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博報堂もGoogleもやめて起業した理由~freee佐々木大輔氏

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Googleでfreeeを作ろうと思わなかった理由

【田原】Googleは新しいことをやる会社ですよね。クラウド会計をGoogleで事業化しようとは考えなかったですか。

【佐々木】難しいと思います。国によって商習慣が違うので、会計ソフトはそれぞれの国で必要です。でも、Googleは一気に何十カ国に出せるものしかやりたがりません。あと、さっき言ったように簡単に起業する流れをつくりたいというのが僕たちのビジネスのコンセプトの一つ。大企業の中でやるのは、そのコンセプトに反するのかなと。まあ、そういった理屈以前に、アメリカ西海岸では起業があたりまえになっていて、Googleの中でやろうとは最初から考えすらしなかったというのが正直なところです。

【田原】そうですか。

一般の会計ソフトとクラウド会計ソフトはどう違う?

【田原】サービスの話も聞かせてください。僕は会計がまったくわからないのですが、一般の会計ソフトと、クラウド会計はどこが違うのですか。

【佐々木】freeeと一般の会計ソフトの大きな違いは2つあります。クラウド会計は、銀行やクレジットカードのWeb上の明細を自動で取り、人工知能で分類します。たとえば、「東京ガス」という明細があれば、これは水道光熱費と自動で分類していくわけです。そうすると、それまで領収書や通帳を見て手打ちしていたものが、放っておいてもできていく。それが一つです。

【田原】もう一つは?

【佐々木】一般の会計ソフトは、起きた取引を後から入力します。でも、取引の前には請求書の発行や受取があります。そうした請求書をfreee上はで管理でき、自動的に帳簿に記録されます。つまり帳簿をつける前のレベルだけやってもらえれば、あとはよしなに帳簿をつくります。

【田原】それらが可能になることで、どのくらい労力がかからなくなるのですか?

【佐々木】およそ50分の1です。10日かかっていた作業が数時間でできてしまいます。

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(上)freeeのホーム画面(下)freeeのファイルボックス画面。領収書を写真に撮ってアップロードすると登録される。

【田原】クラウド会計のサービスは、もともとアメリカから?

【佐々木】じつは一番進んでいる国はニュージーランドです。ニュージーランドで2006年にクラウド型会計ソフトをつくり、それを専業で始めた会社が現れました。ニュージーランドでは、すでにクラウド型が100%。この会社がアメリカにも進出したことで、もともと会計ソフトを売っていた大手のインテュイットも慌ててクラウドへの対応を進めました。いまはアメリカでも急速に広がっています。

【田原】日本はどうですか。

【佐々木】いまのところクラウド型は20%くらいです。

【田原】反応はどうですか。

【佐々木】じつは製品をリリースする前に、経営者の方たちに意見を聞いたのです。すると、たいていの人は「いまは満足しているから、こんなものいらない」という。ところが公開したところ、一部の人たちが「これ、すごい」と言ってくださって、それがTwitterやFacebookで広がりました。

税理士は敵でなくパートナー

【田原】これを使うと会計処理の作業が楽になるわけですよね。税理士さんから敵視されたりしないのですか。

【佐々木】税理士さんはパートナーですね。僕たちはまずエンドユーザーさん、つまり実際に使う中小企業の方にフォーカスしてマーケティングをしました。その結果、利用してくださった企業側から、今度は会計事務所さん側に「クラウド会計に対応してほしい」という要望が出るようになった。その時点で僕たちも会計事務所さん向けに提案をし始めました。具体的には、「freeeを会計事務所のお客さんが導入してくれたら、会計事務所の作業負担は軽くなって、もっと付加価値の高いコンサルティング業務に集中できますよ。」と提案して、パートナーになっていただくのです。

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【田原】税理士さんは理解してくれますか。

【佐々木】みなさん、この流れはもう止められないことはわかっていて、この流れとどう向き合うのかということを真剣に考えていらっしゃいます。僕たちもソフトウェアを売るパートナーとして見ているわけではありません。会計事務所さんに向けて、新しいビジネスモデルへの転換を提案しているという認識です。

