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意外に上手く行くトランプ流「二元外交政策」 - 岡崎研究所

ワシントン・ポスト紙コラムニストのクラウトハマーが、2月23日付同紙掲載のコラムで、伝統的政策に立脚した主要閣僚と破天荒な大統領からなるトランプの外交政策チームによる「二元外交政策」は、今のところ意外と上手く行っているところもある、と分析しています。要旨、次の通り。

 トランプの外交政策チームの中枢には大きな矛盾がある。一方には、経験、判断力のある、伝統に則った国務長官、国土安全保障長官、CIA長官、さらにマティス国防長官とマクマスター安全保障担当補佐官がいる。彼らは1945年以来の米国際主義の主流を体現している。「ヒラリー・クリントン内閣」にもふさわしい人たちである。

 他方、大統領はその正反対で、経験が無く、非伝統的で、縛られるところがない。一つの中国政策、アラブ=イスラエルの二国家解決、NATOの時代錯誤性、自由貿易がもたらす損害に至る、あらゆる事柄に対するトランプの声明が混乱をもたらしている。

 このトランプ外交チームは機能し得るのか。驚くべきことに、これまでのところ、答えは「おそらく然り」である。

 事例は少ないが、例えばドイツを例にとると、トランプは、欧州の安全保障への米のコミットメントの尊重を示し、同盟国を安心させるべく、ペンス副大統領、マティス国防長官、ケリー国土安全保障長官、ティラーソン国務長官らをドイツでの様々な国際会議に派遣した。彼らは、同盟へのタダ乗り、特に国防費負担の小ささについてのトランプの大きな不満を示唆した。数日のうちに、ドイツは兵員を20000人増やすことを表明した。閣僚たちが政策の継続を体現し大統領が米国第一を言うのは、古典的な「良い警官、悪い警官」の役割分担である。「事態を変えろ」とのメッセージである。

 このやり方は、敵に対しても機能するかもしれない。2月18日に中国は、今年末まで北朝鮮からの石炭の輸入を全て停止すると発表した。北の総輸出額の3分の1に当たる。中国の保護下にあった金正男の暗殺が理由かもしれないが、輸入停止は、北によるミサイル発射直後、トランプ新大統領の任期に入って間もなくのタイミングで発表された。

 一つの中国政策についてのトランプの揺らぎは中国を驚かせた。トランプは南シナ海における中国の膨張も強く非難し、日本の首相との親密さを見せつけた。中国の北朝鮮からの輸入停止には多くの意味があるが、その一つは米国への譲歩である。

 このことは、伝統的な部下と破壊的なボスからなる特異な米安全保障チームが、かつてのニクソンの「狂人理論」を再現し得ることを示している。ニクソン大統領が予測不能で、時に向こう見ずで、気違いじみた危険を秘めているとして、敵は慎重に振る舞った。キッシンジャーはニクソンの協力の下、敵に対する圧力としてこの認識を利用しようとした。

 確かに、「二元の外交政策」はリスクがあり、不安定で、脱線する可能性がある。しかし、最初の一か月の経験は、思慮分別と運があれば利益が時折もたらされ得ることを示している。すなわち、過激なレトリックと伝統的な政策の組み合わせは、友と敵の両方の振る舞いを改善させ得る。

この論説はトランプ政権が予測不可能な大統領と良識的な閣僚の組み合わせで、意外に外交における成果を上げている面があると指摘しています。そういう面があることは否定できません。ドイツの兵員増、中国の対北圧力など、結果が出ているとも評価できます。

 しかし、トランプ大統領のもとでこれまでの関係が不安定化し、米国に対する信頼が大きく揺らいでいるというのが全体的な状況ではないかと思われます。TPPからの離脱を含む通商政策の変化、対ロ政策についての不透明さなど、トランプ政権があげた成果と国際秩序に対する害を比較衡量すれば、今まででも、害の方が大きいです。クラウトハマーは個々のプラス面を重視しすぎていると思われます。

 ニクソンは、対中接近、沖縄返還、固定為替制度の変革、ソ連との軍備管理、中東での米の役割強化など、多くのことを成し遂げた人でした。世間が予測していないことをしたという点では、予測に反したことをしたと言えますが、今から考えると、実によく考え抜いたうえで、政策展開したと思われます。ニクソンには、国内政治の経験も国際政治の経験もありました。これに比べ、トランプは思いつき、感情的で、たとえば貿易問題でも数字を無視するなど、ニクソンのような賢明さを全く持っていません。事実を無視する姿勢からは、的確な情勢分析やこれに応じた的確な政策は生まれて来ません。情報機関を敵視する姿勢がみられますが、国家指導者としての資質に疑念を呼び起こします。

 そのうえホワイトハウスには、トランプの側近には、バノン、ミラー、スパイサー、コンウェイなど、事実を重んじず、正直さに欠けることを恥と思わないような者がいます。クラウトハマーがニクソンとトランプを似ているように扱っているのは面白いのですが、大きく見るとピント外れと言わざるを得ません。

トランプはニクソンを尊敬

 トランプはニクソンを尊敬しており、ホワイトハウスには、パット・ニクソン夫人が送った手紙、ニクソンがトランプは大統領になれると言ったという手紙を飾っているといいます。トランプもニクソン同様、偉大な大統領で、米国の威信を高めた人になりたいと思っているのでしょう。しかし“Make America great again”(アメリカを再び偉大に)と言ったからといって、米国が偉大になるわけではありません。それをどう実現するのかが問題であり、それには賢明な政策を懸命に考えるべきでしょう。米国大統領という要職にありながら、メディアとのけんかに時間を使い、いかにも傷つきやすいところをさらけ出しているのは良くありません。

 米の保守派、共和党保守派は、トランプが自分達の政策目標を達成してくれる面とそうでない面を比較衡量してとるべき距離感を測っているのでしょうが、トランプ政権の体質をもっと冷厳に見つめる必要があるように思われます。

出典:Charles Krauthammer,‘Trump and the ‘madman theory’’(Washington Post, February 23, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trump-and-the-madman-theory/2017/02/23/d4f10f30-f9f4-11e6-be05-1a3817ac21a5_story.html

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