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ポリオワクチン問題 〜個人輸入のIPVに世田谷区って公費助成できないのだろうか?その5できれば最終回 〜

日本国主権者、東京都民にして世田谷区民
真々田弘
2011年11月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

まさに今、進んでいる生ワクチンの定期接種。私の耳に入ってくるのは、各地の予防接種会場で接種にあたった医師たちからの報告だ。予定数250人に対して来場130名・・・。216名予約で83名来場・・・実感として6割減・・・。こうなることは、ポリオワクチン問題の推移を見ていれば誰にだって予測はできたはずだし、行政なら昨年秋と今春のデータを持っているから十分に予測可能な事態。だからこそ時間のかかる地道な署名運動という道を選ぶことなく、私は直訴という方法を選択してみたわけだ。

最初の提案から3か月。世田谷区長との「個人的面談」も含め、自治体の幹部職員、議員と面談を重ねてきた。公式、非公式の面談となるので、詳細をここで述べきることはできない。しかし、ひとことでまとめてしまえば、行政には前例無き施策への躊躇があり、議会としては「掟と化した議会運営ルール」が壁となった。日本のワクチン行政は「世界の常識」に反するもの。その「世界の常識に反するもの」への抵抗を「日本の常識で生きている方々」に理解していただく試みであったのだから、行政の「前例主義」は想定内のこと。国が未承認のワクチンに公費をつける、なんぞ普通の行政マンの感性では最初からできないと思っていた。

だが、議会までもが前例主義、議会運営ルールという「掟」にこれほどまで縛られているとは思わなかった。議会・議員サイドが、行政にはこれができて、これはできない、と勝手に思い込んでいるだけでなく、議会で何を議題にするのかという根本的な問題においても、かつては議会を民主的に運営するために作られたルールが、今は「固定された」掟となって少数意見を排除してゆく。 「あなたのおっしゃることの意味はわかる。だが、行政の(or 議会の)掟に従えば、すぐにそれをとりあげることはできない」。数少ない議員だけが、個人として応援してくれることになった。 そして、ご面談できた唯一の首長、私のもともとのターゲットは何も動いてくれていない。

そんな焦燥の中で迎えた8月下旬。 県庁の幹部職員に事態を理解してもらい、前例なき政策提案のための起案書を書いて欲しいという依頼が来た。私の提案に強い興味を示した神奈川県知事の要望を、知事の知人がつないでくれたものだ。以下、8月22日付で発信した県庁幹部説得用の起案書となる。

それから、1か月半。私の提案とは違う形ではあったが、神奈川県は動いた。県庁内での激しい議論を経て(当然のことだが、知事ががんばり抜いた)庁内をまとめ上げ、10月14日、予定通りの記者会見を開いた。 波紋は、間違いなく広がっている。
*******************起案書全文(添付文書除く)*************************
検討課題
不活化ポリオワクチンへの公費助成制度創設について

ポリオ生ワクチンが危険だと保護者は知ってしまった。
安全なIPVが先進国の常識だと保護者は知り、IPV個人輸入は激増している。
同時に、ポリオワクチン未投与の子どもが増えている。
国として未承認であるために現在、保護者の全額自己負担で接種されているこの個人輸入によるポリオ不活化ワクチンについて、ポリオ流行予防の観点から県独自の助成制度が創設できないか早急に検討を求める。

○不活化ポリオワクチンへの公費助成制度がなぜ必要なのか
1)国が勧めるポリオを防ぐワクチンでポリオになることを保護者が知ってしまった。
保護者たちは既に、報道やウェブ情報で「世界のワクチン常識」を知ってしまっている。現在、わが国で使われている弱毒性ポリオ生ワクチン(以下 OPV)では、100万人に2〜4人がポリオになるということを保護者たちが知ってしまった。現実にわが国では1980年以降、ワクチン由来で発症した患者以外、ポリオ患者は発生していない。
さらに、世界の最新の知識を誰でもが手に入れられる時代、保護者たちは世界の先進国では、ワクチンでポリオになるリスクが無い不活化ワクチン(IPV)が使われていることを知ってしまった。現実に、東アジア地域の国でOPVのみを使い続ける国家は日本と北朝鮮のみである。ちなみに、米国CDCではOPVの投与を禁忌、とまでしている。だが、予防接種会場の保健師も、担当の医師も「OPVでいいんですか?」という保護者の当たり前の質問に答えられない。

