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内藤忍氏の荒唐無稽な45歳1000万円からのマンション投資シミュレーション

インデックス投資,ワインファンド,海外不動産等々,このブログで何度か取り上げている内藤忍氏が,"大変興味深い"不動産投資推奨の話を書いていました。

45歳で貯金1000万円の人が老後の不安を解消するために

45歳で1000万円の資産を持っている人に対して、金融商品での運用ではなく,ローンを活用したワンルームマンション経営の勧めです。金融商品で運用するよりも,最初の5年間ワンルームマンション1部屋を運用し,その後は3部屋に増やして運用した方が良いという結論です。

しかし,このシミュレーション(?)がよくわからないことになっています。

■ポイント

    • 不動産投資の時には存在した2400万円もの投資元本が金融商品の場合、酒か女か四次元ポケットか分かりませんが消失マジック

    • 不動産は180ヶ月ずっと満室

    • 不動産投資ではローン以外の費用ゼロ
一つ一つ気になった点にコメントしてみます。
15年間5%で運用し続けるのは、現状のマーケット環境では、ほぼ不可能です。
金融資産に対してこのように評しています。

まず「○%で運用し続ける」という典型的な間違いです。株式などの運用で15年間(年率)5%で運用し続けるのは,現状のマーケット環境に限らずほぼ困難でしょう。株式は5%より儲かってしまう年もあれば,損してしまう年もあります。「儲かる年もあれば損する年もあって,ならしてみると年5%で運用し続けるのと同じ結果になるんじゃないか」という年利5%という話であって,15年間連続で5%で回るという話ではありません。

なお,「15年間のトータルで年利5%と同等の利回り」と読んだとして,それがほぼ不可能という根拠はよく分かりません。
2000万円の中古ワンルームマンション3戸(6000万円相当)を頭金1000万円で15年後にローン無しで手に入れる方法を具体的方法を考えてみます
ここから内藤氏が,国内不動産で運用する場合のシミュレーションを行っています。
頭金と合わせて1060万円を5年ローンで借りると、毎月の返済は185,000円になります。購入した物件から家賃が75000円入ってきますから、自分で返済するのは差額の毎月11万円になります。
ローン返済シミュレーションサイトで1060万円を金利1.5%で5年間で返済する時の毎月の返済額を計算すると183,484円でした。内藤氏が言われている18.5万円というのはほんの少しだけ余裕がある金額になります。

ただし,本来はここに修繕費や賃貸管理会社手数料等がかかるはずですので,毎月の持ち出しが11万円だけで済むとは思えません。賃貸管理会社の相場は家賃の5%程度と言われますが,75000円が家賃だとすると,賃貸管理会社への支払いは3750円になります。ここに修繕費などもかかってきますので,持ち出しは少なく見積もっても11万5千円は必要になるのではないでしょうか?
年後に1戸の返済が終わったら、さらに4120万円借りて2戸購入し、10年で返済します。ローン返済金額は毎月約37万円と高額ですが、3戸のワンルームから毎月225000円の家賃が期待できますから、実質の返済負担額は145000円になります。
50歳になったら2戸追加とのことです。ここでもローンを活用ですが,ローン返済シミュレーションで返済額を計算すると369,940円であり,まさに37万円がローン返済で消えていきます。

ここでも賃貸管理会社や修繕費等の持ち出し分が考慮されていません。賃貸管理会社への支払いを家賃の5%とみると,今度は11,250円です。ここに修繕費等が乗ってきますから,実質の持ち越しは月額換算16万円以上といったところでしょうか。
もし、15年後に家賃が少し下がって7万円になっていたとしても、毎月21万円の収入
経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由(三井住友トラスト基礎研究所) などを見ると10~15年の時間の経過で,75000円⇒70000円と6.7%程度の賃料下落で済むと考えるのはやや楽観的過ぎる気もします。

築浅だと年1%程度の下落ですから,10年/15年経過の物件のコンビネーションと考えると全体では10%程度の下落は見込んでおいた方がよさそうな気もします。
金融資産でうまくいっても60歳で2000万円という試算と比較すると、時間が無い人がどちらの選択肢にすべきかは明らかではないでしょうか。
ここが最大のサプライズです。どういう計算をしているのか全く分かりません。

内藤氏は不動産投資のシミュレーションの際に以下のような前提を置いていました。

    • 45歳時点で1000万円持っている

    • 45歳からの5年間は毎月11万円は投資に拠出できる (11万円×12か月×5年間=660万円)

    • 50歳からの10年は毎月14.5万円を投資に拠出できる(14.5万円×12か月×5年間=1740万円)
この人は一切の資産運用をせずにタンス預金をしていたとしても,以下のように60歳時点で3400万円が手元にあるはずです。

45歳時点に持っていた1000万円
+ 45歳から5年間の660万円
+ 50歳から10年間の1740万円

「金融資産でうまくいっても60歳で2000万円」という試算はどこからやってきたのか不明です。

金融資産による運用だとうまくいっても1400万円損してしまうということなのでしょうか?

