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介護において、少ない人材で対処していくためには、効率化を図るしか道はない。IT化はその最たる例 - 「賢人論。」第35回(後編)森田朗氏

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社会保障関連におけるデータ分析の専門家であり、国立社会保障・人口問題研究所の所長、森田朗氏のインタビューも遂に最終回。後編となる今回は、介護や医療における“効率化”を、どのように図っていくか?をテーマに、IT化やコンパクトシティ化構想についての現状の課題について伺った。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人

「資産の抱き込み」は手厚い福祉で解消する。若者への負担は合理的じゃない。

みんなの介護 中編「「医療や福祉サービスを増やせばGDPも増えるし、ハッピーになる」。政治家の偉い方は言うけれど、そんなに簡単な話ではない」では、メディアのあり方について伺いました。

森田 明らかに若者の利益の立場に立って発信するのは何が問題か。「もっと若者に回せよ」「財源を将来にとっておけよ」「もらいすぎだぞ」という若者からの主張があって、「いや、何を言っているんだ」「これだけいい国にしていないのは我々なんだからちゃんと年寄りの面倒を見ろよ」というのがぶつかり合えばいいのだけれど。

今はどちらかというと、“お年寄りはお年寄りだから大事にしなければいけませんね”という意見が先にきて、その後、おまけ程度に“でも若者も大事ですね”となっている。で、どうやってそれができるんですか?っていうのを聞くと、黙られちゃう。

みんなの介護 今の制度のまま続くと、長生きすればするほど生活が苦しくなってしまうのではないかと感じます。

森田 苦しいでしょうね。自分にだって回ってこないのに、もう亡くなった人たちがつくった借金のために払っていて、今の年寄りまで回せるかなんて話になりかねないわけですよ。それがだんだん可能性が高くなって、なんとかしようぜ、みたいな話になっている。

その一つは、みんながある程度我慢せざるをえないんだけれども。我慢するときに、たくさんお金を稼いでいる人、お金を持っている人から、そうでない人に回すというのをやっていきましょうよ、と。そのひとつの方法というのが消費税。それを駄目だって言っちゃってるもんだから、どうなっているの?というね。

みんなの介護 例えば資産課税というのがあります。財産や土地などの資産に税金をかけるのがいいのではないかという声もありますが。

森田 それもやらざるを得ないと思います。だから何が問題かというと、今の若い人たちが頑張って働いて納めた税金を今のお年寄りに渡すのではなくて、お年寄りはいつ死ぬかわかんなくてまだ長生きしそうだから将来の不安があるっていうんで資産を抱えこんでるわけじゃないですか。

みんなの介護 いまの年金収入としてはそこまでない人も、数千万円の資産を持っている人もいると言われています。

森田 そう。そこまでの大金をあの世まで持ってけないわけですから、一刻も早く吐き出せ…とまでは言わないけれど、自分たちの世代の人たちがお互いに支え合うために使ってはどうですか?と。少なくとも、その人たちはその人たちで抱えこんだまま、若い人たちに貧しいお年寄りを養わせるているのは、これはあまり合理的じゃないんじゃないですか?って、私なんかは思いますけれども。

そのためには、フローとしては、基礎年金だけだと毎月5万円いくらしか入りませんが、数千万の資産を持ってる人はその資産を使ってください、と。資産を吐き出させるためには、資産に直接課税するのもありますけれども、間接税、消費税を。そして後から所得のない人に給付をする、てのが一番合理的じゃないですか。

そのために北欧諸国ではその仕組みを入れてるじゃないですか。日本と違うのは、スウェーデンだと消費税率は25%です。もう一つは完全なマイナンバーみたいな番号制度でもって給付と負担の調整をしているわけですよ。きめ細かくね。日本でもそれをやるしかないんじゃないですか。だから、ウェーデンに限らず北欧諸国がどうしているかというと、みんな資産を持ってないわけですよ。もたなくていいわけですから。

みんなの介護 福祉がちゃんとしているから。

鴨下 そうそう。だから、老後の生活が不安だから介護のための費用がいるから貯蓄しておくのだとするならば、国が面倒見るなら貯金としてとっておく必要はないわけです。そのへんは割り切っていますよね。



