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広告代理店で「部長いっぱい作りまくればいいんじゃないっスか?」と提案し、NBAと仕事することを夢想した日々

3月25日、『電通と博報堂は何をしているのか』(星海社新書)発売されました。昨今過度に叩かれている面もある広告業界(特に電通。そして時々博報堂)について、現役社員やOBの話を聞いて書きました。過剰残業の問題やら、広告業界の「お客様は神様です」志向なんかについて色々書いたのですが、業界に就職・転職したい方にもお読みいただければ嬉しいです。タイトルはI編集者がつけてくれたのですが、彼の思いとしては「何をしているのか」という具体的仕事内容の解説と、「何をしておるんじゃ!」という「喝」的なダブルミーニングを込めているとのことです。このブログでは、本文中から漏らした部分を紹介しますね。実はコレってのは理想の働き方なんじゃないかな…と入社1年目に私が思い、動いたことを記しておきます。


 

 さて、その「理想の働き方」は「部長をとにかくたくさん作る」というものです。23~24歳の博報堂社員だった私はそれが実現できるんじゃないかな…と青臭いことを考えていました。途中までは…ね。ただ、実現したらかなり楽しい仕事になったんじゃないかな、なんてことも今更ながら思うのと、広告業界の自由な仕事っぷりというものをご覧くださいませ。



 広告代理店社員といえば、ジェネラリスト(営業)と、専門家(クリエーターやマーケッター)が共存するイメージがあるが、専門家にはもう一つの種類がある。これを入社1年目で知ったのだが、つくづく「いい会社に入った!」と思った。「もう一つの種類」とは、テーマ別の専門家である。

 大学教授や理系の会社員などに顕著だが、彼らは一つのテーマに絞り、研究を続けることが可能である。そこまでのものではないが、博報堂の場合、何らかのテーマを追求し、仕事をしている人がいた。同じ部署にも「環境」をテーマにしている社員がいた。企業が環境問題に対して真摯に取り組んでいることをアピールしたいことなどがあるが、その際は彼がスタッフとして指名されるのだ。それは自動車メーカーだろうが、石油メーカーだろうが、「環境」という観点からすれば、彼以上社内に詳しい人はいない。そのため、「とりあえず〇〇さんに相談してみよう」となり、クライアント企業での打ち合わせで「環境を軽視する企業が世間からどう見られるか?」や「欧米の先端的環境対策」などを解説することができる。こうしたところから、イベントや広告を作る業務に発展させることができる。

 最近でいえば、若者文化に詳しい原田曜平氏が分かりやすい例といえよう。もちろん、やっかみは多少あれど、ああいった自由に活動をする人材を受け入れる文化は同社には存在する。
  
 さらに後には「ユニバーサルデザイン」をテーマにし、そのままユニバーサルデザイン関連の部署を作ってしまった社員もいた。広告代理店は「コミュニケーション」が仕事なだけに、コミュニケーション(広報・宣伝活動)に繋がるのであれば、とあるイシューを追求することが可能なのである。私も一時期、国際標準化機構の認定するISO9001をいかに取るか、ということの研究者になりかけたこともあった。元々某ベンチャー企業の社長が「ワシらは怪しい企業だと思われているので、さっさとお墨付きが欲しいんじゃ!」と言ったため、「ISO9001取ればまともな会社だと思われる風潮ありますよ」と伝えたら「だったらそれを取るためになんかやってくれ!」となってしまった。結局はその1社しか担当せず、私は専門家になれなかったわけだが、「専門性」を社員が持つことは悪いことではないとされていた。

 ある日、廊下を歩いていてギョッとしたことがある。元パ・リーグ広報担当で、『プロ野球ニュース』(フジテレビ系)などでメジャーリーグのコーナーを担当したパンチョ伊東氏がいたのである。

 部署に戻って先輩に「な、なんかパンチョ伊東が普通に廊下で立ち話していたんですけど、なんでいるんですか?」と聞いた。すると「パンチョさんはフェローだかなんだかの立場でウチの会社に所属しているんだよ」と言われた。そのうえで、私は「動物図鑑」と呼ばれていた社員の顔写真・住所・電話番号入りの社員名鑑を見てみたら、伊東氏が普通にその場に並んでいた。

 こうしたことがあっただけに、一つのテーマを設定して仕事をすることも可能であることに気づいた。その直後、私が所属していたCC局情報デザイン部の部会で出た課題がある。それは「10年後のCC局の姿を考える」だ。

 私は「部長が大幅に増える」と答えた。その心は、個々の社員が持っている高い関心分野を元にした部署を立ち上げ、部長になることができるというものだ。これまでの例であれば、「環境部」「ユニバーサルデザイン部」「ISO部」「メジャーリーグ部」などだろうか。ここの「部長」には年齢が何歳であろうがなることができ、社内外のスタッフィングも自分の腹づもり次第。

「こんな仕事ができます」を社内DBに記入しておき、営業からの指名を待つ。当然正式な所属部署はあったうえでの複属である。もしも、そちらの仕事がとんでもなく忙しくなり、売り上げも立つようであれば、単属とし、その仕事に専念する、という構想である。

 そして入社1年目、これに近いことをやることができた。当時、私はアメリカのプロバスケットボールリーグ・NBAにかなり詳しかった。そんな中、同じフロアの隣の局であるPD局(プロモーションデザイン局=SPを担当する部署)の中に、NBAが好きな社員・Aさんがいることが分かった。

 そんな折り、たまたま大学時代の友人のゼミの先輩が、NBAの日本法人の社長に就任したことを聞いた。Aさんにそのことを話したら「なんかオレらで売り込みできないかなぁ……」と話し合った。その後、社内のイントラネットの掲示板に「NBA好きな方いませんか? NBA関連の仕事を一緒にしたいです」と書いたところ、営業から1名、マーケから1名の返事があった。

 我々は4人で会い、NBAの日本法人社長・N氏に一回会い、日本国内での課題を聞き、NBAを日本で活性化するためのプランを自主提案しよう、ということになった。我々が何をできるか、の資料をとりあえずつくり、私は友人に一回話を通してもらい、N氏に電話をした。

「とりあえず一回会ってみましょう」ということで、5人での夕食会を開催した。N氏も就任したばかりで、まだ広報・宣伝をどうにかするという段階ではないと述べ「何かあったら一緒に何かやりましょう」といった結論になった。その後、なんの音沙汰もなかったが、こうした共通テーマで社内の人間が集い、自主提案をクライアント(候補)に対して行うことができる自由な土壌はあるのだな、と感じ入った。

 ※ここまで


「テーマオリエンテッド」といった話になってくるのですが、この考えってのは様々な組織に当てはまるんじゃないかと思うんですよ。それこそ様々な市場があるわけですよね「おひとり様市場」「LGBT市場」「孫市場」とか色々。取りあえず、広告代理店という業態は、基本的にはクライアントのコミュニケーション上の課題を解決することが仕事です。自分が高い関心を持つ テーマを元に、スポンサーを見つけて社会問題に対応しながらも、企業が儲かる状況を作れればいいんじゃないかなぁ…と青臭いことを思っていた24歳の秋のお話しでした。それにしても「NBA部」所属したかったなぁ。

 それでは『電通と博報堂は何をやっているのか』、どうぞよろしくお願いいたします。


 

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