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担当者個人の資質の問題ではないように思う

生活保護申請の妊婦に「産むの?」 千葉県市原市が謝罪(朝日新聞)

 生活保護の申請に訪れた妊娠中のフィリピン国籍の40代女性に対し、千葉県市原市の福祉担当職員が「産むの?」と問いただしていたことが分かった。女性は中絶を求められたと受け取ったという。同市は不快感を与えたとして、女性に謝罪した。

 労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」が8日、記者会見して明らかにした。それによると、女性は今年1月に市原市の生活保護申請の窓口を訪問。その際に、職員から「自分の国(フィリピン)で中絶はやっていないの?」と問われた。女性が「子どもをおろせって言うんですか」と質問すると、職員は「そこまで言わない」と答えたという。申請は受理されず、その後にNPO職員が同行すると認められたという。

 市原市生活福祉課の担当者は、朝日新聞の取材に「状況確認のための質問だったが誤解があった。再発防止に努める」と話した。

 

 ほぼ全ての場合において、政治家が「誤解を与えた」と謝罪する場合、実際は「真意が伝わった」ために問題視されているわけです。もっとも「政治家に限った話ではない」ことが今回のケースで示されていると言えるでしょうか。市原市の担当者は「誤解があった」と醜悪な言い訳に努めていますが、もちろん「真意が伝わった」からこそ問題になっているのです。

 先日も取り上げた小田原市役所のケースもそうですが、生活保護の窓口に配属される職員には人権意識が希薄なタイプが多いのかも知れません。生活保護受給者や貧困層、あるいは外国人に対する差別意識や偏見を強く持っている、そういう人が意図的に配属されているからこそ、小田原に限らず今回のようなケースも出てくるのかな、と思います。

 「水際作戦」と公式に掲げる自治体はないとしても、裏の目標(=真意)として生活保護の抑制に重きを置いている自治体は多いはずです。その結果として、どういうことが起こるのでしょう。人権意識を強く持ち、差別や偏見とは無縁で憲法の定めを遵守する、そんな職員を窓口に配置してしまえば、当然のこととして貧困者を水際で追い返すようなことはなくなってしまいます。福祉の面では良いことですが、これを好ましく思わない人もまた多いわけです。

 社長や外科医はサイコパスが多い、なんて調査発表(信憑性はさておき)もあります。まぁ、他人の痛みに鈍感であることが仕事の上で有効になる場面だってあるのは確かなのでしょう。そして生活保護の窓口に立つ職員もまた同様なのかも知れません。生活保護の抑制という至上命題のために、人間性を捨てて戦っている人もいるのだ、と言えます。役所のお墨付きの元に。

 日本の生活保護制度の下では圧倒的に漏給が多い、保護を受けるべき人が受け取れないケースが多いわけです。そこに加え、保護受給者を不正な受益者であるかのごとく喧伝することで、世間に漏給の原因を誤認させようとしてきた実態があるのではないでしょうか。悪いのは不正受給者、現行の生活保護受給者なのだ、と。もちろん金額的な比率で見れば不正受給など誤差の範囲に収まるのですが……

 小田原市の場合もこの市原市の場合も、担当職員個人の資質の問題だとは考えにくいところがあります。人権意識の希薄な人間を採用した、あるいは育てた、憲法が保障する権利を蔑ろにするような人間を任用した、あるいはそうなるように背中を押してきたのは、役所という公的機関です。小田原市がそうであったように、今回の市原のケースでも職員が処分されるようなことはないのかも知れません。保護を求める貧困者を罵倒したって罪には問われないのが我が国の「公」です。しかし、それでいいのでしょうか?

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