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世界に、ポリコレ疲れという「幽霊」が出る

■他人のケムリ

認定NPO法人代表の駒崎弘樹氏が、屋内禁煙法の審議のされ方についてあいかわらず鋭い指摘をしている(世界より10年遅れの屋内禁煙法案に自民党の半分が猛反対)。

20年前に禁煙した僕は、当初は他人のケムリがあまり気にならなかったもののこの頃はどうにも不快であり、駒崎氏の視点と指摘には大賛成なのだが、こうした議論が「トランプ以降の社会」のなかでどう展開されるか気になっている。

たぶん日本の新しいリベラルを引っ張っているのが駒崎氏で、禁煙法以外に保育園問題を中心に僕も思想的には共鳴する点が多いのだが、こうした正統性/コレクトネスの手法が、我が国の文化にどれだけ根付いていくのだろうか。

これは、「トランプの時代」つまりは、アンチ・コレクトネス(正当性)を迎えた先進諸国でどのようにして受け入れられるか、ということだ。

同時に、こうした従来のNPO的主張(リベラリズム)と発想(連帯やつながりの呼びかけ)は、その枠内にいる人々には自明でわかりやすいが、その外にいる人々には遠いという「断絶」が、おそらくアメリカやイギリスやフランスでも起こっている。

禁煙という当たり前の提示が、その正当性がいよいよ社会全般に行き渡ってきた現代において、これまでその「コレクトネス/正当性」を仕方のないものとして受け入れてきた人々が最後の最後で反旗を翻す(喫煙自体は否定でも禁煙制度の進め方や「自由」の捉え方等、禁煙をすすめる運動に反感を抱く人々含む)、その正当性は頭では理解できるものの日常生活をシステムとして締め付けるのは反対せざるをえない的不満が、ここに来てさまざまなテーマで露出しているように僕には映っている。

こうしたポリティカル・コレクトネス(広義~弱者への社会的配慮のための制度的整備)への反動(アンチ・ポリティカルコレクトネス)について、少し前に僕は当欄で「ポスト・ポリティカルコレクトネス」としてこんな記事もかいたものの(「ポスト・ポリティカルコレクトネス」~トランプでも、ひきこもりでも、NPOでもなく)現代はまだポリコレとアンチ・ポリコレが拮抗している状態だ。

それがアメリカ社会の2分現象だと僕は理解している。

■きれいごと疲れ

この議論は、表面的な話題が、トランプや脱EUやフランス極右や喫煙(や戦前教育)といった「反動」なだけにわかりづらいが、実は、「ポリティカルコレクトネス的きれいごと疲れ」が国民の半数を覆っているのが、2017年の最も深刻な事態ではないだろうか(まあ禁煙についてはもう少し支持が多いだろうが、たとえばアメリカでは、マイノリティ擁護政策の具体的政策〈教育等〉に市民の不満があるという)。

「ポリコレ的きれいごと疲れ」が、社会の半数に蔓延しており、欧米のようにその疲れが潜在化している場合、選挙で開票してみるとトランプや脱EUが過半数という事態になる。

こうした事態を防ぐには、「発信」に工夫する必要がある。

アンチコレクトネスな半数の人々は、おそらく「行き過ぎたマイノリティ擁護」にうんざりなのだ。僕個人としては行き過ぎだとは思わないものの、この半数の「うんざり」を調整して社会全体に説明するのが政治だと思う。

またアンチ・ポリコレな人々は、そのうんざり感を露骨に差別や偏見に結びつけて語るのもためらうようだ。だから、無記名の投票行動ではそのためらいを表象したいものの表象先が見つからないため、仕方なく露骨な勢力(トランプや極右防衛大臣含む政権)に入れてしまう。

こうしたねじれた状況を顕在化していくのはおそらく当事者(リベラル/コレクトネス/ソーシャルセクター勢力)には難しく、「哲学」に代表される、状況を俯瞰的に語れるジャンルやムーブメントしかないと僕は思う。が、日本の哲学は社会状況を語ることは苦手(ある意味純粋に根源的に哲学する)なので、周回遅れとなる。

■「ヨーロッパに共産主義という幽霊が出る」

欧米や日本に潜在化している半数の「ポリコレ的きれいごと疲れ」の潜在的声は、いわば「幽霊」みたいなものだ。

これはまったく内容は正反対なものの、170年前のヨーロッパにおける共産主義のようなものかもしれない。

マルクスとエンゲルスが『共産党宣言』の冒頭で語った「幽霊」の感触/予感(「ヨーロッパに共産主義という幽霊が出る」)とは、あるようでいて見えず選挙時に驚くほどの数が顕在化される、それが事後的に大ムーブメントであるとわかり社会が唖然とする現在と似ているのかもしれない。

世界に、ポリコレ疲れという幽霊がでる。

その大ムーブメントが、いまはもポピュリズムと呼ばれていると思う。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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