【田原】freeeの料金はどうなっているのですか。

【佐々木】毎月、ユーザーさんに利用料をいただいています。一度導入されるとそのまま使い続けるてくださるお客様が多いので、いまはどんどん売上が増えています。

【田原】いま御社は5年目ですね。売上はどれくらいですか。

【佐々木】非公開ですが、契約いただいている事業所は60万事業所になりました。

【田原】ちなみに社員は何人ですか。

【佐々木】従業員300人ぐらいの規模の会社です。

マネーフォワードとの訴訟

【田原】クラウド会計は成長分野だからライバルも多いでしょう。従来の会計ソフト、たとえば「弥生会計」や「勘定奉行」が有名ですが、これらを売っていた会社は自働化しないのですか。 

【佐々木】少しずつ取り組みはじめいるようですが、まだ本腰ではないように見えます。

【田原】まさに同じようなサービスをやっているマネーフォワードとは、いま訴訟をやっていますね。差し支えない範囲で経緯を教えてもらえますか。

【佐々木】僕たちは自動で会計帳簿をつける仕組みに関していくつか特許を持っていて、その特許を侵害されているという訴訟です。

【田原】マネーフォワードは、freeeより後ですか。

【佐々木】会社の設立は向こうが先ですが、会計ソフトという事業を始めたのは僕たちのほうが1年ぐらい先です。会計ソフト事業の規模も僕たちのほうが大きい。

【田原】どうして訴訟したんですか。

【佐々木】僕たちは、他にはないイノベーションを起こすことにフォーカスして投資を続けてきました。投資し続けるのは大変なことですが、大きな価値があると思ってやっています。それを続けていくには、重要なものについては可能なかぎり特許を取って、主張していかないといけない。イノベーションを起こす組織としてそこは譲れないし、創意工夫をきちんと評価する社会をつくろうよという思いもあります。

日本中の中小企業で当たり前に使うソフトにしていきたい

【田原】将来の話も聞きましょう。今後の展開を教えてください。

【佐々木】いま日本に企業の数は600万あるといわれています。その中の中小企業で、ごく当たり前に使われるソフトにしていきたいです。これまでの会計ソフトはパソコンにインストールして使うタイプだったので、データも個社の中に閉じていました。しかしクラウド化すれば、会計データを使って新しい価値を生み出すこともできます。その価値を、全国の中小企業の方に提供したいなと。

【田原】新しい価値って、もう少し具体的に言うとどういうものですか。

【佐々木】たとえば、freee上にあるデータをそのまま使って銀行から融資を受けることができるようなるかもしれません。あるいは、データを分析した人工知能が経営のアドバイスをしてくれるというサービスもありえます。そうすれば、どんな人でも簡単に経営ができるようになるかもしれない。そのモデルを日本なりどこかのまとまったコミュニティでつくって、いずれは世界に出していけたらと考えています。

【田原】ニュージーランドの会社はアメリカに進出したんですよね。佐々木さんの会社も、それに続くと。

【佐々木】まずは韓国とか台湾などの近い国からになると思いますが、いずれはアメリカもありえると思います。

【田原】わかりました。頑張ってください。

佐々木さんから田原さんへの質問

Q.日本は起業が少ない。どうすればリスクを取る人が増えますか?

本心では若い人も起業したがってますよ。大企業は売れるとわかっているものしかつくりません。結果がわかっている仕事に、若い人がワクワクできるはずがないじゃないですか。仕事でも人生でも、先が読めないからこそ本気になれるのです。

にもかかわらず、最近の若い人は安定志向が強い。原因は、失敗を必要以上に恐れているからでしょう。

それに対する処方箋は一つ。とにかく失敗してみることです。僕は失敗の連続でしたが、実際に失敗してみれば、たいしたことがないということが実感としてわかります。そもそも、どんなに優秀な人だって、新しいことに挑戦すれば99%以上失敗します。うまくいかないことがあたりまえなのだから、怖がるだけムダですよ。

田原総一朗の遺言:まず失敗せよ。経験すれば恐れが消える!
編集部より:
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