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日本学術会議の「現実から乖離した」声明案 ―EMP攻撃の防護策を急げ― 屋山太郎

日本学術会議は「学者の国会」と言われ、全科学者を代表する機関のはずだった。その学術会議が、大学などの研究機関の軍事研究に否定的な新声明案を了承したという。4月の総会で正式な声明とする方針だが、学者の世間知らず、無知を露呈するような内容だ。こういう人達に補助金は要らない。

 同会議は新声明をまとめるに当たって、昨年6月に「委託研究制度をめぐる検討」を始めた。この委託研究は防衛装備庁が各研究機関に委託費を払って軍事研究を委託するもの。16年度の予算は6億円に過ぎなかったが、17年度は110億円に急増した。軍民両用技術推進の検討を始めることが緊急だと認識したからだ。

 毒ガスがあれば防毒マスクの研究が必要なのはわかるだろう。軍民両用研究が必要なのは当然であって、毒ガスは存在すべきでないからマスクは要らないは、さながら非武装の論理そのものだ。

 北朝鮮が日本海に4発のミサイルを撃ち込んだ。うち1発は日本に最も近い地点に落ちたと言われる。日本人の考えではそのうち核が小型化して日本の都市に落とされる。広島、長崎のように市民が一瞬のうちに焼き殺されるという恐怖だろう。上空500メートルから600メートルで爆発させれば都市が殲滅されることは実験済みで、世界中が知っている。

 しかし核爆弾をはるか上空の30キロから数100キロで爆発させればどうなるか。この高高度(高層大気圏)で爆発させるのを電磁パルス(EMP)攻撃という。この攻撃では核兵器による熱線、爆風、放射線で直接、死傷する人は出ない。しかし核爆発で強力なEMPが生じると、対策を施していない電子機器・電子回路に過剰な電流が流れ、電子機器・回路は破壊されたり誤作動して、文明社会は一瞬に崩壊する。

 「米国議会EMP議員団」が描いたシナリオによると、10キロトンの核爆発装置がニューヨーク真北上空135キロメートルで爆発した場合、死傷者数百万人。停電地帯からの避難民数百万人。汚染状況は米国東部全体に散在する原子炉、工場、製油所、パイプライン、燃料貯蓄所、その他工業施設の火災や爆発が起こる。

 攻撃された国の文明は破壊され、日本なら何千万人もが殲滅に追い込まれるかも知れないという。核爆発以上の災害をもたらすことは確実で、核保有国ならこの事情を百も承知だ。電子機器・回路にはEMP対策として技術的に防護を施せるという。政府は被害想定を見積もって、防護策をとっておくべきだろう。

 国民がこの情報から閉ざされ、日本の科学者がこの調子では、国民は何故電子機器が動かず、電力も供給されないのか全く分からない。江戸時代のインフラ状況に戻り、飢えが社会を襲うだろう。

 北朝鮮やならず者国家は勿論この状況を知っている。当面、北朝鮮が欲しいのは日本の文明を崩壊させるよりも、生かしておいて、食物を得るということだろう。

 日本国民は焼け死ぬか、飢え死にするか。逃れる道は科学によってしかないと知るべきだ。
(平成29年3月15日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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