CCRC…と言ったって、高齢者向けのサービスの全体に影響を与えるほどの人数が移住するとは考えづらい

みんなの介護 話題を介護に戻しますね。現在、国としては施設介護ではなく在宅介護を推進しています。

森田 財源の面からいうとそう言わざるを得ない、というのと、もともと在宅というのが「地方で親子3代で暮らしているところで、孫子に囲まれ」というイメージだったんですよ。ただ、そうすると悲惨なことになりかねない、なんとかしようということで、たとえばURなんかでも、建て替えるときにできるだけ人を集めてサービスそのものを効率的にしていかないと、という話が挙がっていますね。

エレベーターのないURのアパートの4階や5階でほとんど一日寝たきりで、ヘルパーさんが毎日来てくれて訪問看護師の人が週に2回来てくれて、先生は月に1回…みたいなところで、「やっぱりこれからは住み慣れたところの在宅ケア」なんて言ったって虚しいでしょ?

みんなの介護 とすると、介護・医療が必要な人を一定のところに集める、という策が考えられるでしょうか。

森田 古いアパートのあちこちにナースコールをつけて、看護師さんが来るまですごく時間がかかって…で、他で呼ばれたらまた時間かけて行って、なんていうやり方よりも、同じとこに集めておいた方が効率的だし、費用面でも少なく済むじゃないですか。次の人のところにもすぐ行けるという環境を作っておくほうが良い。

ただ、そのためのお金と時間があるかって言ったら、相当厳しいのが現状。ということを、まずは多くの人に理解していただくことが重要だと思いますね。ちゃんと理解してもらえてたらオリンピックなんか呼ばなかったんじゃないか…これは余計な話ですけれども(笑)。何千億のお金があったらなにができるかっていう話。

ただし、もうひとつ言っておきますと、そういった高齢者の増加も、首都圏ですらそうですけども、やっぱり2030~40年で頭打ちになって減っていきます。東京都はまだちょっとわかりませんけどね。ただ東京都だけ考えてもだめなんで、首都圏、周辺で考えないと。だから埼玉南部とか。神奈川の北東部だとか千葉の西部だとか。そちらはみんな一帯として考えなければ駄目です。

例えば東京だと、2010年には270万人だった高齢者が2040年に420万人と、150万人も増えるわけです。首都圏だけで400万人以上増えるわけで。この人たちを、誰がどうやって面倒見ますかという話ですし。そういう人たちは、埼玉県や千葉県などのベッドタウンから東京の都心に働きに来ていた人たちですので、単身核家族で集合住宅に住んでいるわけですね。

みんなの介護 50代とか、定年前から地方移住を前向きに考えたほうがいいのでしょうか?

森田 CCRC、ですね。私もそういうところは見てきました。まあ行く人はいるとは思いますけが、何百万と増えてくる高齢者のうち、首都圏で高齢者のサービスに影響を与えるくらいの人が動くとは考えられないですね。

みんなの介護 首都圏の中で介護ってものをうまく回そうとすると、単純にヘルパーさんの数を増やす、もしくは介護自体を効率化するってやりかたがあると思うんですけども。

森田 どっちもやらなきゃだめでしょうけども。ただヘルパーさんを増やすといったって、どんな人たちがヘルパーさんになってくれますか?みたいな話になってきて。一番戦力になる、比較的賃金が安くて体力のある人というのは、残り少なくなった地方から若者を集めてくるのかっていう話になるのか?と。

みんなの介護 そこで移民の話がよく挙がるわけですが、前編「2040年、毎年一つの県が消滅していくイメージ。“移民を入れればいい”は虚しい議論でしかない」によると、森田先生はそれには懐疑的というお話でした。

森田 移民によって多少の数合わせはできるかもしれませんが、日本の介護に適応するためにそれ相応のトレーニングを積んで…という話になってくると大変。実際問題としてそういう東南アジアの良質な労働力っていうのはヨーロッパも介護労働力として狙っていますしね。

ドイツなんかはインドネシアやフィリピンなどにちゃんとドイツ語を教えてあげってのを、ドイツのお金でもってそういう学校を運営して、養成しています。で、そのままドイツに連れて行って。日本は、「ちゃんと現地で日本語勉強してきて、試験に合格したら入れてあげるよ」みたいになっているから、国際的な競争という面でも不利なんですよ。

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