- 2017年03月22日 17:45
サウジ国王来日 主婦はほんとに爆買いにしか関心ないんですかね - 保坂修司
<ワイドショーまでもがサウジアラビアの話題を取り上げた、先週のサルマーン国王ご一行騒動記。取材をたくさん受けたが、ほんとにガックリだった。一番驚いたのは元AKBの高橋みなみのラジオ番組だ>
3月12日から15日、サウジアラビアのサルマーン国王一行が日本を訪問した。ふだん、サウジアラビアをメディアが取り上げることはめったにないのだが、今回ばかりはちがっていた。一行の到着前から報道番組だけでなく、何とワイドショーまでもが積極的にサウジの話題を取り上げてくれたのである。
こちらも中東でテロや戦争が起きたときしかメディアに呼ばれることはないので、昔住んでいたことのあるサウジアラビアについてメディアでしゃべれるのはけっこううれしかったりする。
とはいえ、いやな予感がなかったわけではない。随行員の数が1000人、あるいは1500人になるとか、ハイヤー借り上げ400台、エスカレーター式の飛行機のタラップといった金満ぶりを伝える報道が先行してしまったからである。
案の定、こちらへの問い合わせの大半はそれに費やされた。罪作りなことに安倍首相みずから訪日サウジ人たちがデパートで買い物をするというようなことを匂わしたので、サウジご一行さまが秋葉原や銀座で爆買いするらしいとの噂が駆け巡ってしまったのである。
その結果、テレビのインタビューではほとんどかならず、ホテルはどこですか、どこで買い物するんですか、何を買うんですか、ばかり訊かれ、本来の来日の目的などどこかに吹っ飛んでしまった。
挙句の果てに、妻の友人のワイン輸入業者からも問い合わせが入り、随行団の泊まるホテルを教えてほしいときた。おそらく1000人以上の人がくるなら、ワインも足らなくなるはず。だから今、営業をかければ、という魂胆だったのだろう。いちおうサウジアラビアはイスラームの国で、お酒は飲めないことになっているとは伝えたが、果たして結果や如何。
こうなったのにはサウジ側の責任もある。1年半ほどまえ、今回来日したサルマーン国王がカンヌなどで有名な南フランスにバカンスに出かけたときのこと。海岸への立ち入りを規制したり、それこそ爆買いしたりして、住民の顰蹙を買ったり、サウジ特需で喜ばれたりといった騒ぎがあったのだ。おそらくこのときの印象が残ったのだろう、「サウジご一行=爆買い」というイメージが固定してしまったのではないか。
しかし、少し考えればわかるが、バカンスで南仏に滞在するのと、公式訪問で東京にくるのでは性質がまったくちがう。いちおうインタビューのたびに、今回は公務だから、一部の例外を除けば、爆買いなんかしないですよ、とは話していたのだが、インタビュアーのなかにはその答えで満足できない人もおり、何度も撮り直しをくらうことがあった。
日本は輸入する石油の3割以上をこの国に頼っているのに...
そのとき気づいたのだが、とくにワイドショーと呼ばれる番組だと、「うちの視聴者の大半が主婦なので」というのを理由に、上のような金満・爆買いの話題ばかり振ってくることがあり、また主婦でもわかるように話をしてくださいと要求されるケースも何度かあった。
考えてみれば、これは相当失礼な話で、日本の主婦ってほんとにそんなことにしか関心がなく、ニュースも噛みくだいて話さないと理解できないんですかね(個人的には十分噛みくだいたつもりだったんだけど)。いやそのまえに、そもそも、専門家の小難しい話を噛みくだいてわかりやすく伝えるのは、メディアの仕事ではないんですかね。
複雑な問題を簡単に解説しようとすると、絶対に重要な要素を落としてしまって、わかりやすいけど、まちがっているという事態になりかねないような気がします。ニュースを見るとき、すごくわかりやすいということがあれば、まずは眉唾だと考えたほうが安心ではないかなあ。
サウジアラビア、とくに今回の国王訪日の主目的について解説するために、いろいろ資料や分析結果を取り揃えて、1時間も話して、結局放送されるのは爆買いのところ数秒だけなんてことがあると、ほんとにガックリです。日本は、輸入する石油の3割以上をこの国に頼っているのに、そんな理解でいいんでしょうか。
その点、わりと長めに生でしゃべらせてくれるラジオはいい。今回取材を受けて一番驚いたのは、元AKB48の高橋みなみがTokyo FMでやっている「高橋みなみのこれから、何する?」という番組であった。
あらかじめ質問事項が送られてきていたんだが、もちろんそれらをみんな彼女が考えたかはわからない。しかし、途中で話が脱線したときでも、きちんと理解して、それに応じた対応をしていたのはさすが元総監督であった。と書いたけど、これはこれで逆にアイドル差別になってしまうか。まあ、他意はありません。
さて、肝心のサウジアラビア国王の訪日目的だが、これが日本単独訪問でないことを忘れるべきではない。マレーシアからはじまり、インドネシア、ブルネイときて、日本、中国、モルジブとつづき、さらに最後はヨルダンでアラブ・サミットに参加する。およそ1か月にわたる長期外遊だ。
日本だけの問題ではなく、サウジアラビアの大きな外交政策の一環として日本や他の訪問国を位置づけないと全体を見誤ることになる。と、小難しいことをいいはじめたところで、紙数が尽きてしまった。つづきはまたいつか。
と書いているそばから、国王のモルジブ訪問が延期になって、急遽リヤードに戻ってしまった。モルジブでインフルエンザが流行しているため、というのが公式の理由だが、実際にはサウジの対モルジブ投資を巡って反対運動が起きたのが本当の理由らしい。
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