2)個人輸入での不活化ポリオワクチン接種が急激に増加している
昨年夏以降、テレビ、新聞などのマス・メディアがOPVによるポリオ発症の問題を頻繁に取り上げるようになり、それ以降、日本では未承認のIPVの接種を求める保護者が急激に増加している。個人輸入代行会社一社だけで現在、月に7千本のIPVを供給しており、他社も含めれば月間2万本近くが輸入され接種されていると推定されている。同時に、IPVを接種する医療機関の数も、昨年末には20院所余だったが現在では200院所を越え、県下でも10院所を数える。また、千葉県立佐原病院をはじめ公的医療機関でも接種をおこなっている。
国のポリオワクチン政策に対して、保護者は明確に不信を抱き、NOを突きつけ始めている。公衆衛生行政への保護者の信頼を取り戻すための積極的な方策が必要である。

3)未だに、いつになれば安全な国産IPVが打てるようになるのかわからない
保護者は、当然のように安全なワクチンを求めている。
6月。厚生労働省は、国内メーカーが開発中のDPT+IPVワクチンが「来年度中」には導入されるとコメントした。「来年度」は、2012年4月から2013年3月まである。
その間、最低三度のポリオ定期接種の時期があり、総数としては300万人の子供がワクチンの投与を受ける。WHOのリスク判定によれば、その間に6人から 12人の子供が直接ワクチン投与によりポリオになり、さらに複数の二次感染ポリオ患者の発生が予測される。このリスクを避けるために、「来年度中」の安全なIPVワクチン導入までワクチン接種を待つという保護者が既に医療現場からは報告され始めている。
また、既存のDPTワクチンの接種時期がOPVの定期接種時期より早いため切り換えを行うためには国内では開発を断念したIPV単独ワクチンが経過措置として必要となる。しかしながら、現在のところその手配は一切なされておらず、今月末から厚労省内に検討会を立ち上げるという状況でしかない。「来年度中」に国産の
DPT+IPVワクチンが承認されても、現実にいつ使用できる状態になるのかは未だに明らかでは無く、既にそれを保護者たちはウェブを通じて知っている。

4)保護者は動揺している
IPVを接種できる医療機関が増加したとはいえ、まだ数は少ない。
また、IPVの接種に関わる費用は全額自己負担であり、その金額は凡そ12000円から18000円程度となる(乳児期における推奨の3回接種)。経済的、時間的に余裕がある保護者は、県をまたいでも接種を受けに行っている。東京の医療機関に群馬、静岡、福島からの来院者があり、神奈川県内の接種院所にも東海道線沿線や隣接する東京都からの接種希望者が訪れている。
同時に、経済的、時間的な余裕の無い保護者の中には「待ち」に入っている例が報告されている。しかも、OPVの接種ばかりでなく、DPT接種をも控える傾向が出始めていると現場の医師は報告している。 
公衆衛生の観点からみれば、危険な状態が起こっている。周囲の子どもがOPVを投与されている中でのOPV接種の忌避は、二次感染のリスクから免れるものではなく、かつOPV由来のウィルスによる広範な感染を引き起こすリスクをともなう。また、DPTワクチンの打ち控えも、同様なリスクを拡大する。「時に致命傷になる百日咳の流行が気がかり」という現場医師の声もある。

5)公費助成制度の必要性
感染力が強く、発病したら治療法の無いポリオは今でも重大なリスクを持つ感染症である。その流行のリスクを減らすことが公衆衛生行政の最大の役割だと考える。また、横浜港という国際港湾を抱え、羽田・成田という両国際空港からの乗降客も多く通過する当県においては外国由来のポリオ流行リスクは他県に比して高く、予防接種率の維持は重要な公衆衛生上の課題となる。
もちろん、現在のOPVの接種率を維持することが重要であるが、既にIPVの存在を知っている保護者をOPVに引き戻すことは科学的な合理性を欠き、さらに保護者の公衆衛生行政の後進性への不信を高めることにすらつながる。
県公衆衛生当局の最大の課題は、いかにして坑ポリオワクチン全体での接種率を維持し、引き上げるかである。そのために、県として個人輸入によるIPV接種に対しての助成制度を創設し、IPVを希望する保護者・幼児が経済的な障壁なく予防接種を受けられるような施策を構築することが行政として検討課題となる。これは、予防接種により指定伝染病を防ぐという予防接種法の本旨に従う施策であり、何より、子どもをポリオから守るための当県として着手可能な政策であると考える。
なおこの措置は、国がIPV、あるいはDPT+IPVを導入するまでの間に限定される。
また、この施策の導入と同時に、県立の医療機関においても早急にIPV接種を可能とするよう対策が講じられるべきである。

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