- 2017年04月05日 00:36
長嶺駐韓大使帰任と慰安婦像問題
1/2韓国との関係は隣国であるがゆえに難しい。互いに感情的にならざるを得ない側面がある一方、隣国であるがゆえに利害関係に基づき冷静に判断せざるべき点も少なくない。慰安婦像設置をめぐる日韓の問題についても同様である。長嶺駐韓大使の帰任は致し方ないながら、同大使の帰任以降、北朝鮮による挑発行為による朝鮮半島情勢の緊迫化、トランプ政権の強行姿勢、朴大統領逮捕に関連する韓国国内事情の変化と対日関係悪化の可能性等、大使レベルで喫緊に対応すべき問題が次々と発生した。
このような状況に対しては、注意深い外交が不可欠である。我が国として譲ることができない点については明確に主張しつつ、メリハリのある形で、日本の国益に大きな影響を与える問題について協力できる余地を探りつつ、次期政権で主要なポストに就きそうな人物との人脈を模索するという、古典的ではあるが丁寧な外交が必要とされているように思われてならない。
しかしながら現政権の一連の姿勢は、誤ったメッセージを与えかねないのみならず、メリハリのついたものではなかった。釜山総領事館前の慰安婦像問題を含む新たな問題以前の昨年の「不可逆的な」日韓合意の対象となった在韓大使館前の慰安婦像問題への対処は不適切であった。日本政府は、威勢のいい言葉でPRしたこの合意の履行がとん挫して国内的に不興を買うのを恐れたためか、韓国側をおもんばかったかのような腰砕けの態度に終始した。
本件合意については、昨年1月7日並びに3月17日の小生の国会質問で、慰安婦像は「撤去」ではなく「移動」であることを認めた。その上で、相手側が慰安婦像を移動しなくとも我が方が約束した10億円が支払われることを明らかにしたのであった。それから1年、韓国が慰安婦像を移動せずに合意を履行せずとも政府は、抗議どころか「適切に履行されるもの」と希望的観測を述べ続けた。韓国による「振り込め詐欺」に日本側がお墨付きを与えた状態を放置したことが、新たな慰安婦像設置を含む状態を引き起こしたのではなかったか。「不可逆的な合意」は皮肉なことに、旧来からの対日敵視勢力の立場を継続・強化させることを助長させたのではなかったか。
このような中で新たな慰安婦像が設置されて日本側世論が沸騰すると、政府は大使を帰国させた。この帰国は致し方ない。また、現下の朝鮮半島情勢に鑑みれば、昨日の帰任も当然である。しかしながら、例えば先般の北朝鮮によるミサイル発射の直後に、高いレベルでの協議を必要としているとして、朝鮮半島情勢と共に慰安婦問題の合意履行を求める外務大臣書簡を携えさせて緊急に帰任させる等の措置を採ったならば、よりスマートに現状を打開すると共に、両国の間で協力すべきことと、我が国が強く求めていることを韓国側に理解させられたのではなかったか。
現在の政府がバラマキ外交に徹する一方で外交音痴である状態は、今に始まった話ではないが、隣国に対する外交については、国内世論ばかり気にするのではなく、戦略的且つ最新なものでなければならない。
この点については、政治家としてしっかり政府を追及してまいります。長嶺大使の帰任決定前ですが、先月9日には、委員会で本件を取り上げました。ポイントは、以下の通りです。また、一部手直ししてありますが、正確を期してほぼ全文の委員会のやり取りを議事録から抜粋して、長文で恐縮ながら、ポイントの後に付しておきます。
① 10億円を振り込んだのに像が移動すらされていないことについて
② 財団の運営費用が我が国資金から出される可能性があることについて
③ メンツだけではなく、より幅広い視野で対韓外交を進めることについて
○大野元裕君 慰安婦像の問題については、不可逆的な解決を定めたとされる日韓合意から一年以上がたちました。在韓日本大使館の前の像については今どうなっているんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 在韓国日本大使館前の慰安婦像についての御質問ですが、これは一昨年の合意によって、韓国政府として、日本政府が公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、適切に解決されるよう努力すること、これを韓国政府として確認をしているところです。こうした日韓合意の中身は誠実に履行されなければならないと考えています。
その日韓合意の中身としましては、財団の設立等の対応が進んでいるわけでありますが、残念ながら、在韓国日本大使館前の慰安婦像については、現状動いておりません。以前と同じままであります。
○大野元裕君 大臣は大変お優しいので、韓国側の立場をおもんぱかり、合意が適切に実施される、解決されるべきというお言葉を何度も繰り返されておられますけれども、この移動すら具体的に働きかけるつもりというのはやっぱりないんでしょうか。
しかも、なおかつ昨年七月には和解・癒やし財団設立された。この財団なんですが、当初聞いていたのは、運営費は韓国側が負担し、我々の十億円を含めて拠出を行っていく、こういうふうに聞いているんです。ところが、先月末なんですが、財団の運営費は我が方からの拠出金により賄われることが明らかにされました。韓国政府は、これまで日本政府が拠出した十億円の全額を元慰安婦のために使うとしてきたはずなんですが、財団側は、政府の予算削減などの現在の状況を考慮し、最小限の行政費用を日本の拠出金から賄うとしたと言われていますが、これについて事実関係を確認されておられますか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御質問がありました運営費についてですが、これは韓国政府が予算から支弁すること、これを想定しておりました。しかしながら、二〇一七年度予算において韓国の国会で当該予算が認められなかった、こういった事実が発生をいたしました。そして、その後の取扱いについては今現在まだ決まっていないというのが実情であります。



