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シルバーデモクラシーは存在するという現実をまずは直視すべき。年長世代と若年世代の利益のギャップが厳然としてある - 「賢人論。」第36回(前編)西田亮介氏

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「なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか」。読みようによっては挑発的ともとれるサブタイトルを冠した著書「不寛容の本質画像を見る」が話題となっている西田亮介氏。東京工業大学で准教授として教鞭をとる西田氏の専門は公共政策と情報社会論で、書籍だけでなくテレビやラジオなど各種メディアで持論を展開している。そんな西田氏の賢人論。前編となる今回は、いわゆるシルバーデモクラシーの本質から語ってもらった。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/公家勇人

シルバーデモクラシーが存在するのは、今の日本社会の構造上、否定できない

みんなの介護 西田先生の著書「不寛容の本質」にある「なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか」というサブタイトルは、「賢人論。」でもたびたび話題に上る社会的なテーマです。シルバーデモクラシーというキーワードも、不寛容という考え方の延長に表出したものですよね。

西田 どこからがシルバーかという議論はひとまず置いておいて、日本社会に年長世代と若年世代の間に埋めがたいギャップが構造的にも、認識のうえでも存在すると考えています。人口構成を見たってどう考えても年長世代に重みがありますし、年長世代の利益と若年世代の利益は必ずしも合致しませんから。…といったことを鑑みると、シルバーデモクラシーの存在は否定できないと思います。ともすれば、我々の社会はこの問題から目を背けがちですが、問題の存在を直視しないと解決できないのではないでしょうか。

みんなの介護 先生の著書では、財政の面からの指摘もありますね。

西田 はい。たとえば日本の一般会計における「歳入」は所得税と消費税と法人税の三本柱で成り立っています。わかりやすくちょっと乱暴な言い方をすると、金融ではなく人、または会社から国が召し上げているお金だと考えていいでしょう。この額がいまどのくらいかというと、実はバブル期とほぼ同じで、だいたい60兆円くらい。1991~2年がピークなんですが、その頃とほぼ同水準で、59兆円くらいになっています。

なぜ歳入がそれだけ多くなっているかというと、これはやはり高齢化に起因していると考えられます。社会保障に関連した支出、社会保障関連費を含めて多額が必要になってくるので、とにかく歳入を増やさないと財政が回らない、という事情です。

みんなの介護 社会保障費を確保するために歳入が増えている…というのは、若年世代にとっては対岸の火事と言いますか…。

西田 少なくともあまり素直に納得できる状況とは言えないですよね。もしかすると年長世代に関連する産業に関わる人ならば肯定できることかもしれませんが、若年世代、あるいは子供世代にとっては、それがある種のボトルネックになっていることは否定できません。

子育てに関する、たとえば幼稚園や保育園の拡充、保育士の待遇改善などが十分に行えないのは、財政的制約がボトルネックになっていると言っても良い状況ですし、日本の大学の研究教育力が相対的に落ちているにもかかわらず大規模な投資を拡大できないことも同様の理由です。これをもってシルバーデモクラシーと呼ぶかどうかはさておいて、年長世代と若年世代の利益のギャップが厳然としてある。これは、トレードオフの関係にあると言っても過言ではないと思いますね。



シルバーデモクラシー解消のために景気回復が必須。そのためには雇用の流動性を高めれば良い?

みんなの介護 その、年長世代と若年世代との間にあるギャップというのは、どうすれば埋められるのでしょう

西田 短期的には解消されないでしょう。

みんなの介護 短期的…というと、どれくらいのスパンの話でしょう?

西田 少なくとも50年単位程度と見積もることはできるのではないでしょうか。ぼくは今33歳ですから、少なくともぼくが生きているうちには解消されないだろう、という認識です。そう考えると、我々のような現役世代は運命共同体として、基本的にはダウントレンドの、そして昭和の面影もちらつくような、つらい社会を生きていくんだろう、という覚悟はしています。

この問題を解消するために不可欠なのは、十分な税収でしょう。そのためには早く景気を回復させる必要があると思います。既にボリュームが大きな団塊ジュニア世代が再生産適齢年齢を過ぎてしまったため、人口は移民等を認めない限り短期的にはどうにもなりません。

消費税を上げれば…という話もありますが、消費増税はダメです。明らかな冷や水だったことはすでに明白でしょう。最近なんて、10%への増税の話も全然出てこないですよね。政治的にも、やはり、今の景気を見れば言い出しづらいんじゃないかと思います。政策的には消費増税は鬼門とされていて、時の首相がつまずく原因になってきましたから。

みんなの介護 じゃあ法人税か、所得税か…という話になりますね。

西田 とにかくマクロの景気が良くならないことには、右肩上がりの経済を前提に作られた我々の社会の息苦しさ、不寛容さはそう簡単には払拭できないでしょう。

強いていえば、評判は悪いですが、雇用に関する規制変更はカンフル剤になるんじゃないかと考えています。いま、働き方改革が大きな問題になっていますよね。生産性を上げろとか、起業が必要だとか諸説ありますが、個人的にはそもそも労働者の数が足りていないという認識です。

みんなの介護 確かに、多くの業種・職種で売り手市場と言われていますし、企業は人手不足で困っている状態が続いています。

西田 なぜ企業が労働者を雇う量を増やさないのかというと、これは解雇規制の問題で。日本は整理解雇の要件が比較的厳しい社会とされています。企業が景気の後退局面になったときに雇い入れた人のクビを切るのが難しく、それが雇用の拡大に消極的な要因のひとつとされています。いわゆる整理解雇の4要件(※)を満たさない限りは解雇できないので、企業は人を増やすということについてたいへん消極的なんですよね。

※①人員整理の必要性 ②解雇回避努力義務の履行 ③被解雇者選定の合理性 ④解雇手続きの妥当性

みんなの介護 雇用の流動性を高めることで企業が雇う量を増やす、ということですね。

西田 いまは、5年前に比べて相対的に景気は良いとは思いますが、それでも企業がとくに正社員の人員増に抑制的なのは、次の景気後退の局面が来たときに人を解雇できないからだ、という考え方は否定できません。

欧州でも、金銭保障による整理解雇というのはトレンドのひとつです。解雇する代わりに月給の数カ月分を支払います、という仕組みです。法律の変更だけではなく、労使協定の調整だったり、日本では金銭補償を何ヵ月分にするのかとか、解雇される人が大量に出ないように企業の監査や監督を行うための機関を設置するといった、多くの課題はありますが、若年世代だけが過当競争を強いられる状態を避けつつ、全体の雇用の流動性を上げる工夫が必要ではないかと考えています。

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