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2000年を境に、高齢者のライフスタイルも変わって、自分の終の棲み家は施設と考える人も増えた - 「賢人論。」第34回(中編)鴨下一郎氏

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前編「保険料を支払っているんだからサービスを受ける権利がある。その主張はその通りなんだけど、財政的にはない袖はふれない」では、高齢者と若者が対立するのは不毛な争いだと語った鴨下一郎氏。そこで語られた、高度経済成長期を支えた世代の年金のあり方などは今後、大いに議論されていくであろう。“若者が高齢者を支える”ことを前提で話が進んでいくかと思いきや、意外や意外、社会保障制度の枠組みの中で高齢者を支えるのは“高齢者”自身でもあるべき、という。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/小林浩一

20年の間に高齢者のマインドが大きく変わった

みんなの介護 前編では、介護保険制度が始まった当初に比べて大幅に増えてしまった介護給付費をふまえて、負担のあり方を見直さなければいけない、といったことを伺いました。

鴨下 介護保険制度が始まる前後からの20年間で、高齢者のライフスタイルも変わったんですよ。

みんなの介護 どのように変わったのでしょう?

鴨下 制度ができる前は特に、介護といえば主に女性が家庭内でおこなってきたわけです。今は、家庭内でできなければ施設介護になったり、一人暮らしの方が居宅サービスを使えるようになったりと、家族の助け合いというより、公的なサービスに依存することのほうが増えたわけ。

みんなの介護 制度が2000年に始まったときに理念として掲げられたのが“社会全体で高齢者を支え合う”ことでした。

鴨下 もちろん在宅介護と施設介護の双方にはメリット・デメリットはあるけれど、今言ったように高齢者の感覚も変わってきました。今までは息子夫婦ともっと仲良くしておかなきゃ、と思っていたのが、今は“そんな人たちとギクシャクして我慢するより、介護保険のお世話になって施設に入ったほうがいいや”と、みんな薄々考えるようになってきています。

みんなの介護 家庭内で完結していたはずの介護が、制度によって社会的なものに変わったのですね。

鴨下 そういった意味では、2000年以前の措置制度の介護サービスと、保険で自分の権利性が出たあとの高齢者のマインドが20年の間に大きく変わったと言えます。変わりゆく社会の中で“自分の終の棲み家は施設”と考える人も増えたのです。

当初3兆円だった給付費が10兆円にまで増えたのは、高齢者人口の絶対数が増えたということももちろん大きいですが、それと同時に、要するにリタイア後のライフスタイルが変わったのです。介護保険が増えていった原因はこういうことも一理あると思います。



これからは同世代内での相互助け合いを広めていくべき

鴨下 リタイア後、健康で介護の必要がない高齢者も中にはいるわけです。私は、高齢者間でお互い助け合うのをもっと徹底したらどうかと思っています。

みんなの介護 世代間の助け合いだけでなく世代内で助け合っていく、と。

鴨下 そういうことです。同世代内での相互助け合いといった形です。なぜそう思うかというと、高齢者にも2種類の方がいるからです。それなりに年金の給付を受けていて、持ち家もあって、現役並み、さらに現役以上の生活を送っている人たち。あるいは、そうではなく低所得、低年金の生活を送っている人たちもいます。

みんなの介護 これまでは一律に1割負担だった時期もあったわけで、鴨下さんのおっしゃる、“高齢者間の助け合い”を理解していただくのはなかなか難しいことだと感じます。

鴨下 うん。だから、誰かが負担しないといけないんです。無理やり巻き上げるという話ではなくて、私的なサービスをご自分のお金で買ってもらうということ。今の時代、さまざまな人が当たり前のように介護サービスを同じ値段で受けるのが不可能というのは、認めざるを得ません。

最低限のサービスを買うのに負担をいくらにする、というのを法律で決める方法もあるけれど、その人が“個室に入りたい”というならば、自主的に個室料金はプラスアルファでご自分の年金の中から払っていただく、という形にしていくべきなのです。

みんなの介護 確かに、その人の希望に応じて支払っていただくのが理想的かもしれませんね。

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