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最低賃金と雇用創出

最低賃金が弱者を痛めつける(「小さな政府」を語ろう)

上の記事でも言われているように、最低賃金は、通常なら生まれているはずの雇用の発生を阻害する。安価の失業者にとって最低賃金の悪影響を受けているのもあるが、(自発的になっているのを除いて)ホームレス等本当に困っている低所得者層にとっても、この問題は切実である。

最低賃金の適用除外要件を緩和して融通を効かせるべきだ。 最低賃金に厳格になりすぎると、低賃金だからこそ存在する職業が壊滅してしまう(或いは、その職業が生まれない)のだ。

最低賃金を上げろという論者は、最低賃金は不況下での労働者保護に繋がり、賃金上昇による労働生産性の向上が見込めると言う事が多いだろう。また、企業のカルテルによる同時的賃金抑制といった悪徳行為を抑制できるとも言う。では、最低賃金は「良いもの」として認識し、「最低賃金は高ければ高いほど良い」という考え方で良いのだろうか。

短期的な非効用の影響を受ける人間が誰かを考えてみれば問題の深さが見えてくる。浮浪者、いわゆるホームレスだ。最低賃金が足枷となり、冒頭で述べたように、低賃金だからこそ存在しうる仕事に就けないという問題が起こる。

こうした仕事が仕事として成立するには、最低賃金の適用除外が広く認められれば良い。次に紹介する米国とタイの事例の仕事は、これらの要件には該当しなさそうだ。

米国の最低賃金は平均で時給650円程だが、今から紹介する仕事はそれを大きく下回る。MLBやNBA の試合では、観戦中に食べたホットドッグやポップコーンが入っていた袋や箱をゴミ箱に捨てずに足元に捨て、出来るだけ席の周りを汚すという習慣をご存じだろうか。

何故汚すかと言うと、「掃除」という仕事を作るためだ。試合後に浮浪者をたくさん集め、掃除をしてもらい、食費分くらいになる給与を支払うのだ。 ゴミがたくさん出ていないと仕事が減るから、客は食べ物を沢山買い、沢山捨てるのだ。(ついでに多くの物を買うというインセンティブも働く)

ここで、もし最低賃金が適用されてしまったらどうだろうか。スタジアムは、掃除の生産性が低い浮浪者を雇わずに、掃除屋を雇うだろう。

ここまでで、日本の政策をよく知っている貴方なら、こう思うかもしれない。

「浮浪者にその日暮らしをさせていても、根本的な解決にならない」

確かに、浮浪者が安定 した職を得る事ができるのが理想的だ。だが、今は時代が時代だ。自宅が無い浮浪者に仕事があるのだろうか。

政府の政策も呑気だ。「急に仕事は無いから、ボランティアから段階的に慣れてもらおう」と平気で言っている。飯を買う金が無い人がボランティアなんてする余裕があると思っているのか。

そりゃ、社会復帰中に生活保護を受けられれば良いけど、住所が無い浮浪者が受けられるケースは滅多に無い。だから、とりあえずは仕事を作らなくてはならないのだ。その上で日本の政策を進めれば良い。

次は、タイ等の事例を挙げて、本論のまとめに入ろう。

最低賃金が適用されない場合に、存在しない職業を恒常的に産むという点では、タイが先進的であろう。

タイの公衆トイレ・デパートのトイレなどは殆どが有料だ。有料と言っても1バーツ(3円)と現地通貨の最低金額だ。

さて、このトイレへの入場料を回収する人間が各トイレ前に1人おり、彼等は時給10バーツ程度で働いている。タイの最低賃金が1日で平均で200バーツだ。10時間働いても最低賃金の半分だ。

この仕事で重要なのは、「ほとんどの公衆トイレに人がいる」という事だ。タイでは駅やら観光地のトイレにでも人が立っているという事を考えてみてほしい。

例えば、駅のトイレなら最低賃金分を払ってもお釣りが来る程入場料が集まるだろう。参考までに、JR大阪駅の1日の利用者数(降車数を除く)は42万人だ。 仮に1%の人がトイレを利用すると考えても、4000人以上の人が利用する。日本で1人当たり10円集めるとしたら、数万円になる。

だが、公園のトイレを考えてほしい。人なんてほとんど見かけないトイレはどこの国にでもある。タイに1日当たり50人しか利用者がいないトイレがあるとしよう。もし、このトイレで最低賃金200バーツを確保するなら、1回の利用料を4バーツにせねばならない。10バーツ(30円)あれば屋台で飯が食える国だ。トイレの利用料に4バーツも取ったら利用者がいなくなる。

だから、昼間の一定時間だけ、時給10バーツ弱でトイレを開けるのだ。こうすれば、飢餓で亡くなってしまう人をタイ全土で見れば、莫大な人数を救う事ができる。 おまけに、公衆トイレを有料にしている事で、犯罪を抑制されている。痴漢・強姦・薬物取引などは、かなりの数が有料制によって抑制されていると言われる。

以上の例からも、最低賃金の適用除外要件が比較的柔軟な事により、多数の雇用が創出される事が分かる。

日本では以上のような仕事は不可能と言ってよい。試しに大阪の最低賃金762円に8時間をかけてみてほしい。1人当たり10円取ったとして、経済的にペイするトイレが日本に一体いくつあるだろうか。

結局、最低賃金については上げるか上げないかの議論が多いのが問題である。最低賃金が上がって喜ぶのは仕事がある人だけ であり、仕事が無い人が助けられるわけではない。

最低賃金除外要件を緩和する事が必要と言ったが、何でもかんでも除外するのも良くない。歴史的には鉱山に大量の浮浪者を集めて長時間の重労働をさ せた事実がある。除外要件を緩和して良いのは、野球場のゴミ拾いのような1〜2時間で終わる仕事や、時間は長くても肉体的に過度の苦痛を与えない仕事だけだ。業種を指定して緩和すれば、「雇用創出」という社会貢献を意識して仕事を“創る”企業も多く現れるだろう。

日本にも、仕事になりえなかった分野があるだろう。そして、こうした部分を仕事に出来るのは、国ではなく、民間の力だ。国がすべきは、法改正である。

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