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頑張ればまた、人口が増えて経済が発展していくんじゃないか?なんて漠然と考える人もいるが、そんなのは幻想でしかない - 「賢人論。」第35回(前編)森田朗氏

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東京大学大学院院長、東京大学政策ビジョン研究センター長、学習院大学法学部教授などを歴任し、現在は国立社会保障・人口問題研究所で所長を務める森田朗氏。専門とする行政学・公共政策について、幅広く、かつ深い知見から制度設計の議論をリードしてきた第一人者である。前編となる今回は、そんな森田氏にまずは、現状の社会保障体制が抱える問題点…中でも少子化について詳しく伺った。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人

日本が経済大国にまでのし上がってこれたのは、“日本人が勤勉だから”ではない

みんなの介護 人口問題研究所の所長でいらっしゃる森田さんに伺います。日本の人口に関して、もっとも問題だと思われるところはどのようなところでしょうか?

森田 少子化でしょうね。徐々に日本の人口が減るということは、国際的な存在感も弱くしていきますし、国内では、いわば社会を支える力が低下してきます。さらに、少子化の反動で、高齢者が多い人口構成になってきます。

みんなの介護 少子化の反動で、高齢化が進んだ、と。

森田 よく言われているように、昔は毎年かなりの数の高齢者が亡くなっていたのが、医学の発達などで亡くならなくなってきた。高齢者は減らずに、少子化が進んできたので高齢化率が高くなってきたのです。

みんなの介護 高齢化率がピークになるのはいつ頃でしょうか?

森田 2040年くらいです。要するに、団塊の世代の人たちが亡くなれば、高齢者の数は減り始めます。そうはいっても、10人のうち4人くらいは65歳以上です。この構成は変わりませんから、大変な時代に突入しました。

重要なのは、死亡者がすごく減ったところにあります。なぜかというと、昔は亡くなっていたお年寄りが亡くならなかったからです。死亡者がすごく減ったことも要因のひとつですが、高齢者が少なくて、生まれてくる子どもが少なかったときには、養う人口に対して養われる人口の比率は下がるわけです。

みんなの介護 現役世代に対して、子どもやお年寄りの人口が少なかった。

森田 要するに、ある年だけ生き残っているお年寄りが少なくて生まれてくる子どもが少ない時期は、従属人口が少なくなるんです。1960年代から90年代はじめのころ、この時期には生産人口によって生み出された富の大部分は次の世代を養ったり新たな投資に向けたりすることができます。決して高齢者を養うためではありません。

みんなの介護 そのときが、ちょうど日本の高度成長に重なっているわけですね。

森田 何が言いたいかというと、日本は別に、“日本人が勤勉だから”とか“社会の仕組みがいいから”という理由で高度成長が起こったのではなく、たまたま従属人口指数が少なかったから高度成長がうまくいった、というのが私の考えです。

もちろん、従属人口が少ないだけでは必要条件で十分条件ではないですが、その条件が失われたときに経済成長が止まった。2000年ごろですね。これからは、高齢の老年人口が急増して、従属人口指数が増えていきますから。



日本人には「人口が増えて経済が発展して豊かになって経済大国になっていく」というDNAが刷り込まれてしまっている

みんなの介護 「たとえ子どもが増えても人口が減り続ける」。これはもう、どうしようもない問題…として割り切って考えなければならないのでしょうか?

森田 どうしようもありません。だから、この現実を前提にして、社会をどのように考えていくか、ということでしょう。楽観的に話している場合ではありません。

みんなの介護 それに備えていくには、社会保障を含めて国全体の形をどのように考えていくか、ということが大事ですね。

森田 少子化がずっと続いて生産年齢という働く世帯の人たちが減ってきていますよね。一例を挙げますと、日本の自動車が最も売れていた1990年代、770~780万台売れていました。でも今は400万台売れないわけ。もちろん「車離れ」もありますが、だんだん消費者自体が減ってきています。国内市場を前提にして作る力があった産業というのがそれだけ弱くなってしまうわけですから。国外でも売って1000万台突破する企業もあるわけですが、世界で売っていかなければならないわけです。逆に、それができなれば大変なことになります。

経済というのは非常に短い時間で大きく変わります。人口も、30年くらいで大きく変わる。でも、人間の頭の中にある意識は、変わるまでのスパンが長いんです。

みんなの介護 少子化対策が決まったとしても、そう簡単には少子化が解決されるわけではないように…。

森田 少子化を防ぐにしても、“子どもをたくさん産みましょう”という施策を立てたとして、生まれる子どもが今以上に増えたとしても、子どもを産む世代の女性が過去の少子化で減ってきていますので、50年くらいは楽観的に見ても人口が減り続けるでしょう。

みんなの介護 お話を伺えば伺うほど絶望的な気持ちになるのですが…。

森田 日本という国はある意味、人口が増えて経済が発展して豊かになって経済大国になっていく、というDNAが刷り込まれてしまっています。そういう認識のギャップと社会の作り方へ頭の切り替えができるかどうかが勝負になってきます。

頑張ればまた人口が増えるんじゃないかとか、増えるとはいかなくても減らないんじゃないかとか、幻想を持ちがちですし、現に今の内閣でも、少なくとも急激に減らなくとも人口1億人ベースで横ばいになるぐらいのことをやりましょう、というようなことは言っていますね。具体的に、どのようにやるかは言っていないようですが。

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