子どもの心理をもう少し深堀してみましょう。
子どものこうした考えは身勝手といえますが、ある意味“筋”は通っています。しかし、前述したようにそうした子が多いと、「ならば自分も守らなくていい」と考える子を増やす可能性があります。
「荒れているから、周りの人がきまりを守らないと認識している」
これを、逆手にとって家庭教育に利用します。
つまり、本人はさておき、「周りがきまりをきちんと守っている」と認識できれば、「クラスが落ち着く」という結果が得られることになります。規範意識については個人に着目しすぎずに、集団として見る必要があるということです。
「通学路の信号を守る」ということを例にして考えてみましょう。
みんなが互いに「信号を守らない人が多い」という認識をしているとします。この場合、規範意識の法則によれば、どんどん守らない人が増えることが予想されます。
普段の生活や道徳の授業で、「信号を守ることは命を守ることなので大切です」と言ったり書いたりしても、全く意味がありません。本音の伴わない「良い子ちゃん発言」は無意味です(無意味だが、別に悪いことではない)。親や先生がどう言えば喜ぶかを読むようになったら、逆効果ですらあります。
素晴らしい言動があっても、その子供が急いでいる時に赤信号で渡ってしまうことは十分考えられます。それなら「習い事があって急いでいる時に、つい渡っちゃうことがある」と言う方が本音です。
つまり、前提として「自分も守れていない」という認識に立っての話し合いが必要です。
「実は、お母さんも守れていない時がある」という本音をきちんと話すことが大切です。
「他律的自律」があるクラスは荒れない
5.赤信号を渡らせないためには?
とはいえ、そのままでは、まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」です。ご自分なら、どうすれば赤信号無視という行動を抑制できるのか、考えてみてください。
ずばり「周りの人が見ている」状況がある、ということではないでしょうか。本当は、規則を破りたい(赤信号を渡ってしまいたい)気持ちがあるけど、互いに牽制し合っている状態。だから、実行できない(ちなみに、この牽制心理が悪い方向に働いているのが、授業中、わかっているのに誰も手を挙げない状態。手を挙げて発言するのが、批判対象の「危険行為」と認識されている)。
例えば30人が信号待ちをしている時にひとりで無視して渡る人物は、よほどの人です。この場合、個人的な問題が大きいので、集団の問題とは切り離した対応が必要です。
問題なのは、3人以上で一緒に渡ってしまうパターン。これは、小学生だと、ギャングエイジのはじまる3年生や、気が大きくなっている6年生に多く見られます。ここを抑えるのは何でしょう。
低学年の子どもなら、親からの注意です。自分より上の立場の人からの叱責の力は強いのです。きまりを破ることに対しては、注意や叱ることも大切です。
では高学年の子どもの場合は、どう対処したらいいでしょうか。それは信頼感を示すことです。子どもに「自分は信頼されている」ということを認識させるのです。そのことが大きな抑止力となります。
また、低学年の子どもへの模範を求めることも効果的です。「1年生に交通ルールを教えてあげてね」と、信頼して任せます。「○○君のお陰で、うちの子が……」という話が来たら大チャンスです。
あるいは、担任の先生からそんな連絡が来るかもしれません。人づての良い噂というのは、本人にとって最高の報酬になります。「自分は信じられている」という感覚は、すべての行動改善に有効です。
6.「他律的自律」があるクラスは荒れない
赤信号を渡らない心理を、荒れるクラス荒れないクラスの問題に戻して考えると、クラスの仲間を信頼・尊敬できることが荒れる・荒れないをわけるカギになります。
結論的に言えば、生徒各自が自分に自信を持ち、周りの人へ信頼や感謝の気持ちを持つことができれば、クラスが荒れることはまずないといえます。クラスの仲間を尊重できれば、自然と自分もその「良い」仲間に属したくなるものです。進んで、他律を受ける状態です。
国語と道徳教育、家庭教育の大家である野口芳宏先生はこれを「他律的自律」と言っています。
そのためのベースとなるものは、生徒個々人が持つ自尊感情です。自尊感情というのは、生きるためのエネルギーそのものです。子どもはそれを誰から得ているかと言えば、親です。自分の存在を肯定してくれる。そうした親から与えられた愛情が自尊感情となるのです。
具体的に、親として何ができるのか。簡単なことで言えば、子どもと一緒に歩いている時に近所の方に笑顔で挨拶をすることです。買い物でレジを済ませた時に店員さんに一言声をかけることです。外で食事をした時に「ごちそう様でした」と笑顔で言うことです。
そんな親の「普段の当たり前の行動」が他を信頼し尊重する子どもに育てます。「逆も然り」ですのでふだんから他をぞんざいに扱えば……結果はおわかりかと思います。
【まとめ】
要は、自分だけでは行動抑制できないので、他者の目が大切ということです。他を尊重するのが当たり前になることです。そこに本人の道徳的規範意識は、あまり関係ありません。「周りの目を育てる」という意識、つまり、地域や他の方との連携意識が、クラスの荒れを防ぎ、我が子を救う一助となります。
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