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採用活動とソーシャルメディア:継続と哲学

概要:企業が採用活動にソーシャルメディアを利用することで、企業と学生とのコミュニケーションは活発になると期待される。しかし学生と一貫したコミュニケーションを保つためには、ソーシャルメディアを流行りのものと捉えず継続的に利用するとともに、どのような採用活動を行うべきかの哲学をあらかじめ定めておく必要がある。

また新卒採用のシーズンがやってきた。多くの企業では昨期の採用活動が震災の影響で後ろ倒しとなったため、はやくも始まったという感じかもしれない。また、日本経団連は従来10月1日としていた採用活動の「解禁日」を、今年から12月へ改めたため、例年からのスケジュールをどう修正するか、苦慮している企業も多いだろう。

今年の採用活動の特長として、ソーシャルメディアの活用が本格的にはじまりそうなことも挙げられる。10月31日付けの日経新聞には、ちょうど「就活もSNSで」という特集記事が組まれていた。すでに多くの企業がブログやTwitter、Facebookページなどを広報に利用するなか、それらを採用分野でも活用しようというのは自然な流れだろう。

そもそも採用活動とは、企業が一方的に行うものではなく、企業と学生のあいだの対話で進められるものである。ソーシャルメディアでは双方向でのコミュニケーションが自然に行えるため、広報以上に採用活動に向いていると言えるかもしれない。ただし、ノウハウがまだ蓄積していないため、企業の戦略が求められる部分でもある。

TwitterやFacebookを採用活動に利用するとき、なにを考えなければいけないだろうか。TwitterやFacebookを広報活動に利用するのと、まったく同じように考えるべきだろう。一つは(あらためて)双方向性、一つは継続性である。

双方向性とは、要はソーシャルメディアを利用することで密にコミュニケーションしようということだ。イベントの情報を一方的に配信するだけなら、ソーシャルメディアを利用する必要はない。学生の生の声を受け止め、会社の生の声を伝えてこそのソーシャルメディアである。ただし、ソーシャルメディアで大勢の相手と密にコミュニケーションをとるには、かなり能力が必要であることも忘れてはならない。ソーシャルメディア発信力とでも呼ぶべきこの能力は、うまく出来る人は自然に出来るせいか、今日まだかなり過小評価されているように感じる。

採用活動のことになると、特にソーシャルメディアやネットメディアを活用するとなると、なぜか気負って、従来のイメージとはかけ離れた情報発信を行う企業もある。業界研究に長けた昨今の学生から見れば、なんとも滑稽な感じに映るはずだ。業界にもよるが、基本的には下手に面白おかしいことを狙わず、裏表なく情報を発信すべきである。ちょっと凝ったことを言おうとしたり、相手によって言うことを変えたりすれば、すぐに炎上が待っている。

となると、結局は企業がどのような採用活動を進めようとしているのか、選考の基準はなんなのかを、はっきり分かりやすく示す必要がある。つまり、そもそも企業がどのような人材を求めているのか、社会においてどのような存在になろうと考えているのか、その芯、哲学が必要だ。

では、もうひとつの継続性とはなにか。広報活動でいえば、これまではテレビコマーシャル、新聞広告、キャンペーンイベント、ウェブサイトの開設など、なにかのイベントの断続的な連なりであった。採用活動もそうで、ウェブサイトの開設、説明会、試験、面接などのイベントの断続的な連なりと捉えられる。しかしソーシャルメディアでは、より細かな単位で情報を発信し、コミュニケーションを行うことができる。これが継続性である。

双方向性と継続性は無関係ではない。学生と密にコミュニケーションを行っていれば、自然とその両方を満たすだろう。時間的に厳しいかもしれないが、学生がどのような情報を求めているのか、コミュニケーションの中から見極めたうえで、それに対応したコンテンツを整備できると完璧である。いずれにせよ、器だけソーシャルメディアで用意して、コミュニケーションもコンテンツもおざなりというのは最悪だ。学生はそこから「ソーシャルメディアという流行に乗ろうとしただけだったな」と冷たく読みとることになる。

さらにいえば、継続性は採用活動の中で閉じるべきではない。多くの企業が広報活動により知名度を向上させることを苦労しているわりに、採用活動で得た学生とのつながりを無為にしているのは、なんとも不思議なことだ。採用活動を通じて知り合った学生たちを、企業のファンへとそのまま導くこと。これが今後の採用活動のミッションとなっていくだろう。採用Twtitterアカウントから広報Twitterアカウントへ、採用ファンページから広報ファンページへ、どのように引き継いでいくかを今の段階から考えなければいけない。そのためには、どのような結果に終わったとしても学生に一定以上の満足を与えるような選考を進めなければいけないし、そのためにはけっきょく、納得感のある、公明正大な選考過程を整備しなければいけない。

就職氷河期と呼ばれるなか、学生はこれからしんどい毎日を送ることになる。選考のなかで、学生は企業を好きになったり、嫌いになったりするだろう。ならば、好きになってもらうにはどうすべきだろうか。ソーシャルメディアの活用は、そのことを考える良い機会になるはずだ。採用活動、企業活動のなかに、ちゃんとした哲学はあるのか、学生はソーシャルメディアを通じて読みとくようになる。企業はただ学生を優れた選ぶだけでなく、そうした見方にも応えなければいけない。

考えられるアイデア:

  • ソーシャルメディアを利用した企業の採用活動は誰が支援するのか。人材系企業か、広告系企業か、コンサルティング企業か、それともソーシャルメディア企業自身が支援するのか。
  • 多くの企業が「ひとまずこれだけをソーシャルメディア上で実行すべき」というテンプレートを求めている。そのあとは、似たような企業ファンページが次々と生まれるだろう。横展開から生まれることを考えると同時に、差別化要素も考えたい。
  • インターンや説明会のような「リアル」と、FacebookやTwitterのような「バーチャル」のあいだに、もうひとつ中間の存在があっても良いのではないか。Ustreamで説明会、INTERVIEWSで質疑応答……ほかにはなにかないか。
  • 学生もまた、ソーシャルメディアを用いて勉強会などを企画したり、情報交換をさかんに行うだろう。そのような場へ、自然にコミットしていく方法はないだろうか。また、ソーシャルメディア上の誤った情報は、どう検知し、どう修正していくべきだろうか。

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