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米軍はなぜ今シリアを攻撃したか:トランプ政権による「ゲームチェンジ」は起こるか

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3月6日夜(米東部時間)、トランプ政権はシリアの軍事施設への攻撃を発表。現地時間7日早朝、地中海の米海軍艦船から59発の巡航ミサイルが発射され、シリアの軍事施設などを攻撃しました。AFPは、標的の一つになったシャトライト空軍基地がほぼ壊滅したと報じています。

今回の攻撃は、4日にシリアで発生した化学兵器による攻撃を受けてのもので、トランプ政権はこの化学兵器使用がアサド政権によるものと断定したうえで、「化学兵器使用が重要な国益にかかわる」と強調。最近のシリアでの化学兵器使用に関して、日本では比較的小さな扱いで流れていましたが、海外なかでも欧米諸国での関心は高く、アサド政権への制裁を主張する米英仏と、これを支持する中ロなかでもロシアの国連安保理における対立は、数多く報道されていました。ロシアは「アサド政権が化学兵器を用いたという証拠はない」と主張していますが、トランプ政権は今回の攻撃を化学兵器使用という人道危機に対する一種の「制裁」と位置付けているといえます(仮に化学兵器をアサド政権が使用していたとしても、今回の攻撃に「国際法上の根拠」はほぼないが、今回のテーマと外れるので以下ではこれ以上触れない)。

とはいえ、今回の攻撃は、アサド政権に対する「制裁」以上の意味を見出すことができます。そこには弾道ミサイル実験を繰り返す北朝鮮への警告や、それと近い関係にある中ロへのけん制という側面も含まれますが、シリアに焦点をしぼってみても、今回の攻撃は大きな影響をもちます。それは、シリア内戦をめぐる、いわば「ゲームチェンジ」のための一手といえます。

シリアをめぐるトランプ政権の立場

まず、シリアをめぐる歴代の米国政府、およびトランプ政権の立場を確認します。

もともと米国はアサド政権が率いるシリアを「テロ支援国家」に指定していました。しかし、2014年に「イスラーム国」(IS)が「建国」を宣言して以来、有志連合を率いる米国は、イラクだけでなくシリアでも空爆やクルド人勢力への支援を行ってきましたが、アサド政権と直接戦火を交えることはありませんでした。当面の敵はISで、アサド政権を攻撃する「大義名分」はなく、さらに下手に攻撃すれば、その後ろ盾であるロシアとの正面衝突を覚悟しなければならなかったからです。

その一方で、オバマ政権は英仏などとともに、アサド政権に退陣を要求。2011年に中東・北アフリカ一帯で広がった「アラブの春」のなか、シリアで民主化を求める抗議運動をアサド政権が力ずくで鎮圧するなかでシリア内戦が発生し、その混乱のなかでISが台頭したことから、「内戦終結のための道筋としてのアサド退陣と民主化」という処方箋が示されていたのです。これに対して、アサド政権とロシアは一貫して欧米諸国と対立し、2015年からのシリア空爆では、ISだけでなく、アサド政権と対立するスンニ派やクルド人勢力をも攻撃対象としてきました

ところが、トランプ政権はオバマ政権からの方針を転換。ロシアとの友好関係を模索する一方、照準を「反テロ」「反IS」に絞り、「アサド退陣」を明確には要求しなくなったのです。

トランプ政権には、「米国第一」に象徴されるように、経済成長や治安回復など、国内問題を最優先にする姿勢が顕著で、それが有権者の支持を集めたといえます。それは裏を返せば、「これまでのように米国が『超大国』として世界のあらゆる問題に首をつっこむことをしない」という意志表示でもありました。

その間に、2016年12月には、NATO加盟国であるトルコがロシアと共同で、シリア内戦を終結に向かわせるために、当事者同士の交渉を推進することに合意。これはシリアを舞台とする大国の攻防というゲームにおいて「ロシア有利」を加速させるものでしたが、「超大国であること」を止めたトランプ政権にとって、大きな問題でないかにみえました。

「親ロシア」であることの国内的リスク

ところが、大統領選挙中は「ロシアとの協力」を言ってはばからなかったトランプ氏ですが、徐々にロシアと距離を置く必要に迫られました。米国大統領選挙におけるロシアの関与疑惑や、ロシアとの友好関係によって個人的に利益を得られる閣僚の存在などにより、共和党議員からも批判の声が上がり始めたことは、その潮目となりました。

トランプ氏は既存政党を批判して人気を博したものの、国内の諸改革を進めるためには、議会の過半数を占める共和党の協力が不可欠です。また、「フェイクニュース」をめぐってFBIなどをやり玉にあげるといった、日本的にいえば「官僚たたき」も、あまりそれが過ぎれば、有権者の人気を得たとしても、公務員の熱意を損ない、ひいては行政の停滞につながりかねません。

つまり、トランプ氏の立場からすると、自らの存在意義を示すためにポピュリスト的スローガンを全部降ろすわけにはいきませんが、「本丸」以外で共和党主流派や官僚と軋轢を抱えるのも得策でないのです。そして、共和党主流派や国務省・国防省には、ロシアに対する反感と敵意が顕著です。

この状況に鑑みると、今回のシリアへの攻撃は、共和党主流派や国務省・国防省に多い「反ロシア」を満足させるものといえます。特に、今回の決定は、先述した年末からのトルコ=ロシア主導の和平交渉だけでなく、2月中旬にシリアにおけるISの残り少ない拠点ラッカへのロシア=アサド政権の攻撃の本格化、3月20日のシリアのクルド人民兵YPG(クルド人民防衛部隊)に対するロシアの支援の開始などが相次ぎ、シリアをめぐる陣取り合戦がこれまで以上にロシアに傾きつつあるタイミングで行われました。

これらに鑑みれば、いきなりシリアの軍事施設を攻撃し、トランプ政権はロシアの「独走」を認めない姿勢を鮮明にすることで、共和党主流派や国務省・国防相の官僚の安心と満足を引き出したともいえるでしょう。

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