それとも,金融商品で投資をした場合には毎月出せていたはずの11万円や14.5万円は酒や女遊びに使ってしまって消えてしまうという試算なのでしょうか?

仮に上記のタンス預金で貯めておくはずの3400万円を金融商品で運用した場合,途中で上下の波がありますがトータルとして年率平均で
    • 3%相当だった場合: 4537万円
    • 4%相当だった場合: 5006万円
    • 5%相当だった場合: 5532万円
のようになります。

購入時の築年数は分かりませんが,以下の物件を持っているのと上記の金融資産を持っているのでどちらがよいか明らかでしょうか?

・購入時2000万円で購入時から15年経過したワンルーム1戸
・購入時2000万円で購入時から10年経過したワンルーム2戸

他手数料や空室率など,もう少し現実的な試算をしてみる

上記の不動産の試算では賃貸管理会社への支払いや修繕費などがありません。また15年間で1か月も空室がないという前提で成立しているシミュレーションです。

■賃貸管理会社への支払い家賃の5%,空室率8%,その他費用を家賃の2%として再試算

都内の賃貸マンションの空室率は下がってきていて8%程度というニュースがありました。これより空室が多いこともあり得ますし,少ないこともあり得ますが,相場ということでこの数字を使ってみます。

まず,全期間で8%が空室とすると家賃収入が8%減額となります。

そこへ賃貸管理会社及びその他経費で7%とすると,トータルでは内藤氏の試算から家賃額の15%相当を追加で持ち出さなければなりません。

当初5年の家賃収入75,000円時代は,月額にして11,250円程度の持ち出し追加です。5年間で675,000円です。

後ろの10年間は3倍になりますから,追加の持ち出し額も3倍で月額にして33,750円です。10年間では405万円です。これだけの追加持ち出しが発生します。

■追加持ち出し分も拠出できる想定して金融商品運用ケースでも再計算

当初の月11万円/14.5万円に加えて,11,250円/33,750円を追加投資できる人ということは,金融資産で運用したケースで,このお金を追加して再計算してみます。

トータルとして年率平均で
    • 3%相当だった場合: 5033万円
    • 4%相当だった場合: 5538万円
    • 5%相当だった場合: 6100万円
という結果になりました。

上記のように年率3%換算で5千万円に到達しました。5%相当だと6千万を超えてきます。5%相当だと,購入時点の価格6000万円だったワンルームマンション3戸の購入額を超えてきます。


焦る必要はないし,投資は魔法ではない


■焦る必要はない

不動産投資は資産運用の王道であり,非常にまっとうな投資方法だと思いますが,フツーの人の老後資金確保のために「手元資金を空っぽにしてフルローンを組んで,その上15年間は毎月10万円を超える自己資金持ち出しを続ける」という非常にスリリングな資産運用が必要であるとは思えません。

特にこの事例の人はなおさらです。

45歳時点で1千万円も貯金がある時点でいい感じです。

しかも,その後も毎月10万円以上も投資に持ち出せるということは結構稼いでいます。

不動産ローンの金利が1.5%というのもいい水準です。この金利で借りられるというのはいい企業にお勤めの可能性が高そうです。そうだとすると退職金まであるかもしれません。勤続年数がそれなりに長ければ2千万円くらいは期待できるのでしょうか?

このような人だった場合,金融商品による投資か不動産投資かという話ではなく,老後資金確保で満足するならどちらの資産運用も不要不要という人かもしれません。

■投資は魔法の杖ではない

(ここはちょっと余談です)

また,上の試算でも分かりますが,15年間を元本+積立で年率3%で運用しても,資産運用による増加分よりも元本の方が圧倒的に大きくなっています。5%でも元本の方がまだ大きい。そして,フルローンを活用した投資でも似たり寄ったりの数字です。

もちろん,上記シミュレーションの投資による利益は無視できる数字ではありませんが,それでも投資だけで老後不安が消え去るような魔法ではありません。
この試算で分かることは,45歳で1千万円貯めていることの重要性,その後も毎月10万円強の貯蓄を続けていくことの強さです。

内藤氏が1000万円を15年間年率5%でも運用しても2千万円にしかならないと言っているように,いくらいい利回りで運用できても元本が小さければそんなもので終わってしまいます。その後の15年間で毎月拠出できることの威力は大きい。不動産投資にしても15年間持ち出しを続けられるという資金捻出力が素晴らしい。

投資で資産を増やすのは有効な手段ですが,それ以上に投資に回すだけの資金を拠出できる強靭な家計こそが資産形成の土台でしょう。

【おまけ】
なお,2日後の資産運用と食生活の「やってはいけない」共通点にて以下のように書いていたのも面白い。
食生活と資産運用は似ていると思います。どちらも1つのものに偏るのではなくバランスが重要という共通点があります。

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